Microsoft 広告アカウントマネージャーに聞く:第1回 Microsoft 広告の概要と特徴、有効な活用方法とは

Microsoft 広告アカウントマネージャーに聞く:第1回 Microsoft 広告の概要と特徴、有効な活用方法とは

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2022年5月、日本での広告事業を“再スタート”したMicrosoft。Unyoo.jpでは2022年11月に、Microsoftの日本の広告事業におけるRegional Vice Presidentである有園雄一さんとアタラ合同会社CEOの杉原との対談記事を公開しました。


対談では、Microsoft Advertising(Microsoft 広告)について、また、その事業の根底に流れるMicrosoftの哲学などについてお聞きしました。今回から始まる連載は、広告運用現場(アカウントマネージメント)に視点を移し、現場の目線でMicrosoft 広告についてお話を伺います。

すでにさまざまなメディアで管理画面の詳細な設定項目や設定方法などについては記事になっていますが、本連載ではMicrosoft 広告を運用していく上で知っておくべき大前提の知識を整理し、新たな視点で深堀りしていきます。

第1回は、本連載の大前提となるMicrosoft 広告のサービスについて詳しく伺います。

話し手:
日本マイクロソフト株式会社
Microsoft 広告事業本部 アカウントマネージャー
上林慎介さん

聞き手:
アタラ合同会社
パートナー 和泉晴之
マネージャー/コンサルタント 高瀬優
コンサルタント 大野柊一

 

主戦場はPC。検索エンジンでの広告を展開

和泉:本日はお時間をいただき、ありがとうございます。今回の連載では、大きく二つの目的をもってお話を伺いたいと思っています。

一点目は、Microsoft 広告は、どんな広告プロダクトであり、どのような特徴があるのか、どのように活用を想定すればよいのかなど、初めて広告出稿する際に最低限必要な情報を伝えること。つまり、プランニングする際に必要な情報を伝えること。二点目は、Microsoft 広告を運用している中で、ちょっと詰まってしまったり、運用を深めていく中で「あれ?これってどういうロジックなんだっけ?ここ、どうなっているんだっけ?」となってしまった場合の「運用のガイドラインの補助線的な情報」を伝えることです。

上林:承知いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

和泉:前置きが長くなってしまいましたが、自己紹介をお願いできますか。

上林:日本マイクロソフト株式会社(以下、Microsoft)の上林と申します。アカウントマネージャーをやっています。Microsoftに入社する前は、株式会社セプテーニで広告運用担当者としてSEMやデジタル回りの仕事を、次にネスレ日本株式会社でデジタルマーケティングや製品マーケティングなどを担当していました。代理店で仕事をした経験と広告主として仕事をした経験、今はメディアと、それぞれの立場で仕事をしてきた経験があるので、そういった視点で、いつもお客さまとお話しできればなと思っています。

和泉:最初に、Microsoft 広告の現状のプロダクトについてご説明いただけますか。

上林:まず、Microsoftとしては大きく「地球上のあらゆる個人と組織が、より多くのことを達成できるようにする」という会社としてのミッションを掲げてビジネスを行っています。その中にAzureだったり、Officeだったり、Windowsだったり、あと、デバイスのSurfaceやXboxなどがあります。広告のビジネスに関しては、検索エンジンMicrosoft(以下、Bing)のサービスの中に入っていますが、検索広告以外も含めて各事業を通して「このミッションを達成する」という志のもとビジネスを展開しています。

われわれは日本において、広告事業を2022年の5月末から展開しています。検索エンジン上で主に広告展開をしており、過去のデータで規模感を見ると、このような形になっています。

マイクロソフトの規模

直近の実績としては、Bingの検索ボリューム自体も、過去5~6年の間に70%伸びております。広告の土台になるBingの利用も過去6年間しっかり成長していて、今後もさらに伸ばしていく予定です。

また、外部のデータにはなりますが、実際に検索エンジンのシェア、あるいはブラウザのシェアを見ていただいても、堅調に伸びている状況です。

ブラウザのシェア

デスクトップに絞ってはいるものの、すでにこれくらいのユーザー数、規模があるところで、他プラットフォームの検索広告を実施されているクライアントさまにBingも使っていただきたいなと考えています。

ちょっと広告から話がそれますが、Bingのシェアを増やすために「Microsoft Rewards」という、Bingで検索したり、Microsoft製品を購入したりするとポイントが貯まるプログラムも展開をしています。

Bingのシェア拡大施策
また、さまざまなメディアで発信されているのでご存じかと思いますが、ここ数年、コロナ禍もあってPCを使う時間が増えています。在宅でお仕事をされる方は、お仕事でPCを使いつつ、その隙間時間、お昼休みや仕事終わりに個人的な検索をする機会も増えています。

その中で、WindowsやMicrosoft 365を使っていただいているユーザーが多くいらっしゃるのですが、同時にEdgeやBingを使っていただいているユーザーも多くいらっしゃいます。

こういった仕事とプライベートな時間の双方でPCを利用するユーザーを、われわれは「ワークデイ コンシューマー」と呼んでいます。こうした状況もあり、現時点で、Microsoftの主戦場はPCとなっているのです。

Workday Consumerについて

単価高め商品の検索をするミドル層+PCと初めて出会う若者層が特徴的

上林:次のグラフは、実際どういったカテゴリのキーワードが多くPCで検索されているかを示したものです。

自動車や旅行など、比較的、高単価なもの、あるいは検討期間が少し長いものが多くなっています。もちろん検索エンジンなのであらゆるキーワードが検索されますが、こういったカテゴリに関しては「じっくり調べたい」というユーザーのインサイトからPCで検索される比率が高く、相性がよいのかなと思っています。

Workday ConsumerのPC検索比率
Workday Consumerのユーザー属性

和泉:かなり特徴的ですよね。

上林:そうですね。このユーザー属性のデータは2015年時点のものなので参考程度にご覧いただきたいのですが、ここからドラスティックに(大きく)変わっているということはないと思っています。相対的に年齢が高め、ミドルのユーザーの比率が高いところと、やはり、お仕事をされている方の比率が高いところは特徴的だと思っています。

こちらも外部の調査データになりますが、MicrosoftとGoogleのユーザー属性を比較したのが、このデータです。先ほどからもあったとおり、お仕事をされている方が多いということもあって年収レンジが高い、いわゆる購買力の高いユーザーが多くいらっしゃるというのが一つ特徴的なところです。

Workday Consumerのユーザー属性Google比較
先ほど、年齢層は少し高めのところが多い、というお話をしましたが、もう一つ特徴的なのが、16歳から24歳のユーザーの比率が高いという点です。ここに関しては「いわゆるファーストデバイス」、PCを使い始めるときに、われわれのサービスであるWindows搭載のPCを使う機会も多くあることに起因していると考えています。

和泉:16歳から24歳というところのユーザーの比率が高いのは、Microsoftさんっぽいですね。おそらくコロナ禍におけるオンライン授業で、Microsoftさんのプロダクトやサービスを利用しているという部分もあるのではと想像します。

上林:そうですね。GIGAスクール構想(※)もあって学校にIT環境が浸透していく中で、社会のDXを推進している弊社のビジネスと、うまくリンクしているのかなと思っています。

※GIGA = Global and Innovation Gateway for Allの略。2020年4月から本格開始。児童生徒向けの一人一台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想。

和泉:これまでのMicrosoftのビジネスが広告事業への好影響につながり、Bingの利用者傾向にも出ているんですね。「人生で最初に触れたOSがWindows、最初に使った検索エンジンがBingでした」という世代が醸成された可能性を考慮すると、10年後、20年後という長い時間軸でBingを含む広告事業がさらに伸びる可能性を感じますね。

上林:そうですね。われわれがビジネス系のソリューションにおいてもフルラインアップであり、デバイスからOS、アプリケーションまで広くカバーしている強みが、こういうところにもつながってくると思っています。

和泉:to B(法人向け)からto C(個人向け)まで全部、360度でビジネス展開されている強さですね。

上林:私も、ここはすごく特徴的な部分だと思っています。

Yahoo!広告に加えて、今、Microsoft 広告に出稿する意味はあるのか

上林:われわれが2022年の5月末から日本でビジネスを開始する以前から、Yahoo!検索広告を出稿されている場合は、配信面(検索パートナー)の一つとしてBingがありました。5月末からはMicrosoft 広告もご利用いただけるようになり、Microsoft 広告からも出稿できるようになっています。

Microsoft 広告をご利用いただくメリットは二点あります。

一つ目は、新規にMicrosoft 広告 検索連動型テキスト広告をYahoo!広告に追加で開始していただいた場合、特にオークションは完全に仕組みが分かれているので、両方出稿していることで競合したり、CPC(平均クリック単価)が上がってしまったりということはありません。なので、そこは気にせず始めていただけますという点。

二つ目は、シンプルにBing面は、Microsoftのプロパティ(Microsoftが所有する配信面)になるので、そこでのユーザーシグナル、例えば単純に検索したクエリ(ユーザーがBingなどの検索窓に入力した言葉)や、その後どういったサイトに訪問したかといったシグナルに直接的にアクセスができるので、より関連性の高い広告を出しやすい環境にあるという点です。そのため、結果的にMicrosoft 広告のほうが表示されるケースが多くなっています。意図的にMicrosoft 広告が多く表示される仕組みになっているわけではなく、ユーザーにとって最適な広告表示をさせるアルゴリズムによって、Microsoft 広告のほうが関連性が高くなっているケースが多くなっているためです。

和泉:なるほど。Microsoftでしか得られないデータを活用されているんですね。

マルチチャネルマネジメントで管理はシンプルに、パフォーマンスは最大化

上林:Microsoft 広告では「検索広告」と「オーディエンスネットワーク」という二つの主力商品をご案内しています。

Microsoft主力の広告メニュー

Microsoft 広告には「マルチチャネルマネジメント」という特徴的な考え方がございます。あらゆる規模の広告主さまにMicrosoft 広告をご利用いただく中で、できる限りシンプルにキャンペーンを管理したい、というニーズに応じたものになります。極端な例ですが、キャンペーンを1個にまとめて管理したい、といったニーズに対応できる仕様です。

検索広告を新しく始めると、入稿していただいている素材、クリエイティブを使って、一部をオーディエンス面に自動で拡張して配信をする仕様になっています。検索広告とオーディエンスネットワークを別キャンペーンとして作成し、個別にそれぞれのキャンペーンを管理しなくても、検索広告のキャンペーンを始めればトータルでパフォーマンスを最大化できるようになっています。

マルチチャンネルマネジメント
和泉:異なる部分も多々ある前提にはなりますが「マルチチャネルマネジメント」に近しい考え方は、他プラットフォームでも一部実装されていますよね。プラットフォーム内で取得できるユーザーシグナルをもとに、広告配信される場所をまたいで統合的に判断し、広告配信が最適化される潮流(トレンド)は不可逆な時代だと思います。もちろん事前に把握しておくべき注意点ではあるので、運用の最前線にいる方々は頭の隅に置いておくべきですね。

※参考サイト:

上林:ありがとうございます。チャネル全体でパフォーマンス最大化を目指す機能になっています。

検索広告:モバイルでも使えるショッピング広告と豊富な広告オプション

上林:もう一つの特徴としては、ショッピング広告がご利用いただけることが、積極的にMicrosoft 広告を利用していただく一つの動機になると思っています。細かい点ですが、現時点では検索連動型テキスト広告はPCのみなのですが、ショッピング広告はモバイル面もPC面も配信がされています。一部、検索連動型テキスト広告のモバイル面へのテスト配信を開始しているので、直近だとモバイルのインプレッションも少し出始めているケースがあるかもしれません。

ショッピング広告
検索結果のナビゲーション

また、広告表示オプションも多様な設定ができる仕様になっています、テキスト広告の横に画像や動画を表示できる「画像表示オプション」や「動画表示オプション」はMicrosoft 広告の特徴です。

 

Microsoft検索広告

さらに、今の時点では、日本ではローンチしていませんが(※2023年2月現在。アメリカなどではローンチ済み)「マルチメディア広告」というMicrosoft独自のプロダクトもあります。具体的には、検索連動型テキスト広告が真ん中に表示されて、ライトレール(検索結果画面の右側部分)に画像とテキストをセットで表示できる機能です。

なお、マルチメディア広告も別オークションになります。テキスト広告より目立ちやすいリッチな広告フォーマットなので、検索ユーザーのアテンション(注目・関心)を引くこともあり、マルチメディア広告のみ入札単価を高めに設定し、掲載されやすくすることも可能です。

和泉:なるほど。通常の検索広告のオークションとマルチメディア広告のオークションは、別で動いている前提なのですね。そして、検索クエリに応じてSERPs(※Search Engine Result Pages:検索結果ページ)をBingが最適化する過程で、マルチメディア広告が掲載されるか否を判断している。その上で広告を含めた最も適切な検索結果を表示させることで、検索ユーザー、広告主、Microsoftの三者にとって最善な仕組みで提供されている、という理解で合っていますか。

上林:そうですね。検索結果の表示については、おっしゃっるとおり、Microsoftのほうで検索クエリに関して最適なものを出す形です。このマルチメディア広告に関しては1社しか表示できません。視認性も高く、海外の先行の事例としてはパフォーマンスがよいケースもあります。しっかり表示できるように、テキスト広告の20%高い入札を付けて……といった調整が運用者の意志でできます。

和泉:オークション形式なので予約型ではないっていうことですよね。テレビCMを主に出稿されている広告主が注目する部分もあると思いまして、念のために(笑)。

上林:はい、オークション形式です。将来的には動画も同じように表示できるようになる予定になっています。

和泉:さらにリッチ化するイメージですよね。

上林:そうですね。

和泉:すでにMicrosoft 広告の広告表示オプションは充実しているので「どれを設定しようかな」と迷うときもあったりするくらいです。

上林:先行でローンチしているマーケットのアカウントマネージャー(AM / Account Manager)と話すと、動画表示オプションでも動画の設定はできるけど、視認性も高く、すごくリッチな形で表示ができるので、マルチメディア広告も必ず併用するほうがいいと言っていましたね。

和泉:マルチメディア広告の動画フォーマットとなると、いわゆるナショナルクライアントやテレビCMを出稿されている広告主さんたちが気になる広告プロダクトですよね。

上林:そうですね。マルチメディア広告はリッチなフォーマットで出稿できるので、何かのキャンペーンと連動して特定のキーワードで出稿するといったことは、今後、ユースケース(事例)が日本市場でも出てくるかなと思います。

和泉:いわゆるマス連動広告的なもので「○○で検索」というのが、よくありましたよね。この辺りの話は有園さんのアタラ在籍時代に、いろいろと伺いました。2005年に『カードの切り方が人生だ』というライフカードさんのテレビCMでオダギリ ジョーさんが主演だった記憶なのですが「続きはWebで」というコミュニケーションプランが当時は斬新だったので鮮明に覚えています。

Microsoft 広告に限らず、多くの広告プラットフォームで広告表示オプションが多様になりましたが、検索広告はテキストで表現しなければならない部分が多く、表現の幅が限られているのが現実だと思います。2022年はショート動画が指数関数的に伸びたこともあり、動画秒数が短くてもしっかりとしたコミュニケーションがとれる環境にもなったので、非常に楽しみですね。

上林:そうですね。おそらく、そういったユースケースも出てくるでしょうね。例えば特定の商品名やブランド名に対して、しっかり出していきたいといった場合によさそうです。テキストだけに比べて、すごくリッチで圧倒的な表現力がありますので、使い方は結構広がるのかなと思います。

オーディエンスネットワーク:画像とテキストを組み合わせて配信を最適化

上林:もう一つの広告プロダクトが「Microsoft オーディエンスネットワーク」になります。

Microsoft オーディエンスネットワーク

日本において、今、Microsoft 広告が表示されるのは、MSNと、Edgeのスタートページと呼ばれる、起動時や新しいタブを開いたときのページ、Outlookをビジネスアカウントではなく無料アカウントで使っていただいている場合です。日本においては、この三つがオーディエンスネットワークの主な配信面になります。主にと申し上げたのは、リターゲティングなどで、Microsoft オーディエンスネットワークでグローバルとしてネットワークしている海外のサイトなどにいくと、そちらでも広告が表示されるケースがあるためです。なので、完全にこの三つだけというわけではありませんが、日本においては、基本的にはこの三つがメインの配信先になります。

将来的にはパブリッシャーのパートナーを広げていって、そこでも広告が出せるようになっていく予定です。

大野:どんなパブリッシャーさんでも参加ができる形なのでしょうか。

上林:Microsoftの考え方としては、このネットワークに参加したいパブリッシャーさまは手を挙げていただければ誰でも入れますよ、という形ではありません。一つ一つのパブリッシャーさまについて、ブランドセーフティの観点で問題がないかどうか、もちろんパフォーマンスが出るかどうか、そしてパブリッシャーさまにもメリットをお返しできるかなど、さまざまな観点から議論させていただき、優良なパブリッシャーさまにネットワークに加わっていただく、という方針で拡大を進めてまいります。

和泉:なるほど。まずはブランドセーフティが高く、パフォーマンスが予測できるメディアから開拓されるんですね。

上林:そうですね。海外ではCNNやニューヨーク・タイムズといったパブリッシャーさまがパートナーとして入っています。

掲載面のイメージが以下の図になります。Microsoft 広告のオーディエンスネットワークの特徴的な点として挙げられるのが「ネイティブ・アド・フォーマット」と呼んでいる、必ず画像とテキストが組み合わされた形で広告が掲載される広告フォーマットです。いわゆるバナー(画像)のみの配信という広告フォーマットは、今の時点ではご利用になれません。

Microsoft オーディエンスネットワーク掲載面

「インポート機能(後述)を使うことで一から広告アカウントを作らなくても配信できます」というご案内もしています。ただ、オーディエンスネットワークはネイティブ・アド・フォーマットなので、他プラットフォームで広告配信に利用されているバナー(画像)を使って、そのまますぐ配信されるのではなく、画像の中にはロゴやテキストは入れずにイメージカット(※商品の魅力やブランドの世界観を表現した画像や写真)を活用し、訴求したい内容はテキストに設定をしていただくことを推奨しています。そうなると、インポートしたものでそのまま配信できないケースもあったりすると思うので、そこにはご注意いただく必要があります。

和泉:いわゆるレスポンシブ広告のフォーマットですね。テキストと画像を組み合わせて、ユーザーシグナルや組み合わせの実績に基づいて最適化されているイメージですか。

上林:そうです。オーディエンスネットワークにおける配信、例えば、MSNへの広告配信の一部ではありますけども、他のネットワークサービスからも広告が配信できます。

検索広告と同様にMicrosoft 広告経由で出稿するメリットについても、ご質問をよくいただくところです。その際に、ご説明をさせていただいているのは、Bing面の検索広告と同様で、MSN面に関してもEdge面に関しても、Microsoftのプロパティ(Microsoftが所有する配信面)になるので、最適化に使えるシグナル、つまりファーストパーティのシグナルがあるというところは大きなところです。

 Microsoftオーディエンスインテリジェンス
また、さまざまなサービスを展開させていただいている中で、AIはMicrosoftとして注力分野の一つです。ファーストパーティデータが多いことと、ターゲティングや最適化にAIを活用できること。これらの点が、Microsoft 広告経由で広告配信を行っていただくメリットになると考えています。

和泉:AI分野について、Microsoftさんは以前から取り組まれている印象が強いです。実際に、2017年7月にMicrosoft Research AIなども設立されており、かなり以前からしっかりと取り組みをされている印象です。

上林:そうですね。私もMicrosoftに入社後、30年以上も取り組んでいると知って驚きましたね。

和泉:Microsoftさんには、1991年9月に設立されたMicrosoft Research(MSR)がありますよね。そこでは、世界基準のトップクラスの研究、有名な理系大学院レベルの研究をされているイメージです。

直近で話題になっているChatGPTを開発したOpenAIとの取り組みに限らず、サティア・ナデラさんは、しっかりと未来を見据えていらっしゃいますよね。

ターゲティング機能:他メディアとの細かな違いも。今後LinkedInターゲティングも予定

上林:こちらは今の時点で、日本で使えるターゲティング機能の一覧です。

Microsoft広告の日本で利用可能なターゲティング機能

他のプラットフォームと同様のターゲティングがご利用いただける、というところかと思います。細かいところでいくと、例えばデモグラフィック(※性別、年齢、居住地域、所得、職業、家族構成など人口統計学的な属性の総称)の年齢の切り方が、少し他のプラットフォームと異なっています。Microsoft 広告では、35歳から49歳、50歳から64歳に分けています。また、ロケーション(地域/エリアターゲティング)は、現時点で日本では都道府県単位になっています。こういった細かな違いはあったりはしますが、デモグラフィックやロケーションでターゲティングができる他、オーディエンスリストを使ってターゲティングができる形になっています。

In-Market、購買意向の高いユーザーのターゲティングもご利用いただけますが、ここについても、現時点で管理画面に表示されるものの中には、まだ日本ではご利用いただけないものもあります。今後、少しずつ使えるものが増えていく見込みです。LinkedInターゲティングも今後、日本でもリリース予定です。

大野:現時点でLinkedInターゲティングが使えるのはアメリカでしょうか。

上林:そうですね。アメリカやイギリス、オーストラリアなどでは利用可能です。

和泉:日本では、まだまだLinkedInへ登録し活用されていない人も多いかなという印象です。Microsoftに在籍されている皆さんのように外資系企業の方々はLinkedIn必須だと思いますが、日本企業勤務で登録している人は一握りなのかもしれません。ただ、同時に伸び代でもあると思いますので、LinkedIn事業を成長させていかれる中で状況は変わってくると思います。

上林:そうですね。ボリュームとしては少ない反面、業種によっては、あえてLinkedInを利用している人たちにリーチしたい、というニーズもあると思います。クライアントによっては、ここに関心を寄せてお問い合わせいただくケースはありますね。

業種に特化したフォーマット「バーティカル広告」も今後登場予定

上林:まだ日本では正式ローンチしていない「バーティカル広告」についても、ご紹介したいと思います。今後、日本で展開していきたいと考えている機能です。

※参考サイト:

バーティカル広告
バーティカル広告とは、各業種に特化した広告プロダクトです。一つ目が、自動車に特化したAutomotive Ads(自動車広告)。イメージとしては、ショッピング広告のようなフォーマットです。自動車の商品情報、在庫、中古車などがイメージしやすいと思いますが、車の情報と画像が並んで表示されるイメージになります。

他には、ホテル広告。例えば「東京 ホテル」などと検索すると、ホテルの情報が検索結果画面の右側にでてきますが、そこに広告として配信ができるものです。明確にホテルを探している人たちに対して、テキスト広告の形だけではなく、価格も含めた、ホテルの予約ができる広告プロダクトになります。こういった各業種に特化したプロダクトも、今後ローンチを検討しています。

和泉:ちなみに自動車広告、ホテル広告も、フィードデータをアップロードし、そこでマッチングさせていく仕組みにはなるっていうことですよね。ショッピング広告と同じ仕組みかなと思いました。

上林:おっしゃるとおりです。まだ日本では他プラットフォームでも提供されていないようなものもありますが、自動車広告は、海外では同じようなプロダクトがあったりもします。

高瀬:スライドにあった「金融サービス関連」というのは、どういう広告でしょうか。クレジットカード広告のことだろうかと、気になっています。

上林:クレジットカードの情報(カード発行者、ブランド、年会費など)をフィードでアップロードし、それらを基に生成される広告を検索結果画面の右側に表示する広告です。

金融サービスのバーティカル広告

和泉:アメリカでは、生活するのにクレジットカード必須ですからね。金融サービスの中のプロフェッショナルサービス広告における「プロフェッショナル」の定義は何でしょうか。

上林:いわゆる士業と呼ばれる業種です。弁護士や税理士など、士業の方々のサービスを並べて表示できるフォーマットです。

Netflix広告:動画広告配信先の選択肢として大きな可能性

上林:Microsoft 広告ではNetflixとの取り組みも今、進めています。Netflix広告は、日本では2022年の11月から提供を開始しております。

Netflix広告
和泉:現状、動画広告の出稿先が限られている中で、ブランド広告主さんにとっては「広告を出稿したい」とか「どうやって活用すればいいのかな」という状況はあると思います。テレビCMの出稿にはちゅうちょするけど、Netflix広告には興味がある企業も増えている肌感もあり「テレビCMはちょっと違うけどデジタルで最適な広告枠があれば」というときの選択肢になりやすいかなと想像しています。

上林:そうですね。実際、代理店さまからいただく声として、デジタルで動画広告にも投資を検討する際に、ディスプレイ広告に比べると選択肢があまり多くありません。一定の規模感でしっかり広告を配信できるサービスが一つ増えるということで、Netflix広告に期待をしていただいているケースはあります。

和泉:個人的な感覚ですが、他の動画配信サービスとNetflixでは視聴態度がまったく異なると思います。Netflixを視聴する場合には、それなりにちゃんと時間を確保し、クオリティの高いコンテンツを求めている傾向があるのではと思います。動画広告というフォーマットは同じなのですが、実際のプランニング時に想定している軸は、ちょっと異なる可能性がありそうですね。

上林:確かに、それはあるかもしれないですね。

インポート機能:Googleアカウントをカスタマイズしてインポート可能

上林:少しオペレーショナルな機能(入稿に関わる部分)になりますけども「インポート機能」についてのご紹介です。

インポート機能

一言でいうと、Googleのアカウントと同期させる機能です。なぜこういった機能があるのかというと、一つ媒体が増えて、管理画面が増え、サービスが増えて、というときに、やはり工数を気にされる代理店さまや広告主さまもいらっしゃいます。

そのときに、できる限り、開始時点での障壁を取り除き、オンボード(広告出稿までの導入段階)をいかに工数かけずにできるかという点は重要です。この「インポート機能」を用意することで、あらかじめGoogleで設計されているアカウントをインポートして、一から作らなくてもMicrosoft 広告で簡単に配信を開始していただけるように、という思想のもとでつくられた機能になります。

実際に代理店さまや広告主さまから「そんなこともできるんですね」というお声をいただく機能もあります。単純にインポートするだけではなく、予算設定や入札単価の設定をそのまま持ってくる機能や、一部を10%減らしてとか、20%上げてといった調整をしてインポートする機能。また、インポートするときに一部のパラメータの最後に文字列を自動で挿入したり、あるいは置換できたりという機能もあります。ちょっとしたカスタマイズをした上でインポートできるので、うまく活用していただいてアカウント準備ができるのが特徴になっています。

 

googleインポート機能

上林:代理店さまや広告主さまにお勧めしているのは「詳細のインポート」の利用です。

Googleにサインインすると、複数のアカウントがある場合は「アカウントを選択する」というステップがあります。その次に進むと、インポートの設定画面になります。このまま青いボタンを押していただくとインポートは開始できるのですが、横にある「詳細のインポート」を利用していただきたいとお話ししています。

詳細のインポート機能

 

というのは、この「インポート開始」を押すと、われわれの方でデフォルト(初期)設定している項目、ある意味、Microsoft 広告にお任せの設定でインポートする形になります。従って、何をインポートして、何をインポートしないのか、といったところを必ず「詳細なインポート」で確認してから使っていただくところをご案内しています。新規に始めていただく際には、必ず「詳細なインポート」を使っていただきたいと思っています。

UFTタグ:使用するとClarity インサイトでアクセス解析可能に

上林:タグ(※効果計測タグ)については「ユニバーサル イベント トラッキング(UET)」という名称で提供しています。これを設置していただくとコンバージョンのトラッキングや、オーディエンスリストの作成などができるようになります。

ユニバーサル イベント トラッキング

なお、UETタグは、Googleタグ マネージャーやYahoo!タグマネージャーなどの既存のタグマネージャーを使って簡単に設定することもできます。

※参考サイト:

また「Clarity インサイト」というアクセス分析ツールも提供していまして、UETタグを入れていただくとClarityのタグを追加しなくても使っていただけます。Microsoft 広告の管理画面上で、Clarityの機能を使う、使わない、という選択ができるので、そこにチェックを入れると使えるし、入れなければ使わない形になります。

Microsoft Clarity インサイト
和泉:なるほど。Microsoft 広告とClarityのアカウント、連携して使えるようにすると同期される、という理解で合っていますか。データが吸い上げられていくみたいな形ですよね。

上林:はい。そうです。ヒートマップを確認できたり、実際のセッションをレコーディングして、それを確認できたりします。センシティブな情報はマスキングされる仕様にはなっていますが、ヘルスケアや金融関係などの一部サービスでは、Clarityの利用規約でご利用になれないものもあります。この点は注意していただきたいです。

和泉:ありがとうございます。非常に興味深い内容ばかりでした。

アタラの和泉、日本マイクロソフトの上林さん、アタラの大野、高瀬

左よりアタラ和泉、日本Microsoft上林さん、アタラ大野、高瀬。

次回は、Microsoft 広告のサービスについての疑問に、Q&Aの形で上林さんにお答えいただきます。

※本記事の内容、肩書きは2023年3月現在のものです。

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