楽天グループに聞く:日本発のリテールメディアが今考える、これまでとこれから

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リテールメディアへの注目度が高まっている昨今。小売事業者は新規事業として、ブランド広告主や広告代理店は効果的なマーケティングを実施できる新しいプラットフォームとして、リテールメディアに注目しています。2025年に予定されているGoogle ChromeのサードパーティCookieサポート廃止もこのことに拍車をかけ、小売業者の大量かつ優良なファーストパーティデータを活用した広告事業に大きな期待を寄せています。

そこで、日本発かつ国内最大級のリテールメディア「楽天市場」を運営する楽天グループ株式会社の春山宜輝さんに、現在に至るまでの経緯、強み、今後の展望についてお話を伺いました。

話し手
楽天グループ株式会社
コマース&マーケティングカンパニー マーケットプレイス事業 市場広告部
ジェネラルマネージャー
春山宜輝さん

聞き手
アタラ株式会社
代表取締役CEO
杉原剛

2000年に純広告開始。検索広告導入するも店舗内購入につながらず改善

杉原:春山さんの簡単なご経歴と、現在のお仕事内容について教えてください。

春山:2009年に楽天株式会社(当時)に入社しました。初めは開発側に所属し、2014年の前半まで検索広告などのプラットフォーム側の開発責任者をしていました。2014年に「楽天市場」事業に異動になり、広告ビジネスのキャリアをスタートしました。今年でちょうど10年になります。

楽天市場全体のページを制作管理している編成部内の広告グループマネージャーとして市場事業に入りましたが、当時は人数も多くなく、この10年間で組織改編を重ねた結果、現在は6倍以上の人数規模にまで成長しました。

杉原:楽天の前身、クリムゾングループが1996年に設立されたころから知っていますが、御社のECコンサルタントが店舗の売り上げを加速させるための広告商品はかなり昔からありますよね。

春山:事業開始の初期のころから、いわゆる期間保証型として純広(「純広告」の略)を販売しております。楽天市場はバレンタインデーや父の日、母の日などシーズナルのイベントが多くあります。このイベントページに店舗さんの商品を掲載することで、それぞれの枠を「シーズナル広告」として販売したことが楽天市場としての広告ビジネスのスタートです。

杉原:純広中心だったのでしょうか。

春山:2000年から2010年ぐらいまでは、100%純広でした。

杉原:100%ですか!

春山:はい。そして、2011年ごろに検索連動型広告として「CPC広告」がスタートしました。恐らく、それが楽天市場にとって初めての運用型広告だったと思います。店舗さんが出稿したい商品を決め、キャンペーンを設定し、希望のキーワードへ入札するというものでした。ただ、なかなかオークションが働く状態にはなっておらず、パフォーマンスも出なかった上、店舗さんにとっても売り上げもあまりつくることができませんでした。

杉原:CPC広告は検索連動型広告のベーシックなものから始めたということなのですね。

春山:はい。最初の変化点は、2018年ごろにリリースした「RPP」というプロダクトを入れたことです。これはCPC広告のバージョンアップ版です。CPC広告のパフォーマンスの悪さやプロダクトとしての成長の鈍化が課題となっていて「どのようにすれば良くなるのか」といろいろなデータを見ていく中で、二つ分かったことがあります。

一つは、ユーザーは広告をクリックしても、クリックした商品を必ずしも買ってはいません。しかし、その商品自体を買わなかったユーザーでも店舗内で回遊し、その店舗内の別の商品を買っているユーザーがいます。例えば「青い2人掛けのソファ」の広告をクリックして商品ページに遷移はしたが、商品情報を見たらサイズが小さくて、その店舗の中で別のソファーを探し始め、運よく少し大きめの「3人掛けのソファ」を店舗の中で見つけて購入することができたユーザーがいます。しかし大多数は、やはりそこで見つけられずに離脱して、別の店舗で「3人掛けソファ」を見つけて買っているということがデータで分かったのです。

つまり、店舗さんが売りたいと思っている商品とユーザーが欲しいものは、必ずしもキーワードだけではなかなかマッチングができないという機会損失が発生していることが分かりました。

もう一つは、当時、大手プラットフォーマーといろいろな取り組みをしていた中で、広告のプラットフォームについても共同プロジェクトがありました。先方のエンジニアの方々といろいろなお話をさせていただく中で、われわれが持っているデマンドの量が圧倒的に足りず、彼らのプラットフォームを使うとしてもパフォームしない、と言われたのです。

杉原:足りなかったんですね。

春山:そうです。では彼らが、なぜあれほどパフォームしているのかというと、やはり圧倒的なデマンド量があるからなのです。当時の楽天市場の広告デマンド量では足りない、と言われました。そう言われて実際に、少ないデマンド量のときと、意図的に広告デマンドを生成してつくった仮想的な環境でテストしてみると、確かに後者のほうが良かったんですよ。

ユーザーの行動から導き出されるベストパフォーマンスのプロセスの話と、圧倒的なデータの量の部分の二つを解決する仕組みとして、新しい検索広告にバージョンアップしたものが「RPP」です。

楽天 春山氏

店舗が出稿するRPPはROAS1000%。SE登場でブランドも販促可能に

春山:楽天市場で店舗運営するために商品を登録する「RMS(Rakuten Merchant Server)」という店舗運営システムがあるのですが、RPP(検索連動型広告)は登録している商品が基本的には出稿対象です。ただ、どうしてもお取引している企業との関係で広告が出せないことがあるので、一定の件数に関しては除外できるようにしています。

そうすることによってデマンド量が圧倒的に増えると、青い2人掛けのソファに出合えるケースもあれば、グレーの3人掛けソファに出合えるケースも必然的に増えていきます。デマンドの量が増え、マッチングの確率が上がることでパフォーマンスが上がり、RPPとしても学習量が増え、結果的に、さらに検索広告のロジック最適化を生み出すことができています。

CPC広告といわれていた当時、ROASが200〜300%程度だったと思うのですが、今は検索広告のパフォーマンスが平均でも1000%を超えています。リリース当初は、店舗さんの意図しない形で広告が出る上に想定以上に広告費が増えることに、店舗さんから大変お叱りをいただきました。しかし、やはり半年ほど使っていただくと、店舗さんの利用率が圧倒的に上がるのですよ。そうすると、今まで10万円しかかけていなかった部分に30万円かけることになったけれど、店舗の売り上げはそれを大きく上回る成長が続くという状態が積み重なっていき、今となっては「RPPを止めたら売上が落ちる」とおっしゃっていただける状態にまでご利用いただいています。

杉原:そこからはどうなっていったのですか。

春山:2019年、2020年ごろから、店舗さんだけではなく、いわゆるメーカー・ブランド企業様とのお取引が徐々に増えていきました。基本的にRPPはRMSと連動しているので、出店しないと利用できない仕組みなのですが、メーカーによっては出店はしないけれども楽天市場で販売されている自社商品の販促をかけたいというニーズがあり、それを解決するためにリリースされたのが「Sales Expansion(SE)」です。

メーカーは商品にJANコードを必ず設定します。RMSの中にあるJANコードにひも付く商品に予算や検索キーワードをメーカーが設定すれば、裏側ではRMSのJANコードにひも付く各商品にSEの運用情報がひも付けされます。そして、見た目ではRPPかSEか分からないのですが、RPPと混ざるような形で店舗が登録している商品が検索結果の中にSEとして出てきます。SEがクリックされても店舗には課金されずに、メーカーの予算で課金されるという形になっています。

杉原:なるほど、よくできていますね。

春山:なので、同じ一つの商品でも、店舗さんが自分の予算で出稿してクリックされるケースもあれば、ブランド側の予算でクリックされているケースも発生しているという状態です。ブランド自体は出店せず、楽天市場に出店しているリテーラーをメーカー側の販促予算で販促支援することで、結果的にはメーカーの商品が売れるという形です。

杉原:メーカーは出店していないけれども、販促のために出稿することがあるのですね。そのようなケースは多いのでしょうか。

春山:今は右肩上がりで増えています。

杉原:店舗は、すごくうれしいですよね。

春山:そうですね。RPPでのオークションとSEのオークションがサーチの中で入り乱れています。

杉原:重複してもメーカーさんは出稿するのですね。

シンプルな仕組みで店舗が運用、ターゲティングできる「TDA」の登場

杉原:なるほど、分かりました。その後にディスプレイ広告が出てきたのでしょうか。

春山:検索広告の次は、やはりディスプレイ広告です。ただ、当時のディスプレイ広告は、先ほど申し上げたいわゆるシーズナル広告や「スーパーSALE広告」と呼んでいるイベント枠が主流で、期間保証型の純広告なのです。楽天市場の売上のつくり方は、やはりセールや「5と0のつく日」のキャンペーンなどといった、トラフィックが増えるときに山をつくるという方法が主流で、純広告は非常に相性の良い広告でした。ただ、店舗数が増えてきて、同じような商品を売っている店舗さんが増えてくるにつれて、メディアとしてもやはり代わり映えがせず、毎年同じ店舗の商品が出ている印象になりました。UXの観点でも広告としてのパフォーマンスをさらに改善していくためにどうするか考えた中で、2021年ごろに「TDA(Targeting Display Ad)」をスタートさせました。

これまで楽天市場にはターゲティングできる広告がありませんでしたので、ターゲティングができる広告は店舗さんにとって全く新しい仕組みだったと思います。ただ、一般的な広告の世界ではターゲティングやリターゲティングは当たり前だと思うのですが、楽天市場に出店していただく店舗さんの中には、その運用手法に明るい店舗さんもあれば、家族数人でなんとか運営していて、運用に割く時間を捻出することすらできない店舗さんもあります。

そのような方々に、数多くのセグメントを設定して、細かなデータを分析して、PDCAを回してといっても難しいですよね。でも、われわれは一部の店舗さんだけが良いのではなく、多くの店舗さんにメリットを享受していただいて楽天市場全体の流通を上げていきたいので、なるべく多くの店舗さんにご利用いただけるプロダクトをリリースするように心がけています。なので、他のプラットフォーマーと比べてターゲティングができる仕組みを楽天市場の中でローンチするのは遅かったと思いますが「そろそろ、やらなくてはだめだろう」とTDAをスタートしました。

それでも、最初は店舗さんにも「そんなことをやっている時間はない」と言われました。そこで、いろいろなテストを繰り返し、効果の高いセグメントデータや掲載メディアをパッケージング化して、三つほど選択して予算を入れれば誰でも簡単にターゲティング広告の利用ができるような仕組みを提供しました。これが最初のTDAです。ただ、やはり使い始めると「あれもやりたい」「これもできないと困る」とご要望をいただいたので、それに合わせて少しずつレバーを増やしていきながら常に進化させています。

杉原:運用は店舗さんご自身でされているのですか。

春山:そうですね。基本的にわれわれの広告は全て、店舗さんにセルフでやっていただくという概念で設計しています。

杉原:御社が提供するマネージドサービスやパートナー代理店はないのでしょうか。

春山:先ほど申し上げたような、ご家族で運営されているところなどの事情があり、やりたいのだけれどもその時間を捻出できないといった店舗さんもいます。なので、一定の条件をクリアした場合は、われわれの広告サポートデスクで運用をお預かりして、店舗さんとコミュニケーションを取りながら運用代行のサポートをしています。

杉原:それでもセルフ運用のほうが多いのですか。

春山:圧倒的にセルフのほうが多いです。

杉原:それだけシンプルにできているということですよね。

ファネルの下部から上部まで広く広告商品を開発

杉原:それ以外の広告メニューやプロダクトはあるのですか。

春山:それ以外には、特徴的な広告としては「クーポンアドバンス」というプロダクトがあります。これは、店舗さんのページに行かないと獲得できないショップクーポンを楽天市場のトップで獲得できるようにしたり、検索広告と同様にキーワードと連動した形で店舗のショップクーポンを露出することができたりする広告です。これも多くご利用いただいている人気商品です。

また、冒頭でお伝えしたとおり、年間を通じていろいろなシーズナルのイベントをやっているので、そのコンテンツやカテゴリに合う広告商品が自動的に出てくる仕組みがあります。これは「CPA広告」というもので、予算を登録さえしておけば店舗さんは何もせずとも商品のジャンルとコンテンツのジャンルがマッチしたときに表示されます。

これは売上に対して20%を広告費としていただくモデルになっているので、広告が表示されたりクリックされたりしても購入に至らなければ広告費は発生しないROAS固定型の商品としてご利用いただいています。

杉原:それも使いやすそうですね。

カスタマージャーニーに合わせた広告プロダクト

春山:この10年はファネルでいうと下のほうを中心に、いかにこの日、この週、この1カ月、このイベントの中で売上を作ることができるかを目的とした広告商品を提供してきました。そうすると、徐々に新しいお客さんをつくることができないという課題が出てくるので、アッパーファネル向けの広告をつくっていきます。

杉原:アッパーファネルもやりつつ外部配信もするということですよね。

アタラ 杉原

春山:はい。さらに成長を加速するために、新規ユーザーを獲得することを目指したい店舗さんにおいては、外部向けの広告プロダクトをご利用いただいています。

同じ管理画面で楽天市場内部だけでなく外部への配信、ROAS計測も可能

杉原:外部プラットフォームに投げ込むデータのセグメンティングは、御社のプラットフォームの中でできるようになっているのですか。

春山:そうです。例えばInstagramへの出稿をする際もMeta Bussiness Suiteの管理画面を使わずに、われわれが提供している管理画面から簡単に出稿できるようにしています。セグメントについても、われわれが楽天のデータをMeta側と連携して、店舗さんが簡単に選べるようにしています。

杉原:大変よくつくられていますね。

春山:店舗さんからすると、同じ管理画面で中も外も出せるようになっています。

店舗さん自身でLPを楽天市場の店舗に設定してInstagramに出稿することはできるのですが、楽天市場の店舗ページには外部の計測タグを入れることはできない仕様です。そのため、店舗さんには、なんとなく売上が伸び、なんとなく新規が増えたという程度しか分からないという課題がありました。

そこで、それならば、われわれがその仕組みを簡単にかつ、楽天のデータを活用した広告を提供すればよいのではないかと考え、スタートさせたのが「TDAエクスパンション(TDA-EXP)」です。FacebookやInstagramなど楽天グループ外のユーザーに向けて広告配信ができ、もちろんROASも計測できるようになっています。

TDA-EXP

TDA-EXP

広告ビジネスは店舗の売上最大化が目的。楽天経済圏のデータ活用でより進化を目指す

杉原:ここまでサービスのご説明をしていただきましたが、広告事業として2桁成長がずっと続いているということですよね。

春山:はい。そのとおりです。

杉原:御社は純広などをいち早く始めた日本最古のリテールメディアなのではないかと私は思っているのですが、昨今の新興勢のリテールメディアの流れを見て、どのように思われていますか。

春山:われわれは、もともと広告メディアとしてやってきたつもりは、あまりありません。先ほどお伝えしたとおり、店舗さんの売上を最大にするためにどのような仕組みにすればいいかということと、それぞれの店舗さんがマーケティング活動をフェアに行える環境を提供する必要があることを考えた結果、広告ビジネスという形を選択しているというのが正直なところです。ただ、俯瞰すると、おっしゃるとおり、われわれはリテールメディアですね。

杉原:あとにつながっているのですね。

春山:そうですね。その観点で話をすると逆に、われわれのほうが遅れていると考えています。世の中の一般的な広告の世界では当たり前のように導入されていることでも、まだ、われわれのプラットフォームではできないことのほうが多いかもしれません。会社も仕組みも大きいので、プラットフォームに対して改変を加えるときの柔軟性がなかなか簡単にいかないジレンマがあります。

仕組みとしてシンプルでコンパクトなほうが、いろいろなことに対してスピーディな対応ができるのではないでしょうか。2024年はさらなる改善を重ね、より多くの店舗さんに満足していただけるような仕組みの提供を目指していこうと事業内で話をしています。

杉原:楽天経済圏のデータの活用ができるということも、とても特徴的ですよね。

春山:楽天市場以外にも、楽天トラベル、楽天GORA、楽天ビューティ、楽天カードや楽天ペイなどもあり、メディアとしてもサービスとしても幅広く持っているので、ショッピングだけでなく、いろいろな形でユーザーのビヘイビアのデータを取ることができること。そして、それを活用したユーザーのペルソナ設計や、それに基づいた広告の出し方ができることが、他のプラットフォーマーと比較したときに大変強みになっていると思います。

杉原:かなりのメリットですね。春山さんが今おっしゃったようにペルソナを思い浮かべると、特徴を描く項目がたくさんありますね。非常に立体的なターゲティングができそうですね。

春山:項目は増えてくると思いますし、精度も上がると思います。

杉原:会社としても、積極的に経済圏のデータは広げて活用していくのですね。

春山:はい。その方向で考えています。

オンラインもオフラインも含めて最大の売上を上げられる取り組み

杉原:オフライン、リアル店舗のほうはどうお考えでしょうか。

春山:これはなかなか難しいところなのですが、リアルにおいても特徴的なソリューションを考える必要があると思います。

杉原:店舗の立場からしてみると「オンラインでもオフラインでも売れればいい」というところはありますよね。

春山:リアル店舗ではどうしても在庫の管理の話も出てきますし、ユーザーが欲しい靴のサイズがなかったときに「取り寄せならもういいです」となってしまう場合もあります。それならば、オンラインですぐ買えるほうが圧倒的に便利ではないですか。お店全体としてオンもオフも含めて最大の売り上げを上げられるような取り組みを、各リテーラー、パートナーさんと少しずつ進めています。

一方、TVCMやTouTubeなどのマスマーケティングにおいては、その効果を計測する場として楽天市場のようなデジタルの売り場だけでなく、リアル店舗の売り場において、その商品はどんな人に、どれくらい売れたのかを計測したいというニーズもいただきます。

杉原:それが、例えば「Instore Tracking」などですか。

春山:そうですね。他にもリアル店舗で利用できるクーポンを配布し、キャンペーン対象の商品の販促や認知拡大を支援できる「Rakuten Pasha」というサービスもあります。

杉原:まさにリテールメディアですね。

ブランド、メーカーの公式店の増加であらゆる方面でのWinnerをつくりたい

杉原:今後の展望や計画についてお話しいただけますか。

春山:今までは、楽天市場に出店していただいている店舗さんの売上をどのように上げていくかというところで、店舗視点でのサービスの提供が多かったのではないかと思います。今後より一層、楽天市場全体として成長していくためには「楽天市場にはさらなるソリューション提供の可能性がある」と考えるメーカー・ブランド企業様の視点での取り組みが重要だと考えています。

いろいろなメーカー・ブランド企業様と話している中でご要望もたくさんいただいているので、広告プロダクトだけではなく楽天市場としての取り組みの中でできることを増やし、彼らとのビジネスの規模をいかにして増やしていくのかを、ここ数年でスピードを上げて進めていく必要があると考えています。

杉原:ブランド、メーカーさんの公式も増えているというお話でしたよね。少し意外でした。

春山:ファッション、コスメ、インテリア・キッチン、スポーツ、家電と、さまざまなジャンルのメーカー・ブランド企業様にご出店いただいています。有名なメーカー・ブランド企業様の公式店が楽天市場にあると、ユーザーからも「楽天市場は安心してショッピングできる場所」と認識していただけるようになりました。楽天市場のブランディングにも非常に寄与していると思うので、この流れは絶やさずに続けていきたいと考えています。

一方、メーカー・ブランド企業様にとっては、直営店は路面店のようなものだと思います。ただ、路面店だけでは売上拡大はやはり大変で、ショッピングモールにも店舗が欲しいのではないでしょうか。路面店には恐らく目的買いの人しか行かない一方で、ショッピングモールでは偶然立ち寄った新しいユーザーとの出会いがあります。

今までは、利益の観点や顧客と直接コミュニケーションを取ることができるという観点から、直営店を重視していたのではないかと思います。ただ、直営店とモールは役割が違うということにメーカー・ブランド企業様が気づき始め、成長拡大のために出店されるケースが増えているのだと思います。

ただ、メーカー・ブランド企業様にとって楽天市場は数ある販売チャネルの一つにしかすぎないので、楽天市場だけではなくそれ以外のチャネルでも販売を拡大していきたいとお考えだと思います。そこでわれわれは、楽天市場を単なる売り場ではなくメディアとして使っていただき、例えば楽天市場に広告を出稿したら百貨店で売れるようになったり、YouTubeの再生回数が増えたりなど、いろいろなチャネルで売り上げが上がったり、認知拡大につながったりするようなメディアとして扱っていただけるポジションまで成長できると面白いと思ってます。

杉原:なるほど。メーカーが増えてきているという状況もありつつ、プロダクトの設計思想としては一部のWinnerをつくるのではなく「皆さんに売り上げを立てていただきたい」というところが特徴的で面白いですね。多くのプラットフォーマーはどちらかに寄ってしまうところがある気がするので、バランスを取りながらやっていらっしゃるのだなと率直な印象として思いました。最後に、AIを使った取り組みは何か進めていらっしゃいますか。

春山:今まさに楽天全体でAIを、さまざまなサービスや業務への導入を進めております。広告においては、クリエイティブ原稿の制作やキャンペーンの設計、原稿審査など、さまざまな箇所にAIを導入し、広告運用業務の効率化だけでなく、誰でも高い広告効果を生み出すことができる仕組みを提供できるように数多くのプロジェクトを同時並行で進めています。これは、またお披露目できるころになったらご紹介させていただきますのでご期待ください。

杉原:本日はどうもありがとうございました。


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