書籍『Amazon広告“打ち手”大全』:鳴海拓也さん、寳洋平さん著者インタビュー

書籍『Amazon広告“打ち手”大全』:鳴海拓也さん、寳洋平さん著者インタビュー

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書籍『Amazon広告“打ち手”大全』が発売

Google 広告、Facebook広告に続いて“第3の巨人”と呼ばれるほど急成長を続けているAmazon広告。Web広告に携わる方であればその勢いについて耳にする機会も増えてきたことでしょう。しかし日本国内ではまだ事例や情報が少なく、担当者は手探りでの運用・改善が求められてきました。そんな中、満を持して2019年4月に『Amazon広告“打ち手”大全』が出版されました。

そこで今回は、筆者である株式会社5の鳴海さん、アユダンテ株式会社の寳さんに本書の内容に関する突っ込んだお話やAmazon広告の運用で工夫されている点についてなどをお聞きしました!

 

今回の話し手:株式会社5の鳴海拓也さん、アユダンテ株式会社の寳洋平さん

話し手:
株式会社5 取締役CLO 鳴海 拓也さん
アユダンテ株式会社 チーフSEMコンサルタント 寳 洋平さん

聞き手:
アタラ合同会社 チーフコンサルタント
浅田 梨沙

 

まとめすぎると良くないのがAmazon広告

浅田:まずは自己紹介をお願いします。

 

鳴海:株式会社5の鳴海です。2005年からリスティング広告で業界経験をスタートして14年目になりました。Amazon広告に関しては2017年ぐらいから始めて2年経ちました。

今はCLOとして自分も運用を行いながら、5の中で運用型広告などを教える教育を行っています。弊社ではAmazon solution partner(旧メディアレップ)事業も行っており、パートナーと契約を結んで一緒にAmazon広告の運用を行う事業もしています。今回の本については寳さんからお声掛けいただき、その後お仕事としても一緒に行うようになりました。

 

 

寳:アユダンテ株式会社の寳と申します。チーフSEMコンサルタントという肩書で、普段は運用型広告のコンサルティングや運用サービスの提供などを行っております。

 

自分がアユダンテに入社してからアユダンテの広告事業が立ち上がったので、自分が責任者としてサービスを提供しています。

 

Amazon広告自体に触れたのは2018年からになりますので、まだ1年ぐらいです。今回の執筆をきっかけにAmazonのスポンサー広告やDSPに触るようになりました。今回の自分の一番の功績は鳴海さんをこの本の執筆者として紹介できたことです(笑)。

 

 

浅田:鳴海さんはもともとAmazon広告を運用されていて執筆に入られたけど、寳さんは執筆の話が先でAmazon広告を運用するようになられたのですね。

 

寳:そうですね。海外の情報ですとか、お客様で古くからAmazon広告を運用されていらっしゃる方とお話をさせていただく機会があって、これから需要が高まる可能性があるとは思っていました。そこで深く取り組んでいらっしゃる鳴海さんに、一緒に執筆していただけませんかとお声掛けした次第です。

 

浅田:ありがとうございます。では、Amazon スポンサー広告について2点お伺いしたいと思います。本の内容にありました“アカウント構成の3つの型”について、こういった型に行きついた経緯や、もし失敗例があれば教えてください。

 

鳴海:型を考え始めたきっかけが、初めて担当したスポンサー広告の案件でした。それはASINが2,500個くらいあって、どうやってグルーピングしようかと考えたとき、ある程度までは今までの経験でグルーピングができそうでしたが、細分化したら2,500 ASINがとんでもない量のキャンペーンに分かれてしまいました。キャンペーンでしか設定できない項目もあるので、もっとパフォーマンスを出しつつ、作業効率も担保するにはどうするべきか、というのが型の種類を考えるきっかけでした。

 

最初は本書で紹介した「1キャンペーン1ブランド型(バランス)」でスタートしていましたが、色々なアカウントを運用しているうちにまとめすぎると表示されないASINがあることがだんだん分かってきました。突き詰めると1キャンペーン1 ASINが良いのではないかということで「1キャンペーン1 ASIN型(分析特化)」を作りました。

 

3つめの「1キャンペーン全ASIN型(管理特化)」、まとめるパターンは、クライアントから相談いただいてアカウントを見させていただくとそういう分け方が多かったんです。メーカーの方の直運用とかだと、Amazon広告運用に手を回す時間がなく、まとめざるを得なかったと思うのですが、まるっとまとめて、しかも自動ターゲティングでやるみたいな感じでした。

 

本のターゲットとしては広告代理店の方だけではなく、メーカーの方も想定しているので、メーカーの方でもこういうやり方であれば効率よくできる、といった経緯で3つの型を作って書きました。もともとGoogle 広告で10数年の運用経験があったので、意外とスムーズにできたのかなと思います。

 

寳:Googleがここ数年推奨しているアカウント構成だと、どちらかといえば“まとめる”という考え方じゃないですか。でもAmazon広告のアカウントを作るとき、その考え方はAmazon広告では必ずしも当てはまらないのだと鳴海さんに言われていきなりつまずきました。

 

鳴海:そうですね。まとめちゃうと表示されないASINが出るので、それが失敗といえば失敗ですね。まとめて、効率を重視してしまうと売り上げが取れないので、その匙加減が大事かなと思います。

 

浅田:確かに、私が最初に触ったアカウントも元はまとまっているパターンで、露出しないASINやキーワードとのマッチ率を上げるために細分化していった経緯がありました。今、Amazon広告とGoogle 広告は違うというお話が出ました。その違いや匙加減について、私は手探りで身につけていったのですが、情報はどう収集されましたか?

 

鳴海:私も手探りでした。主にAmazonのサポートの方や広告代理店に勤めている知り合いと情報交換し、聞きながらでしたね。

 

浅田:ヘルプページに書いていない情報も多いので、やはりそうなりますよね。

 

全体を俯瞰する高い目線を持つ

浅田:次の質問です。本書には在庫切れやカート負けしてもスポンサープロダクト以外は自動停止しないから気を付ける必要があると記載されております。この点について私もどうチェックすべきか非常に悩んでいまして、どのように管理されていますか?

 

鳴海:チェックは目視でも行っていますし、クライアント様と連携し、在庫切れや工場の生産が間に合わないといった情報のご連絡をいただくようにしています。

 

浅田:Amazon広告を運用していると、クライアントとのコミュニケーションが非常に大事だなと思います。在庫切れの問題にしても商品詳細ページを調整するにしても、広告運用チームだけでは完結しないからこそ密にコミュニケーションをとる必要がありますよね。逆になかなか連携が上手くいかないことはありますか?

 

鳴海:こちらから仕組みをご説明するとその重要性を理解していただけて、コミュニケーションを取った方が良いという意識を持っていただけているので、今のところ困ったことはないですね。

 

寳:お客様とのコミュニケーションが必要だなというのは私もとても感じています。こちらの提案によって商品詳細ページの見せ方や商品そのものを変えることを検討してくださるなど、お互いが近い距離で仕事ができるほうがうまくいくように思います。

 

鳴海:意識しているのは、マーケターの視点を持つことですね。マーケターは全体を俯瞰して見られなければいけないと思っています。社内では「商売の相棒になる」といった理念があり、それが考え方として浸透していますね。

 

寳:アユダンテは運用型広告のチームがあるのですが、コンサルタントにビジネスの目線の高さやコンサルティングとしての提案のスキルが求められているので、目線の高い戦略を含めて取り組むことは自分たちにもフィットします。

 

浅田:以前Amazon広告についてインタビューさせていただいた企業様だと、ARAP(Amazon Retail Analytics Premium。販売分析レポートプレミアム)でAmazon全体の売上を見るようにしているというお話がありました。やはり御覧になっていますか?

 

※参考

 

鳴海:そうですね。広告以外のデータは絶対見ています。何が売れているのかとか、あわせ買いはどれかなど。

 

浅田:そのデータを広告に活かすこともできますね。

 

 

ブランディングも打ち手のひとつ

浅田:Amazon広告は広告費をかけているほど商品の表示順位は上位になりやすいですし、逆に自社指名キーワードであっても競合商品が多く表示されてしまうこともありますよね。Amazon広告にあまり予算を割けない場合、どうやって勝負していくのが良いと思われますか?

 

鳴海:ある程度の広告費は必要だとは思います。例で挙げるとしたらアメリカのAmazonでしか商品が買えない「Bai(バイ)」というドリンクが上手くいった例になるかもしれません。これはAmazon内でブランディングをして一大ブランドへ成長していったので、Amazonに特化させるとある程度はいける可能性もあるのかなと思います。

 

また、「Anker(アンカー)」もAmazonで成功した企業ですよね。Ankerはスポンサー広告が登場する前からAmazonに取り組まれて大きくなっているので、広告以外で成長していると思います。

参考:

 

浅田:広告費で勝負に挑むというよりもブランディングを考慮するということですね。

 

鳴海:ブランディングも考えられる打ち手のひとつかなと思います。

 

寳:Amazon内のユーザーニーズを知った上で、Amazon内で売れるようにしていかなければならないですよね。成功企業もAmazon内で売れていったわけですので、そうするとやっぱりデータが必要になってくると思うので、いくらかのAmazon広告費は必要かなと思います。

 

ROASや利益の話だけではなく、重要なマーケティングデータを得られるので、Amazon内でいかに売れるようにするかということを考えて、商品を展開、または改良していくことが重要だと考えています。

 

浅田:レビューもよく読んで、どういうことを指摘されているのか、評価の分析や競合製品にどんなものがあるのか、そういうことをきちんと分析しAmazonの市場に最適化していくことは重要ですよね。

 

寳:本書のあとがきにも書いたのですが、デジタルというのを取り除いた、マーケティング的観点が求められている感じがしています。先ほどお客様と距離が近いという話をしましたが、お客様も商品改良をしてくださったりアイデアをくださったり、距離の近さとマーケティングデータを活かして商品を改良していくと強いと思いました。

 

分析に時間をかける

浅田:次はモニタリングについてお伺いしたいと思います。Excelでレポート作成といった手動か、ツールを使うのかの二択かと思っているのですが、どのようにモニタリングされていますか?

 

鳴海:今はExcelで行っていますが、アカウントが増えて非効率という声が社内で出てきているので、Kenshooを入れようかなと検討しています。移行段階ですね。

 

参考リンク:

 

浅田:やはり手動での管理は限界がありますよね…。日々の運用で効率化するために工夫していることは他にありますか?

 

鳴海:バルクを組んでまで力業でやるのは避けたくて、本質的なことに時間を割くようにしています。機械的になってしまうとダメで、Amazonの検索ユーザーがどういうことを考えて検索しているのかを見て考えることが重要なので、分析にはむしろ時間をかけてやっても良いかなと思っています。我々の価値はそこになるかなと。

 

運用代行の人はいろんな業界の仕事を見ていますよね。例えばミネラルウォーターを売っているメーカーの人はミネラルウォーターには詳しいけど、ビールメーカーのことには詳しくないのではないでしょうか。しかし、広告代理店ならビールメーカーでどういう施策が成功しているとか、トレンドを分かっているので、他ジャンルのナレッジをトランスファーしてやっていくのが価値かなと思います。

 

分析もそうですし、他業界のナレッジをちゃんと落とし込んで展開してあげる、そこは時間をかけてやった方が良いかなと思います。レポートは効率化を考えるけど、分析に関して効率化はあまり考えていないですね。

 

寳:Amazon広告には新しい分野として取り組んでいるので、その取り組む時間をつくるために自分は案件をもたず、チーム内に分散しているという状況です。効率化までは正直まだ考えていないですね。

 

浅田:チームでAmazon広告に時間を割ける環境体制をつくるということと、考える・分析するときには時間を割くことが工夫しているということですね。

少し出ましたが運用体制についてもお伺いしたいと思います。鳴海さんはご自身と他の方も運用されていて、寳さんはご自身でしか運用されていないということでしょうか。

 

寳:今は5さんと協力しながら進めています。1社に対して5さんから2名、弊社から2.5名でサポートするなど、少しずつ体制をつくっている状況です。

 

鳴海:弊社の場合だとアカウントプランナーがいて、運用を行っています。お客様とのメールのやり取りなどもアカウントプランナーがやっています。

 

オペレーションはオペレーターが行っていて、オペレーターはレポート周りや予算管理のチェックなどアラートを挙げるのはオペレーターが行っています。一人で何社か見るといった代理店であるような体制で行っています。

 

浅田:ありがとうございます。いろいろとやり方はあるかと思いますが、一人でずっとやっていると限界が来ますし、難しいなと思います。どう分けるにしろ、何人かでチーム体制をつくって取り組める環境にしたいですね。

 

Google 広告での成功体験は一度手放して再構成せよ

浅田:Amazon広告を運用する上で、全体を通して気を付けていることやモットーがあれば教えていただけますでしょうか。

 

寳:運用型広告は道具だと思っているので、向き合うのはお客様です。なので広告側に取り込まれず、あくまでもお客様と向き合うことが主でそれを実践化するということに気を付けています。

 

鳴海:かぶってしまいますが、Amazonに限らず上から俯瞰してみるというのは気を付けています。Amazon広告でいうと、Googleと同じように考えないということです。

 

Google検索に訪問している人とAmazonに訪問している人では目的が全然違うので、プラットフォームが変わったら運用方法も変わります。経験者ほど危ない気がしますが、Googleでの成功体験はそのまま通用しないということに気を付けています。

 

寳:Googleでの体験が役に立たないわけではないけれど、一度手放してAmazon用に再構成するのが良いですよね。

 

浅田:最後に、読者へメッセージもあれば。

 

鳴海:まえがきにも書いたんですが、執筆するときに「ノウハウを出してしまうんですか?」と言われたことがあって、でもこれは業界のためになれば良いかなと思っています。これからもっと本が出てくると思うので、みんなでインターネット広告を盛り上げていけるように切磋琢磨していきたいですね。

 

寳:自分が広告に関わり始めたときに、当時の先輩たちから、6~7年後までインターネット広告は右肩上がりに成長していくよ、と言われました。当時別にそれを鵜呑みにしていたわけではなかったんですが、実際に関わって取り組む中でお客様のビジネスが加速して、価値を提供できるような成功体験がありました。

 

恐らく、こういったように右肩上がりに上がっていくということが今後Amazon広告でも起きる可能性があると思っています。なので、これから始める方にもそういった体験してほしいなと思いますし、どんどん始めてほしいです。鳴海さんが初期のGoogle 広告に似ていると仰っていたように、やれば伸びますしお客様に価値を提供できる媒体だと思いますので、興味を持ったり触れる機会があれば、ぜひ取り組んでいくのが良いと思います。

 

浅田:本日は貴重なお話をありがとうございました。

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