マーケティングにおけるUXの可能性 後編:有園雄一さんに聞く

マーケティングにおけるUXの可能性 後編:有園雄一さんに聞く

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モバイルデバイスの普及や通信システムの発達、IoTにより、生活者は場所を問わずメディアに接触し、従来のテレビはインターネット接続され、YouTubeに代表されるストリーミングサービスをテレビ画面で見ることも半ば当たり前となっています。

このように生活者が接触するメディアやデバイスが無数に混在し、かつプライバシー保護を目的とした法規制やWebブラウザの仕様変更によりデータの分断が起こりつつある状況下では、企業は生活者と無数のタッチポイントを持つことができる一方、従来のファネルに当てはめたマーケティング活動やプラットフォームをまたいだアトリビューション分析も現実的ではなくなってきていると感じています。

そこで本対談では、2014年にDual AISAS Modelを、2018年にリゾームマーケティングを提唱し、現在はビービットのマーケティング責任者としてUXインテリジェンスの普及を推進する有園さんに、マーケティングに対する考え方の変遷と、今後のマーケティングにおけるUXの可能性についてお聞きしました。

今回は、後編記事をお届けします。

※前編記事はこちら:

 

人間はついファネルで整理したくなる

高瀬:リゾーム化社会におけるファネルの概念についてはどう思われますか。

 

有園:ファネルの概念は、Attention、Interest、Search、Action、Shareでもいいのですが、川上から川下にだんだん落ちていくような流れだと捉えたほうが、人間が考えやすいからそういう構造で捉えているのですよ。

 

リゾーム化の社会というか、例えばビービットではバリュージャーニーと呼ぶのですが、これはコンバージョンパスデータのようなものとほぼ近いものです。いろいろ経路をたどってコンバージョンに至るといってもいいと思います。あるいは至らずに、ぐるぐるとジャーニーが回っているというものもあるかもしれません。

※参考リンク:

例えば花についての本を買ったとして、本が面白くて花に興味を持ったとします。そうすると花屋さんなどのウェブサイトを見て回って、そのうち会員制の花屋でいろいろな花の知識を身に付けていくプロセスがある。これらは全部ジャーニーですよね。

 

そこにファネルという概念が当てはまるのかというと、必ずしもそうではありません。広告を打ちました、では広告を打ってウェブサイトに来てくれればいいよね、ということなのですが、そこからコンバージョンポイントまでいくというのは、ファネルとして一つの線を切っているだけです。しかし本当はユーザーの動きは先ほどの例でいくと、花屋のサイトで見ていいなと思って店舗に行って実際に花を見てみるとか、実際の花を見てみて「サイトの花の赤色はきれいだったけれど、あれはフォトショップで加工しているな」と思ったりするのを繰り返したりしますよね。

 

「じゃあこの花にしようと買ったらすぐ枯れた」とか「水をあげていれば大丈夫と書いてあるけど、水だけじゃ駄目だと気付いて土からつくってみる」といった流れは、実は必ずしもファネルではないですが、強引にファネルと置いているだけなのです。

 

僕はファネルよりリゾームで捉えたほうがいいと思うのですが、やはりマーケティングをしようと思うと、人間はついファネルという行動で切って整理して施策を並べたくなるものです。そうでないと、そんな複雑な動きは追えませんよね。コンバージョンパスデータと言っていても、取れるデータでやっているだけじゃないですか。そんな複雑なことを全部トラッキングできないし、構造化もできないですよね。でも、ある程度構造化しないと効率的にマーケティングの施策が打てないので、たまたまある種、便宜的につくったものがファネルであるという感じだと思います。

 

高瀬:おそらくテレビの影響力がまだ大きかった時代は、それこそアッパーファネルであればテレビCMを打ち、ロウワーファネルに対しては検索広告といったような考え方で通用したのだろうと思います。しかしながら、現在のリゾーム化社会においては、ファネルの位置=メディアという関係性でもなくなってきている印象を僕は持っているのですが、有園さんはどう思われますか。

 

有園:それはケース・バイ・ケースですよね。例えば、スマートニュースのようなものはテレビCMを打つと効きます。もちろんターゲティングをしっかりやってテレビCMを打つという話なので、ばらまけばいいという話ではありませんが。まず、それはスマホとテレビの相性が比較的いいからです。スマホを使いながら、たまたまテレビがついているという構造が生活者の中にあると、テレビCMが面白いと思ったらアプリをダウンロードしようと思うということで、ここの距離がとても近いじゃないですか。

 

その結果、アプリのダウンロード数は増えるし、そういったものは相性がいいと思います。一方、全然効かない、うんともすんともいかない領域もありますよね。例えばポッキーなどは、98%の認知率があり、認知を取りにいくのにアッパーファネルを使ってどうする?といった具合です。ケース・バイ・ケースですが、効かなくなっていることも多いのが現実だと思います。

 

高瀬:ファネルに当てはめることが難しくなった要因の一つとして、ユーザーとのタッチポイントが無数に増えたということがあると思います。そのタッチポイントをデジタルで無数に持てる社会が、いわゆるアフターデジタルの世界だと思うのですが、そういった世界においては、マーケティング活動においても各タッチポイントでのUXをスピーディーかつ継続的に改善していくことが重要だと言えるのではないかと思います。

 

有園:そのとおりだと思います。ファネルで考えるのが難しくなったというより、ファネルはもともとほぼ仮説の構造なのですよね。ただ、その仮説に基づいてやってきた理由として、マスマーケティングの時代においてもあくまで仮説であったわけで。例えば、電通や広告業界がテレビを売るためにAttentionを取らないといけないための道具として使ってきたわけです。

 

何が言いたいかというと、もともとファネル自体がそもそも効くか分からない虚構としてやってきたということです。今になって、ファネルに当てはめられなくなった、効かなくなったといっても、それはファネルが効かないのか、もしくはもともと景気が右肩上がりではないから何をやっても効かないのかという話があると思うのです。

 

なので、ファネルが効かなくなったという言い方をしてもいいのですが、ではファネルは効いていたのですか?と言いたいです。たまたま高度経済成長の時代だっただけかもしれないという話もあります。僕自身はファネルが効いていたというのは眉唾だと思うし、ここにきてファネルが効かなくなったという言い方も、つまり眉唾なのではないかと思っています。

UXを売る時代へ

 

有園:ファネルとはまったく関係ないのかもしれませんが、いずれにしても、昔に比べて物が売れなくなってきている状況になったので、他のやり方を考えないといけない時期がきていると思います。それと並行して、インターネットが出てきたり、あるいはデジタル化してきたりという中で、分かりやすく言えばソフトウエアというものが出てきました。例えば95~96年にWindows 95が出ましたが、これは物ではなくソフトウエアですよね。つまり、Googleが世界中の情報を整理して全ての人にアクセス可能にするというミッションを掲げているという話がありますが、ビル・ゲイツもMicrosoftもソフトウエアという情報を売っているわけですよ。

 

簡単に言うと、物ではそんなに差別化できないということです。ちょうどあのころからポスト産業資本主義などと言われはじめました。産業資本主義に対してポスト産業資本主義、あるいは高度情報化社会などと言われますが、産業資本主義は機械制工場の資本主義というイメージです。工場に大きな設備があって、トヨタとかが車を造るというのは、つまり物を造るということですよね。これは大きな設備を購入するのは個人ではなかなかできないから、大きな会社が資金を入れて工場を造るということです。その工場から物が造られていくという構造じゃないですか。

 

ただ、ソフトウエアの時代、あるいは情報の時代の到来によって、そんなに大きな設備がなくても付加価値を付けたり差別化できるように変わってくるというのがポスト産業資本主義という感じですよね。情報を売っているわけです。Googleも検索エンジンの中で収集するものは情報だし、Windowsのソフトウエアもパッケージ化された情報です。情報で付加価値を付けるとなってきたときに、必ずしも店頭に並べなくてもいいですよね。

 

必ずしも、と言ったのは、車だったら今まではディーラーのところで実物の車を見て、テストドライビングをして買っていました。すると虚構としてのファネルみたいなものがある種、分かりやすいのです。車をCMとかで見て、興味関心を持ったから店頭に行って、手に取ってみて購入に至るというのは、一つのファネルとしての構造に当てはまりやすいでしょう。

 

Windowsのソフトウエアも、パッケージ化されて家電量販店の棚に並んでいるときは、店頭に行って手にするのは一見ファネルのような感じがします。しかし大きく違うのは、そのDVDとかCDの中にデータが入っていて、どんなものなのかほぼ分からないけれど買うという状態だということです。Windowsとはどんなものなのだろう?という。

 

高瀬:確かにそうですね。「物」として大きな違いを感じます。

 

有園:車は店頭で「こんな形で乗ってみたらこんな感覚だよね」と商品の特性が分かった上で買う一方、Windowsは「これはなんだろう?使ってみないと分からないけれど、みんな使っているみたいだし」といって使いながら「ああこんな感じか」と分かる商品です。

 

そういった特性も違うのですが、例えばDELLのパソコンを買ったときに、その人はWindowsを買っているつもりはないのに気がついたらDELLのパソコンに入っている、ということも起こります。DELLのパソコンを買ったつもりでもWindowsが入っている。それで、そのWindowsは知らないうちに勝手にアップデートされていき、どんどん機能が上がっていくような感じです。それがSaaSビジネスなのではないでしょうか。

 

実際にテスラの車がそうなってきています。車を買ったつもりでも、乗ってみたら頻繁にソフトウエアが更新されていきます。昔は、車というものは7、8年に1回買い換えるサイクルの中で、ファネルの構造にのっとってマーケティングをやればいいという発想でしたが、テスラのユーザーは車が毎月何かしらアップデートされているので、車を買ったけれどソフトウエアがアップデートされるから楽しい、という話があるのですよね。WindowsやAdobeのソフトウエアが今SaaSになっていますが、そういったソフトウエアを買ったのと同じような感覚になってきているのだと思います。

 

アップデートされるということは、実は日々買っていることでもあります。Adobeのように月々2,000円という感じで払っていれば毎月買っているような感覚もあるかもしれませんが、ワンパッケージで買っているWindowsなどは、アップデートごとに商品を買っている、あるいは前払いしていた、という感じですよね。知らない間にSaaSビジネスの中に組み込まれているのです。これを月額で払うのか、どのタイミングで払うのかは置いておいて。

 

そうすると、毎月商品を知らない間に買っているとか、月々の契約で買っているとなったときに、これはファネルではないですよね。すでに既存顧客だとしても、知らない間に買っているという感じです。

 

高瀬:言われてみると確かにそうですね。

 

有園:知らないうちにアップデートされていて、新しい商品を買っている。一般消費者にとってはGoogleの検索エンジンやFacebookは無料ですが、Googleの検索エンジンは毎日更新され続けているものなので、常に変化している商品を使って検索していることになります。僕はゼロ円で使っているつもりでいても、彼らは行動履歴などを基にして広告を打っているということになりますが。

 

そうすると、仮にゼロ円で買って使っているとするじゃないですか。ゼロ円だから許されるかもしれませんが、毎回違うものに徐々に変わっているわけです。アップデートされ続けているとすると、すでにファネルという概念はなくなっていますよね。

 

一方、例えばキットカットのチョコレートだと、子どものころに1回食べたとか、女子高生が「きっと勝つぞ」といって受験のお守りとして買っていたとします。それ以来、食べていないけれどCMをたまに見て「そういえばおいしい」と思い返し、CMを見たあとコンビニにあったから買ってみた、ということは起こり得ます。

 

この発想にはファネルが必要です。あらためてリマインド的にCMが効いて、思い出して店頭で買うということですから。ただ、キットカットを知らない間に食べていました、ということはないじゃないですか。知らない間に食べていて、しかも毎日更新されていますということはないですよね。

 

高瀬:つまり、ファネルが通用しない分野が出てきているということですね。

 

有園:そのファネルが通用しない分野の一つとして、テスラのような車が出てきているということです。あと10年ぐらいすると、高瀬さんの脳がアップデートされるということもあり得ますよ。

 

高瀬:そうですね。

 

有園:もう人間自身もそうやってアップデートされていくような、人間とネットのコネクションが起こるかもしれません。人間の脳を刺激することよって、人間の脳の機能自体がアップデートされるような実験も行われているので、そうなっていくかもしれないのですよ。

 

極端な話をしましたが、そうやっていろいろなものに今までファネルの考えが効いていた、としたときに、それが効かない状態が起こります。例えばキットカットのパッケージがIoT化される可能性も十分にあるじゃないですか。となると、ただ単に物を売るというときにも、ファネルの構造でAttentionを取って売ることを考えているだけでは通用しないということが、いろいろなところで起こっているのです。これをSaaS型のビジネスと呼ぶのかは分かりませんが。

 

高瀬:そこは結局、UXの重要性や、それこそサービス・ドミナント・ロジックという話につながっていくということですよね。

※参考リンク:

有園:そうですね。それ自体がUXじゃないですか。もうテスラが車というよりユーザーエクスペリエンスを売っている、ソフトウエアを売っているわけですから。それで言うと、電子政府に変わった場合、政府もユーザーエクスペリエンスを考えないといけなくなりますよね。この前、定額給付金の支給が滞りましたが、あれはユーザーエクスペリエンスが悪いということですよ。システムが悪いわけですから。

 

高瀬:まさにそうですね。

 

有園:日本はまだまったく電子政府化されていませんが、ユーザーエクスペリエンスが圧倒的によくないので、改善してください、アップデートしてくださいという感じですよね。つまり、生活や社会の至るところがデジタル化するということは、そのユーザーエクスペリエンスをよくしていくということを考えないといけないのです。ユーザーエクスペリエンスさえよくなってユーザーに気に入られれば、サブスクみたいなビジネスが成り立つということです。知らない間に購入している、SaaSビジネスができるということですね。

UXインテリジェンスは運用者にとっても重要

 

高瀬:ここで若干ミクロレベルの話に戻るのですが、ビービットの藤井さんと有園さんのMarkeZineでの対談記事の中で、藤井さんがUXインテリジェンスの構成要素を説明されていましたよね。三つの精神と三つのケーパビリティという話をされていて、先ほどの話にも少しつながりますが、マーケティング活動においてもUX改善は大事だと思っています。そして、今後UXインテリジェンスはマーケティング担当者にもかなり求められていくのかなと思いました。

※参考リンク:

それこそ僕らのような広告運用者も、特にUXインテリジェンスでいうところのケーパビリティの部分、AIを使いこなす能力や、データサイエンスを活用して理解する能力、さらにはヒューマンインテリジェンスを扱う能力が実は重要になってくるのではと思ったのですが、有園さんはどのようにお考えですか。

 

有園:おっしゃるとおりだと思います。世の中がどうなっていくか分かりませんが、UXインテリジェンスと呼ぶか呼ばないかは置いておいて、さっき少しお話ししたポスト産業資本主義というとすれば、今後、運用する人やマーケティングをする人に必要であるといってもいいし、日本の教育の中に組み込んでいくべきだと僕自身は思っています。

 

例えばAIを使いこなすことについて、使いこなす、使いこなせないというよりは、ほとんどの人が知らないうちに、もはや使いこなしていますよね。GoogleやYahoo!の検索エンジンも裏で動いているものがAIじゃないですか。だから、知らないところで頻繁にみんなAIを使ったサービスに接している状態になってきているはずです。そうすると、その仕組みについて基礎的なことは知っていたほうがいいし、使える人がどんどん増えていかないといけないと思うので、それはデータサイエンスもおそらく同じですよね。

 

ただ、データサイエンスにしてもAIにしても、データドリブンといっても、そもそもデータ自体には意思はありません。AIについてもそうですよね。AIはもともと人間が作っているものなので、仮にAIが暴走するとした場合に、暴走してシンギュラリティといったところで人間よりも賢くなっていくということはないとは思いますが、それも含めてそういった倫理的なことが求められると思うのです。殺人ロボットや殺人AIがつくれてしまうわけじゃないですか。そうすると、ヒューマンインテリジェンスというものが求められます。

 

高瀬:既存顧客はもちろん、新規顧客を獲得するフェーズでもUXインテリジェンスを基にしたUXベースのマーケティングが必要になっているのではないかと感じています。ある意味、ここ数年のD2Cの盛り上がりとその背景というのは、UXを絶え間なくアップデートしてきた結果であると考えています。

 

有園:まさにそのとおりですね。D2Cという言葉自体がDirect to Consumerなので、その言葉自体がConsumerのユーザーエクスペリエンスを考えないと駄目だということを暗示していると思うのです。

 

例えばパナソニックという会社は直販もしているとは思いますが、D2Cではないとします。直販をしていないときは卸しているだけなので、消費者が店頭でどのような動きをしているとか、あるいはAmazonでどのような動きをして自社の商品を買ってくれるのかといったことは一切気にしなくても成り立っています。しかしD2Cになったときに、自社のアプリやサイトやSNSを持つことになるので、その時点で、そこでどのように消費者が体験していくのかという部分を設計しないといけないわけですよね。Direct to Consumerなので、すでにそこにはユーザーエクスペリエンスをよくしていこうという発想が含まれています。

 

つまり、卸のモデルであれば流通との関係性だけを気にしていればよかったのが、直接やらなければならなくなる。もはやだんだんそうなっていくでしょう。完璧にそうなるとは言いませんが、バランスはどちらかというとD2Cのほうに徐々に移っていく気配があると思います。流通との関係をそこまで気にしなくても生き残っていける企業が結構出てきているということです。

常に変化する世界でのマーケティング活動

 

高瀬:生活者の価値観や情報探索行動、消費行動が多様化しているという話は多くの方が認識しているかと思いますが、個人的にはこのコロナ禍で多様化の状況が露呈したように感じています。従来のいわゆるペルソナをベースにしたマーケティングというよりも、それこそUXインテリジェンスの概念に基づいて高速でPDCAを回していくマーケティングの重要性が今後高まっていくのではないかと、コロナ禍を通じて思っているところです。

 

有園:僕はコロナによって変わったとはあまり思っていませんが、コロナで加速したということをおっしゃっているとすれば、それでいいと思います。

 

それから、ペルソナがまったく通用しないと言うつもりはありませんが、ペルソナで考えるというよりは、あるペルソナの人がいて、その人が昨日と今日では気分が違うよね、という話だと思うのです。そのときの状況に応じて、例えば「昨日はチョコレートなんて食べたくないと思っていたけれど、今日はすごく欲しい」という日があるじゃないですか。つまりユーザーエクスペリエンスとは、その状況に対して適切なコミュニケーションをとることや、適切なオプションがそのユーザーのために存在するということなので、おそらく固定的ではないのですよね。

 

ついついペルソナというと、あるペルソナを想定したらそのペルソナは固定されてしまいます。ペルソナは成長したり老化したりしないので、最近うちのペルソナ、腰が痛いらしいみたいな話にはならないじゃないですか。

 

高瀬:ないですね(笑)

 

有園:ただ、実際のユーザーは腰が痛くなったりするので、その状況を捉えて「腰が痛いあなたにはこれですね」とか「こういう薬がいいですよ」ということに対応できてもいいのではないかと思うのです。テスラの車も、腰が痛いといったらソフトウエアがサスペンションソフトモードとかに変わってくれればいいわけですよ。クッションが柔らかくなりましたとか。スポーツモードだと少し椅子が固いけれど、エグゼクティブモードとかラグジュアリーモードにしたら少し椅子が柔らかくなって乗り心地がソフトになる、といったことがあってもいいじゃないですか。たぶんそのくらいの変更は、ばねの硬さとかを変えればいい話だったりするので、その日の状況が分かれば自動でできるはずですよ。

 

なので、これはファネルもペルソナもそうですが、ある固定的な概念を設定して、それに従って段階的にマーケティングをしましょうとか、ペルソナを固定的に固め、それを狙って球を打ちましょうといったものでも、変動するということです。ユーザーなり消費者なりも毎日変わっていくし、企業が提供するサービスもアップデートされ続けているわけですよね。テスラの車もそうですし、Googleなどの検索エンジンもそうですが、アップデートされていくもので、常に変化する世界の中でそれぞれの状況を捉えてマーケティング活動をしていくということです。コロナの影響でデジタルシフトに少し加勢したので、そういった意識が強くなる可能性はあるのではないかと思います。

 

高瀬:デジタルシフトが加速すると、アフターデジタルの世界観にさらに近づき、流動的なものでもデータとしては見えるようになってくるというところがあると思うので、そういったUXの改善がますます重要になってきそうですね。貴重なお話、ありがとうございました!

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