AIで運用型広告をCookieレスでもターゲティング&拡張配信:SQREEM 東野文武さんに聞く

AIで運用型広告をCookieレスでもターゲティング&拡張配信:SQREEM 東野文武さんに聞く

運用型広告レポート作成支援システム glu グルー

ポストクッキー時代に向け、今後デジタルマーケターが向きあうべき課題にユニークなソリューションを提供するSQREEM

 

・プライバシーサンドボックス(個人情報保護を前提に、引き続き広告に支えられた無料のインターネット世界を維持できるという考えに基づいて「新たなエコシステム」を構築しようとする概念)
・コンテクスチュアルターゲティング(「コンテンツの文脈=コンテキスト」を読み取って分析し、その内容に合わせて広告を配信するターゲティング手法)
・ユーザーID(ファーストパーティデータの活用)

この三つが主なものとしてあげられています。

広告主もパブリッシャーも配慮をしながら、いかにユーザーさまの興味関心に沿った広告を提供しWin-Winの関係を構築できるか、また、新たな時代に向けどのような取り組みを始めていくべきか、試行錯誤を始めている過渡期にあるのではないかと思います。

さまざまな新しい取り組みが生まれる中、機械学習を必要としないAIを利用して膨大なオープンデータを収集・解析し、生活者のオンラインアクティビティをシグナル化して広告運用への活用を進めているSQREEM Technologies。

 

今回の話し手:SQREEM Technologies Japan Pte. Ltd.の東野文武さん

今回は、シンガポール発のTechカンパニーであり、楽天との合弁会社 楽天スクリームでも活動を広げているSQREEM Technologies Japan Pte. Ltd.の執行役員 東野文武さんにお話を伺いました。

話し手:
SQREEM Technologies Japan Pte. Ltd.
執行役員
東野文武さん

聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛

 

AIのテクノロジーによるターゲティング広告の配信

 

杉原:SQREEMさんの会社概要と、東野さんの自己紹介をお願いします。

 

東野:弊社はシンガポールに本社を置くAIテックカンパニーです。
AppleやMicrosoftなどでビジネスマネジメントの経験を積んできたCEOとフィンテック領域で活躍していたCTOによって2010年に設立されました。手前みそですが、グローバルではベンチャー企業の急成長企業ランキングに入っています。日本では2018年に事業を開始し、順調に成長してきました。

私自身はインターネット広告の代理店であるNIKKO(現GMO NIKKO)で、2004年にSEM(Search Engine Marketing)、特にリスティング広告の運用者としてキャリアを開始し、グローバルの総合広告代理店Ogilvy & MatherとNIKKOのジョイントベンチャーとして、デジタルマーケティング支援に特化した組織の立ち上げに従事するなどしてまいりました。

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その後ご縁があって、米国発のアドネットワーク事業会社、アドバタイジングドットコムに転職しました。アドバタイジングドットコムは、当時まだ新しかったディスプレイ広告の会社です。三井物産と米国Advertising.comのジョイントベンチャーで、7年ほど在籍して日本市場での顧客向けコンサルティングと、配信最適化を担う部門のマネジメントを担当しました。

SQREEMに入る直前は、ヤマトグループ傘下のダイレクトマーケティング支援を生業とする広告代理店にて紙のダイレクトメールのDXに携わっていました。

2021年10月から、現職のSQREEM Technologiesにジョインしています。私のミッションは、新たに立ち上げる広告配信プラットフォームの日本へのローカライズを含むメディア事業の統括です。

SQREEMは日本で大きく二つの事業を展開しています。
一つ目は、主に製薬企業を顧客としてデジタルマーケティング支援を行うファーマ事業で、医療従事者の方、もしくは特定の疾病の患者さんのインサイト分析や同ターゲットへの広告配信を行っています。製薬企業にとってはコロナ禍も手伝ってなかなかMRを中心としたドクター向けの営業活動が難しくなってきているという背景があり、大手企業から多くのご相談をいただいています。

日本ではエムスリーさんなど製薬業界支援のドクター開拓ソリューションはすでに存在しているのですが、私たちは実際にバイネームで医療従事者の方のリストを持って活動してるわけではありません。
AIテクノロジーを通じて「インターネット行動でこういった特徴がある方はおそらく医療従事者だろう」といった特徴に基づいてユーザー群としてターゲティングを行い、ディスプレイ広告を配信しています。

二つ目は、楽天との合弁会社である楽天スクリームです。こちらはSQREEMが持っているAIを活用して、特定の商品やブランドに関心がある生活者を広くターゲティングすることができる運用型広告プロダクトを提供しています。
現在はFacebookをはじめとしたSNSの広告プラットフォームにフォーカスしており、SQREEMのAIによるオーディエンスセグメントをFacebook広告上でターゲティングすることで高い広告効果を実現します。

 

杉原:それは楽天さんを通じてやられてるということなのですか。

 

東野:はい。楽天スクリームのビジネスモデルとしては現在、独自AIによるオーディエンスセグメントに対して、SNSのプラットフォーム上でターゲットして配信する形をとっていますが、今夏にはオープンウェブでのディスプレイ広告配信もサービスラインナップに加える予定です。

 

特徴は、機械学習を必要としないAI

東野:弊社の名前は「Sequential Quantum Reduction and Extraction Model」が由来になっています。簡単に言うと「機械学習を必要としないモデルでオリジナルのAIのようなものをつくっている」ということです。

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膨大なオープンデータを収集・解析し、機械学習を必要としないAIであるというのが特徴で、オンラインでの生活者の行動特徴をシグナル変換し、共通点を見出して言語化することができます。

私たちはあくまでもAIテックカンパニーを掲げており、100%デジタルマーケティングやアドテクノロジーに根ざした事業の運営は志していませんが、AIを活用した社会貢献の一つのアウトプットとして、アドテクノロジーの開発があります。

 

杉原:なるほど。その機械学習を必要としないAIを用いて、どのようなことをされているのですか。

 

東野:大きく分けて二つあります。「データ収集」と「収集したデータを分析可能にする加工」です。

データ収集に関してはさまざまなオープンデータ、およびAPIのパートナーシップを通じて得られたデータを解析対象としています。
代表的なものでいうと「サーチログ」があげられますが、他にもクローリングに類した独自テクノロジーによるものや、外部のコンテンツ情報を収集対象としています。FacebookなどのSNSからも一部収集しています。

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構造化されていない情報であったとしても収集して、図の下段の2、3、4のステップでインターネットユーザーの行動分析に活用しているのが私たちのAIの特徴です。

「サーチとツイートなどのログはどうやって比較できるのだろう」と思われるかもしれませんが、取得した全てのWeb行動をバイナリコードに変換し波長に置き換えます。この波長のどの部分が似ていると同じ趣味嗜好を指し示しているのか、という形で特徴量として捉えるイメージです。

例えば「iPhoneを買いたいというニーズがあるインターネットユーザーはどういう人か」を分析する際に、私たちはターゲットをユーザー群として捉えており、特定のCookieや個人にひも付く情報を一切見ていません。
取得しているWeb上の行動を全てグルーピングして「この行動群とこの行動群が似ている」というように定義していくのですが、iPhoneの購買欲求がある行動群は実は自動車でいうとメルセデス・ベンツよりもアウディとの親和性が高いという分析結果が出てきたりします。

また、ファーストパーティデータを活用することもできます。オープンデータと同様にバイナリコードに変換し分析するのですが、楽天スクリームでは、楽天会員に基づく消費行動分析データも個人を特定することなくターゲティングに活用することができます。

 

杉原:ここはポイントですよね。

 

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東野:そうですね。生活者のオンラインアクティビティをシグナル化して捉えることによって、ターゲット分析と広告配信のターゲティング最適化という領域で活用できると考えたのが、私たちがデジタルマーケティングの支援を始めた背景です。

デジタルマーケティング支援において、私たちが価値提供できるポイントは三つあります。
一つ目はアナライズの部分ですが、ターゲットの分析や広告配信の有効ターゲットを抽出することができます。

先ほどのiPhoneの購買需要がありそうな行動群が、例えば「自動車の購入意向でいうと、このあたりにありますよ」とか、料理や不動産、保険、金融商品といった異なる領域の潜在需要とひも付けて、同じ需要を持っている群として定義することができます。

二つ目の要素として、抽出したターゲットセグメントと広告主の製品・サービスとの親和性をスコアリングできるという点があります。

三つ目として、AIが導き出したスコアリングに応じて私たちが広告のプランニングを行ない、広告配信までワンストップで提供しています。AIによるターゲット分析から広告配信までシームレスに実行できるということがポイントになります。

 

杉原:分かりました。

 

 

ディスプレイ広告のプラットフォーム「ONE Market」のグローバル展開

東野:また、グローバルではディスプレイ広告を含むデジタルマーケティングプラットフォームを開発しており、ONE Marketという名称でサービスを始めています。

 

杉原:ローンチはこれからですか。

 

東野:はい。日本では8月から9月をめどにローンチできればと考えています。

 

杉原:もうすぐですね。このONE Marketのディスプレイ・アド・ソリューションと楽天スクリームはどう関係してくるのですか。

 

東野:楽天スクリームの事業は現在、FacebookやTwitterなどSNSプラットフォーム上でSQREEMが生成するオーディエンスに対して広告配信するモデルですが、それらに加えてオープンインターネットでのディスプレイ広告配信を可能にします。

 

杉原:ではONE Market使ったときにどのような効果が出ているのかという事例はありますか。

 

東野:ディスプレイ広告の展開はこれからなので、先行して大きな成果を上げている楽天スクリームの事例をお話しします。

楽天スクリームは、ここが広告運用をされている方々にも刺さる部分だと思っているのですが、先述の通り楽天会員に基づく消費行動分析データをSQREEMのAIの分析対象にも加えながらオンライン行動をターゲティングして、SNSの広告配信が可能なプロダクトを提供しています。クライアントは、ECや不動産、通信など幅広く、広告のコンバージョンレート、CPAの改善という明確な目的をお持ちです。

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そういったクライアントに対して、SQREEMによるオンラインの行動パターン分析を通じてセグメントを抽出し、Facebook、Twitterのカスタムオーディエンスに引き渡して、該当するセグメントをターゲティングして配信しています。

例えば、ここに示したように、アパレルのECでコンバージョン目線の運用をした場合「天文学」のような、普通のプランニングでは出てこないようなターゲティングセグメントを使うことによって、広告運用で成果が出ているという事例があります。

私たちの独自のセグメント例として、一見するとECとまったく関係がないものが出せて、かつ、そこに配信することでコンバージョンが出るというのが一つのポイントになります。例えばラルフ ローレン、グッチというようなアパレルに対する興味・関心を拾うのはもちろんのこと、サーフィンやスイミングもターゲットセグメントとして入れてみるとパフォーマンスが出る、ということです。

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Cookieレスでターゲティング&拡張配信も可能

 

杉原:分かりました。では、今後の展開をお話しいただけますか。

 

東野:先ほどのONE Marketのローンチ準備を日本で進めているのと、楽天との合弁事業で結果が出てきているSNSの部分も含めて、より多くの企業さまに使っていただけるようにしたいと思っています。

 

杉原:それはONE Marketを通じたオープンWebでのディスプレイ配信も含めてですか。

 

東野:はい。ターゲットというか、業種うんぬんというところではなく、私たちの提供価値を発揮できる「こんなお悩みありませんか」というポイントがいくつかあると考えています。

ディスプレイ広告もSNS広告も、運用に関してはやりきってしまっている企業さんが多いように感じています。ある程度運用するとパフォーマンス改善が限界にきてしまう。どうやって効率を重視しながら効果の最大化を狙えるかというときに、私たちのオーディエンスセグメントが役に立つのではないかと思います。運用型広告の高い普及率を考えると、この観点でまだまだ使っていただける企業さまは多いと思います。

もう一つ、広告配信が初めてだったり、新商品・サービスのローンチにあたって、誰をターゲットすればよいか分からなかったりする企業さまも少なくないと思うのですが、最初からある程度見込みが高いターゲットを提供できる、というのも私たちのサービスの強みです。そういった新規ビジネスの広告配信に向けた取り組みとしても使っていただけるはずなので、その辺りを軸に提案していこうと考えています。

 

杉原:楽天以外でも増えていく可能性はあるのですか。

 

東野:そうですね。まだ先のことですが、今お話ししたように、企業さま向けに、広告主さん、代理店さん問わずニーズの開拓はしていきたいです。

 

杉原:最近では結構、リテールメディア、私はXメディアと言っているのですが、小売業が自分たちのIDを使って広告事業をやり始めていますね。

 

東野:そうですね。

 

杉原:なぜXメディアと言っているのかというと、日本の場合、優良なIDを持ってるところはリテールだけではなくて、通信や銀行のほうが展開が早いのですよね。どちらかというと、小売業さんは腰が重い。

 

東野:おっしゃるとおりです。

 

杉原:各社が広告事業を立ち上げ始めていますよね。だから優良なIDは持っていて、自社枠の前にGoogle、FacebookなどのプラットフォーマーにIDを、カスタムオーディエンスを投げて、新事業をまずはそこでマネタイズするというのがあります。

 

 

マネタイズがある程度できてきたら自社枠をつくり始める、それはアメリカとは逆のバージョンですが、いずれにしても広告事業をみんなやり始めて、2023年はとても盛り上がると思っています。つまりそういったところにこのAIプラットフォームが売れるわけですね。

 

東野:そうですね。うまく組み合わせていただくことで、ファーストパーティデータだけでは拾えないニーズがオープンデータの中にある、というのが私たちの強みだと思っています。そういった観点で、Cookieベースではない拡大推計もできるのではないかと考えています。

 

杉原:Cookieベースではない拡大推計。分かりやすいですね。

 

東野:Cookieレスでターゲティングできるというのも特徴です。

 

杉原:Cookieレスでターゲティング、かつ拡張配信もできるということですね。

 

東野:はい。おそらくそこはUnyoo.jpっぽいですね(笑)。

 

杉原:やはりみんなCookieレスどうしようということを悩み始めたので、注目していただけると思います。本日はありがとうございました。

 

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