2015年5月版Google AdWords(Google 広告)新機能発表と、その詳細解説

2015年5月版Google AdWords(Google広告)新機能発表と、その詳細解説

運用型広告レポート作成支援システム glu グルー

春のアドワーズ新機能発表

以前からアナウンスされていた AdWords の2015年版メジャーアップデートの発表が 2015年5月5日(日本時間だと5月6日未明)に発表されました。既にオフィシャルブログでもハイライトが公開されていますので、ご覧ください。

リンク:Inside AdWords: Building for the next moment


YouTubeでも発表の様子を見ることができます

昨年の発表(参考:2014年4月のAdWords機能強化を考える ~ admarketech.)でも感じましたが、2年前のエンハンストキャンペーンの時のような強制的な変更ではなく(運用者にとっては強制変更の Upgraded URLs が待ち構えていますが…)、オプションとして追加利用が可能なものがほとんどではあるものの、とにかく全方位的にアップデートの数が多く、力の入れどころがはっきりしていると感じます。順を追って紹介します。

バーティカル(業界別)広告機能の強化

今回の最初の発表では、業界別の広告機能の強化が立て続けにハイライトされました。AdWordsはプラットフォームであるがゆえに全ての業界の最大公約数的な機能が提供されていますが、業界別にかゆいところに手が届くような仕様を今後は拡げていくと考えられます。

今回は、以下の4つの業種別広告のローンチおよび強化が発表されています。

Automotive ads(自動車広告)

冒頭でプレゼンターの Dischler が伝えたように、自動車関連クエリは既にモバイルがPCを上回っている業種の1つで、モバイルを優先したユーザー体験を提供する自動車広告を、メーカー向けでもディーラー向けでも利用できるかたちで提供するとのこと。

具体的には、メーカー向けには、画面をスワイプすることで車の外観や内観を見ることができ、画像をタップするとその車の詳細情報を確認できる機能を提供するほか、ディーラー向けには、「Dealer」ボタンを押せば、ローカル情報と連動して現在地近くのディーラーが表示される仕様が追加されることです。

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Hotel ads(ホテル広告)

遡ればベータ版は2010年頃からヨーロッパの一部の地域で行われていましたが、2014年の秋頃に北米でも大規模なテストがされたことで有名になった、ホテルの宿泊情報と予約にフォーカスした広告です。

ベータテストでは、Hiltonグループは通常の検索連動型広告と比べて45%高いコンバージョン率を記録した他、ROIも12%高かったとのこと。今後は「Google フライト検索」も改善されるかもしれないですね。

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Product Card for Shopping ads(商品リスト広告のカード機能)

カード機能はソーシャルを中心に導入が進んでいますが、モバイルの商品リスト広告のユーザー体験を更に高める意味で、ショッピングキャンペーンにも導入されるようです。この機能の導入により、商品ごとに詳細情報や画像、ユーザー評価などが一覧できるようになるとのこと。既に成功を収めている商品リスト広告を更に一歩進める機能追加だと言えるでしょう。

product cards

Google Compare for Financial Industry(金融向け比較広告)

保険やカードローンなど、意思決定に比較の要素が強い金融系のサービスのために、比較可能なジャンルを広げていきつつ、内容をよりリッチにしていく方向のようです。今回発表されたジャンルは、「自動車保険」「クレジットカード」「住宅ローン」の3つになります。

自動車保険であれば、保険料だけが比較要素でなく、保険会社の信用度やカスタマーサポートの満足度なども重要な要素であったり、住宅ローンであれば金利や貸付条件といった基準ごとの比較がしたいユーザーも多いため、そういったジャンルごとに必要な比較情報を提供できるような機能を矢継ぎ早に追加していく予定のようです。

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商品リスト広告とモバイルが追い風になった業種別広告

業界に特化した機能というのは、通常はアップデートの優先順位が低いものです。プラットフォームである以上、ユーザーにとって便利、かつ全ての広告主が使えるような機能を優先すべき(結果的にそれが一番収益性が高くなる)ですし、個別仕様は開発コストがどうしても上がってしまうので、今回のアップデートは効率を重視するGoogleにしては少し奇異に映ります。

こういった本来優先順位が高くない機能がなぜハイライトされたのかと言えば、おそらく PLA(商品リスト広告)の成功が大きいのではと個人的には考えています。

業種別で見ると、Retail(小売/コマース)はアメリカの業種別広告費の圧倒的トップで、これは多くの国・地域に共通して言える傾向です。IABのレポートでも、2014年では全広告費の21%がRetailになっており、2位のFinalcial Services(金融)の13%を大きく引き離しています。

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ソース:IAB Internet Advertising Revenue Report 2014(PDF)

この最も大きな業種を取りに行ったのがAdWordsのショッピングキャンペーン(≒商品リスト広告)であり、ライバルに先んじて大きな成功を収めた業種別のフィーチャーです。この成功体験が、「それでは他の業種別対応も力を入れようではないか」という流れを後押ししたのではないかと勝手ながら想像しています。

実際に、業種別の広告費は、Retail(小売)の次は Financial Services(金融)、その次が Automotive(自動車)、次いで Telecom(通信)とLeisure Travel(旅行)となっており、今回の業種別アップデートとほぼ完全に符合します。「予算を取りに来たな」という感じがしますね。

また、これらの機能がほぼ全て「フィード情報の提供」と「モバイルを最優先」としたアップデートであることも重要です。

メーカーやマーチャントがフィード情報を提供することで審査の透明性と情報の正確性を担保した上で、比較サイトやアフィリエイトではない情報パスを作るという点は、マーチャントセンターと商品リスト広告の関係に酷似していますし、Inside AdWordsに以下のような記載があるように、

In fact, more Google searches take place on mobile devices than on computers in 10 countries including the US and Japan.
(事実、アメリカや日本を含む10カ国では、モバイル経由の検索がPCのそれを上回っている)

既に先進国を中心にモバイルがデスクトップを検索数で上回っている事実がある以上、モバイルを先に公開し、後からマルチスクリーン化していく開発スケジュールは、至極自然なことなのだと思います。アプリのマーケットプレイスである Google Play での検索連動型広告も開始が予定されていますし、時代が完全に切り替わった感じがしますね。

自動化と透明性の両立

運用型広告において自動化の波は不可避ですが、自動化というのは別に何でもかんでも放っておけば成果が出るというものではなく、大雑把に言えば「入力したパラメータに沿って自動的に動く」範囲が拡がり、その精度が高まっていくということです。精度が高まれば高まるほど、入力するパラメータの巧拙によって結果が著しく変わってしまうため、入力者にも自動化の精度以上の練度が要求されます。自動化によって作業員ではなく職人が必要になるのはこれが理由です。

一方で、パラメータの入力に職人芸が必要だとすると、経験値を得にくい一般の広告主が自動化でメリットを得るのが難しくなってしまいます。そこで、今回の発表では、自動化の強化に併せて透明性やシミュレーションの強化(≒分かりやすさ)にフォーカスが当てられています。

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new Dynamic Search Ads(新しい動的検索広告)

動的検索広告(DSA)はインターフェースが刷新され、キャンペーンの設計時に、ウェブサイトのコンテンツに応じた推奨カテゴリを選択できるようになるとのこと。カテゴリ選択時にはベンチマークとなる上限CPCが表示されるほか、マウスオーバーすればサンプルの検索クエリと、リンク先となるURL、表示される広告例がビジュアルで確認できるようになります。

DSAの不安要素の一つに、「どんな広告で出ているか分からない」といったものが多かったためか、その不安を払拭するような機能になっていますね。

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Auto-Resizing Display(ディスプレイ広告の自動サイズ変更)

728×90、300×250、160×600 の3つのサイズをアップロードしておけば、配信面のサイズに合わせてディスプレイ広告がリサイズされ、グーグルの持つディスプレイネットワーク(GDN)の約95%をカバーできるようになるとのこと。

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Enhanced automated bidding(自動入札の強化)

自動入札には、以下の2つの機能が実装されるとのこと。

目標CPAシミュレーション
目標CPAの変化によってクリックやコンバージョン数の増減がシミュレーションできる機能で、検索とディスプレイの両方で適用される予定です。

目標CPAでの自動入札は、量と単価がトレードオフの関係にありますが、それをシミュレーターで可視化できる機能だと言えるでしょう。目標CPAでの入札は登場してからかなりの年月が経ちますが、失敗する人が後を絶たないので提供に踏み切ったものと思われます。

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入札戦略ダッシュボードの改善
共有ライブラリにある入札戦略ダッシュボードが刷新されるとのこと。コンバージョン目標に対しての入札戦略ごとのパフォーマンスを評価しやすくなります。2015年の後半には提供可能になるようです。

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分析機能の強化

トラッキングや分析の機能の強化は、運用のパフォーマンスに直結します。Adometryの買収によってアトリビューション機能が強化されたように、今後もクロスデバイス/マルチスクリーンの分析に投資を惜しまないことは明白ですが、それらの分析が運用にシームレスに適用されていくことが今後のトレンドであることが示唆されています。

Cross device conversions expanded(クロスデバイスの強化)

クロスデバイスの計測はモバイル←→PCに限らず、アプリや電話、実店舗などにも及ぶため、この計測とアカウント運用の関係をよりシームレスにしていく狙いがあると思われます。例えば、推定合計コンバージョンは自動入札の項目として2015年の後半には設定できるようになるとのこと。

Data-driven Attribution model(データ・ドリブンアトリビューションモデル)

AdWordsのサーチファンネルが先日アトリビューション機能としてリネームされましたが、それに合わせるかのように、これまでのラストクリックや時間減衰など5つのモデルに加えて、「データ・ドリブン モデル」を追加するとのこと。

これは、アカウントのコンバージョンデータを利用して、コンバージョンパスにおける各キーワードの貢献度を自動的に算出するモデルで、コンバージョン量が多いアカウントでは重宝しそうなモデルです。実際にはビジネスモデルに合わせてモデル間を比較することになると思うので、その時々の目標に合わせて比較対象を変えていくことで、適切な分析が可能になると思います。

今回のアップデートの面白い点は、アトリビューションモデルに合わせてレポートおよび自動入札に適用できる点だと思います。特にコンバージョンタイプの編集画面から最適化のアトリビューションモデルを選ぶことで、設定したアトリビューションモデルで計算された貢献度に合わせて自動入札が働く機能は、画期的です。

これにより、アトリビューション分析でありがちな「So What? (それで?)」を防ぐことにも繋がりますし、(Googleのシェアが低い国でない限り)サードパーティの入札ツールの存在意義を更に揺るがすような機能になるのではと思います。

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Drafts & Experiments / Report Editor(ドラフトモードと、レポートエディター)

最後に、昨年発表されたテスト機能/ドラフトモードの再プッシュや、約2週間前の2015年4月に発表されたレポートエディターについて紹介されました。

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スライドではさらっとしか紹介されませんでしたが、レポートエディターはかなり強力なツールです。これまではデータをCSVなどでダウンロードしてから整形していくことが多かったと思いますが、レポートエディターは管理画面上で直感的にグラフィカルなレポートが作成できます。

2015年5月6日の時点では全てのアカウントに適用になっていませんが、順番にロールアウトされていくと思いますので、ぜひ使ってみてください。既にヘルプも日本語化されています。

参考:レポート エディタでデータを活用する – AdWords ヘルプ

まとめ

今回の発表で感じたことは、「とにかく盛りだくさんだな」ということでした。40分強のプレゼンをまとめると、以下がアナウンスされた機能の一覧になります。(一部既出のプロダクトもあり)

発表機能の一覧

業種別広告の強化:Industry Ads enhancements(Automotive Ads, Hotel Ads)
商品リスト広告のカード機能:Products Cards for Shopping Ads
金融ジャンルの比較広告:Google Compare / Finance
動的検索広告の強化:new Dynamic Search Ads
ディスプレイ広告の自動サイズ調整:Auto-Resizing Display
目標CPAシミュレーター:CPA bid simulations
入札戦略ダッシュボード:Enhanced bid strategy dashboard
クロスデバイスの強化および入札統合:Cross device conversions expanded and used in automated bidding
データ・ドリブンアトリビューション:Data-driven Attribution model
ドラフトモードとレポートエディター:AdWords Drafts & Experiments and Report Editor

出来たばかりの小さなシステムと違い、14年の歴史がある世界一巨大な広告プラットフォームで、これだけの変更を毎年行なっていく(小さなアップデートを含めると今回の発表の数倍はいつもあります)のはとてつもないことです。

今回のアップデートのキーワードは「モバイル(に合わせた業種強化)」「自動化と透明性」「計測の強化」の3つでしたが、Googleにとっての生命線である広告において、通信環境の変化、デバイスの変化、競合の変化、ユーザー行動の変化といった、急速な変化が同時多発的に起きている状況において、危機感を持って最大限の速度でキャッチアップしていこうとする姿勢が見える発表だったと思います。

2000年代後半までと違い、外部環境の急速な変化によってここ数年はプロダクトと現実の差が急速に広がりました。その差を埋めながら、更に他より半歩先を目指す姿勢が、発表された機能(=どこにリソースを張っているか)から感じます。

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