広告プラットフォームの2024年業界予想:②日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく。オフサイト配信が増える。標準化が課題に

広告プラットフォームの2024年業界予想2

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リテールメディア市場は米国では急成長

リテールメディアは米国が先行していますが、IABは、のリテール・メディアは、2022年に急成長した米国の広告チャネルの1つであり(前年比22%増の380億ドル)、
今後5年間で2倍以上の1,070億ドル(約14兆円)になると予想されると市場見通しを示しています。

※参考リンク:

リテールメディアが300億ドル規模のチャネルになるまでには、わずか5年しかかかりませんでした。これに対し、ソーシャルは11年、検索は14年かかったと調査会社Insider Intelligenceは調査の中で述べています。

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また、今後数年間、検索広告費の伸びの大半はリテールメディアが占めるとInsider Intelligenceは予測しています。

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日本においてもリテールメディア広告市場は2023年に3,625億円、2027年には約2.6倍の9,332億円と予測されています(出典:株式会社CARTA HOLDINGS)。

※参考リンク:

 

日本のリテールメディアは1合目

日本のリテールメディアは昨年が元年と2023年予想で述べましたが、ファミリーマート/ドン・キホーテ連合、イオングループのリテールメディア事業への進出など大手コンビニやGMSが参入したことと、周辺サービス提供者が大幅に増えたことを考えると、元年と言えるレベルまで下地ができてきたと言えるかもしれません。日経クロストレンドがリテールメディアカオスマップを公開したものトレンド化していることの表れの一つかと思います。

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日米のリテールメディアの取り組み度合いを比較してみると、米国は圧倒的に進んでおり、登山になぞらえると、日本が1合目であることに対し、米国は4合目あたりにいると考えています。

日米のリテールメディアの取り組みレベル

日米のリテールメディアの取り組みレベル

JBPは、もともと小売業の用語で、顧客・売場起点で、ブランドと小売業が直面している課題をお互いに理解した上で、継続的かつ、体系的に解決していく協働プロセスのことをいいます。近年では、広告業界でも、プラットフォームとブランド大手の間でJBPを実施することが活発になってきました。

取り組みの早かった米国の小売業者とブランドは、JBPを実施しており、具体的には、データ分析をベースに、戦略やゴール、それぞれの役割分担や拠出するリソースの「握り」を行っていると説明していました。

  1. カテゴリベースの売上達成目標の設定
  2. 新しい広告枠、広告フォーマット、ターゲティング等の共同考案とトライアル
  3. 季節キャンペーンの企画 など

特に2の新しい広告枠、広告フォーマット、ターゲティングなど、必要とされる新機能をブランド、小売事業者間で一緒に考えるという点が非常に興味深いと思いました。商品開発を共同で行い、密接に連携してお互いのビジネス向上を目指しているのです。

JBPを中心に、ブランドの課題に向き合う

JBPを中心に、ブランドの課題に向き合う

※参考リンク:

 

日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく

で、今年の日本のリテールメディアはというと、上の図にあるように、2合目に登ろうとしているところかと思います。

私が昨年末よりヒアリングをしている限りでは、ブランドの経営層が、米国でリテールメディアが進んでいる状況を見て、日本の小売業者の経営層と握る(ある意味JBPに近い取り組みかもしれませんね)ことで、予算つけてトライアルしてみる年になるようです。

これは予想①のサードパーティCookieの代替として検討をするという側面もあるでしょう。日本のブランド/メーカーでは、特定流通での売上向上を目的とした広域営業部門が持つ販促予算と、長期的な視点も含めた全体の売上最大化を目的とした広告・宣伝部門が持つ広告宣伝予算とが分かれており、リテールメディアにおいてはこれらを予算的にも統合させ、緊密な連携のもとキャンペーンを推進する必要があるのですが、部門の縦割り状況を解消するといった組織的な課題は一足飛びには実現しづらいので、少し時間がかかる可能性を感じていましたが、前述の米国の状況や、リテールメディアをDXの一環として考え、トップダウンでゴーサインがかかるというのは、非常によいサインだと思う次第です(実際、リテールメディアは小売業者にとっての全社的なDXプロジェクトだと思うので、トップの意思決定は重要)。

 

オフサイト配信が増える

これも①のサードパーティCookieに関連していますが、代替ソリューションの一環としてリテールメディアを考える背景は、小売業者が保有する大量・高品質なファーストパーティデータにあります。小売業者のEC面などが広告配信面として見た時には発展途上な段階にあるため、オンサイトの配信ではなく、データを活用し、Google広告、Facebook広告への外部への配信、いわゆるオフサイト配信の活用が増えることが考えられます。

このオフサイト配信、コンセプトとしてはよいのですが、いくつか注意点はあります:

  • クローズドループ測定はできない:リテールメディアの一番の利点は享受できない
  • マッチ率はそれほど高くない:Google広告のカスタマーマッチ、Facebook広告のカスタムのオーディエンスなどのマッチ度は数十パーセントの前半と考えると、母数が大きくないと効果が期待しづらいので期待値のコントロールは必要
  • リテールメディア側としては儲かるビジネスではない:当然ながら広告費は外部プラットフォームに流出するので、運用費だけとなると積極的に推進したいメニューではないはずですし、そもそも小売業の低い利益率の改善につながらない

 

標準化が課題に

昨年末に私が参加した米国Retail Media Summit(Adweeek主催)でも、ほとんどのパネリストや参加者が「標準化」を一番の課題として挙げていました。実際、サービス提供者によってデジタル広告や店舗内ディスプレイなども独自仕様が多く各社各様です。ブランドとしては、リテールメディアに大きな可能性を感じており、予算を投じ、付き合っていくリテールメディアが増えれば増えるほど、各社の仕様の差分をどう埋めるのかで悩むわけです。

そこで、そろそろ標準化を推進する団体を作った方がよいのではないかという声が上がりはじめています。可能性として高いと思うのはやはりIABかと思います。すでにRetail Media Network Committeeは参加社も多くアクティブなので、この配下でワーキンググループができるのが順当かと思います。

※参考リンク:

別の動きで、最近IABのIABが店舗内リテールメディアのホワイトペーパーを発表しましたが、その中で、「DOOHおよび店舗内リテールメディア」ワーキンググループの発足と参加をコミュニティに呼びかけています(同グループの初会合は2月7日に開催される予定)。

オンサイト、オフサイト、とそれぞれ連携はしつつも、性質の異なる取り組みなので、ワーキンググループも細分化される可能性もありますし、実際の標準化は各社の思惑もあるのでじっくり時間をかけて少しづつ標準が策定されていくのではないかと予想しています。

※参考リンク:

『広告プラットフォームの2024年業界予想』(全10)の他の記事へのリンク(タイトルをクリックしてください)
①ChromeのサードパーティCookieサポート廃止による混乱が発生する
②日本のリテールメディアにブランドによるPoCや実験的予算がつく。オフサイト配信が増える。標準化が課題に(本記事)
③AIはプラットフォームの機能やサービスにさらに侵食する
④TikTokが興味コマースを大きくリードし、展開を大幅に加速へ(公開予定)
⑤プラットフォーム間パートナーシップが増える(公開予定)
⑥MFA、詐欺広告、アドフラウド等と向き合う年に(公開予定)
⑦メディア・パブリッシャーのビジネス苦境。生き残りをかけた年に(公開予定)
⑧Netflixが独自広告プラットフォーム開発へ(公開予定)
⑨Appleが広告事業拡大(公開予定)
⑩レイオフは続く(公開予定)


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