Amazon広告への日本とグローバルでの向き合い方の違い、運用に求められること:iProspectに聞く

Amazon広告への日本とグローバルでの向き合い方の違い、運用に求められること:iProspectに聞く

運用型広告レポート作成支援システム glu グルー2019年12月、iProspect JapanはAmazon広告管理ツール「Commerce Intelligence & Optimization(以下、CIO)」をリリースしました。
 
日本ではAmazon広告管理ツールが登場して間もないため、ツールの特徴のほか、グローバルに事業を展開されているiProspect、その日本法人であるiProspect Japanから見た日本とグローバルにおけるAmazon広告に対する向き合い方の違いや運用に求められることについて、iProspect Japan 橋本さんに伺いました。

 

参考リンク:


 

話し手:
アイプロスペクト・ジャパン株式会社
アカウントマネジメント2部 アカウントリード
橋本 俊紀さん

聞き手:
アタラ合同会社
チーフコンサルタント 浅田梨沙

 

元Amazonや元Microsoftのメンバーが開発

浅田:まず橋本さんの自己紹介とどのような業務をされているのかをお話しいただけますか。

 

橋本:僕の本来の業務は広告代理店のアカウントリードです。2018年頃からAmazon広告に携わるようになり、CIOが案件化した際に「EC経験のある橋本がやってみなよ」という上司からの勧めもありCIOに関わるようになり、チームリーダーを務めています。基本的には海外のPacvue本部と、CIOを導入していただいている日本の企業さまの橋渡しというか、例えば「こんなアップデートや機能が欲しい」というところをつないでいます。

 

浅田:ありがとうございます。CIOというツールは関連企業が多いですよね。開発はiProspectではなくてPacvueが担っているのですか。

 

橋本:ご認識のとおりです。

 

浅田:では、iProspectはCIOの日本市場へのローカライズを担当している理解でよろしいですか。

 

橋本:はい。日本に関してはご認識の通りですが、実は海外でも支援、データ共有のようなことを行っています。業務提携までしていないものの、営業を支援し「こういった機能があればもっとユーザーが喜ぶ」ということを世界各国でiProspectが推進しています。日本だけiProspectが関わっているというより、グローバルでPacvueを支援しているイメージです。
 

 

浅田:iProspectさんは窓口として橋渡しをされているということですね。では次に、CIOのツールの特徴についてご説明いただけますか。

 

橋本:まずCIOは略称で、正式名称は「Commerce Intelligence & Optimization」と言います。読んで字のごとく、Amazonの広告運用最適化ツールです。

 

CIOの開発元であるPacvueのスタッフが優秀で、元Amazonや元Microsoftの人が開発しているため、システム改修やアップデートはかなり精度の高いものになっています。

 

現状ではアメリカを中心にPacvueでの案件数が多くなってきています。iProspectのグローバル部が力を入れていることもあるのですが、アメリカのクライアントがAmazonに対するツールをかなり積極的に探しているという背景があります。そこでCIOの需要も高まっていて、現状ではグローバルで利用されています。

 

iProspectという会社を日本で聞いたことがある方は少ないかもしれませんが、海外では世界の広告取引売り上げのトップ3に入るような大きな代理店です。つまり大量のデータやアップデート情報をPacvueと連携できる企業ですので、そういったところも踏まえてCIOはこれからもどんどん成長していくと考えています。

 
 

競合ASINをモニタリングし、Amazon全体の販売戦略をサポート

 
浅田:CIOでできること、機能面も教えてください。

 

橋本:一つ目はAmazon広告の最適化です。基本的には広告代理店向けの、Amazon広告の最適化と工数削減が主な機能です。例えばROAS 500%の場合は入札を10円上げる、などのルール設定に沿った自動調整が可能です。

 

二つ目は「Dayparting」という時間帯別の入札調整機能、三つ目は競合調査です。競合調査はインプレッションシェアやASIN別のスコアを確認でき、商品にレビューが投稿されているか、商品詳細ページの設定文字数が適切かといった比較が競合・自社含め見られるようになります。ベストセラーランクや販売の価格変動も設定すれば見られます。

 

こういった競合調査の内容を先ほど申し上げたルール設定に組み込むこともできるので、ベストセラーランクで競合ASINが掲載順位トップ10から落ちた場合に入札を上げるといったルールも設定することができます。

 

四つ目、「Eventカレンダー」では変更履歴を一覧できます。入札を調整した、ASINを追加したといった変更履歴がグラフ上のフラグやカレンダーから確認できます。ここで「ROASが上がったのはこの変更の影響だ」といった分析がしやすいと思います。変更履歴は最近広告コンソール上でも見られるようになりましたが、分析の観点では「Eventカレンダー」のほうが分かりやすいと思います。

 

最後に五つ目は、業界初となる「Microsoft Excelインテグレーション技術」で、管理画面を開かずにMicrosoft Excelのみで運用調整が可能です。元Microsoftのメンバーが開発に携わっている利点がここに活かされており、レポートのダウンロードだけでなく広告キャンペーンの一括変更などをMicrosoft Excelのオンライン版・オフライン版双方で直接更新することができます。

 

この五つがCIOのメインの機能です。

 

 

これ以外に、最近企業さまに好んで使っていただいているのが予算管理です。月の予算を設定し超過しないようにするほか、キャンペーンごとの推奨予算をツール上で自動算出して、提案することもできます。ROIの観点を踏まえ「良いキャンペーンは予算を追加したほうがいいですよ」といった提案をします。この予算提案機能は特に評価していただいています。

 

浅田:ありがとうございます。私が特に気になったのが競合調査の部分ですね。インプレッションシェアやASIN別のスコアは、Amazonの広告コンソール上ではまったく見られないデータだと思うのですが、どういった仕組みで実現されているのでしょうか。

 

橋本:情報的にはAPIでも該当データがないので、全て画面のスクレイピングでデータを集計しています。スマホアプリにおける順位は見られないのですが、PCのトップページのインプレッションシェア率は提供しています。

 

浅田:インプレッションシェアの定義は、トップページでの表示本数に対して該当のASINがどれくらいを占めているのかということですか。

 

橋本:はい、ご認識のとおりです。

 

浅田:ASIN別のスコアとは、どういった情報から計算されているのですか。

 

橋本:CIOの基準で、ある一定の数値に対して、商品詳細ページの充実度のようなものを出せるようになっています。平均的なレビューのレーティングや文字数、画像の数というところがメインとなっています。

 

充実度を色で表現しており、赤は足りていない、黄色は中ぐらい、緑が充実していて良い状態という評価をしているので、これを全部緑にすることがSEOやユーザーの関心度アップにつながるのでは、と考えています。

 

浅田:他社に比べて、あまり充実していない場合に赤色表示になるということですか。

 

橋本:他社というより、CIO全体の平均を基準にしています。平均に対してさらに係数を掛けているので、完全に平均ではないのですが。

 

浅田:すると画像の数が足りていないとか文字数が少ないというのは、Amazonの販売戦略上あまり良くないということですよね。改善したほうが広告だけでない、オーガニックも含めた商品販売により良い成果が望めるということでしょうか。

 

橋本:そうですね。なので、ここに関しては広告にインパクトがある機能というよりは、プラスアルファの部分、総合的な戦略提案によって代理店の価値アップにつなげていただける部分です。

 

自社ASINで改善の参考にしていただくのはもちろん、競合ASINを登録することによって「このASINはあまり充実度が高くないのでブランドスイッチを狙えるな」などと考えられます。自社ASINの登録と競合ASINの登録で、スコアの使い方が変わってくると思います。

 

浅田:これは特に広告主に喜ばれそうですが、代理店の方が使われることも多いのですか。

 

橋本:むしろ代理店の方が見ているケースが多いですね。今のところ、広告主が直接使われていることはあまりなく、代理店側もアカウントを開放してないケースがとても多いです。ただ、グローバルではほぼ開放しているので、やはり日本は遅れているというか、広告業務について広告主にとって不透明な現状があると思っています。

 

浅田:日本でも代理店・広告主双方が同じデータを見て、同じ目線でディスカッションできると良いですよね。

 

橋本:そうですね。やはり双方に使っていただきたいです。ただ、今のCIOはいささか代理店向けになっている部分もあります。運用工数削減が主目的になっていたり、分析を充実したりというところもありますが、今の日本ではなかなか広告主側にAmazon広告専門の担当者がいません。リテールメインの仕事の片手間でAmazon広告の運用も見ていることが多いので、もっと広告主向けのシステムが必要だと思っています。

 

その中で重要になってくるのが、ベンダーセントラル、ARAP(Amazon Retail Analytics Premium。販売分析レポートプレミアム)との連携です。現状ではARAP連携部分はあまり充実していないのですが、ARAPと連携することで、アドセールスとオーガニックセールス、それに対してのトータルセールス、利益率といったデータをCIOでより見やすくグラフ化、ダッシュボード表示できます。

 

さらにこれらのデータを自動調整ルールに組み込むことによって「利益率が高いASINはもう少し広告予算を多くしよう」といった広告との連動を、もっと強化していきたいと考えています。

 

現在、セラーセントラルのARAPとも連携を進めています。セラーでもCIOは使っていただけるのですが、セラーセントラルとの連動はまだできないので、改修中です。

 

浅田:もちろんARAP連携できると良いのですが、広告以外のデータも見えてしまうようになるので、なかなかハードルが高いのではと思っています。説明の仕方というか、メリット、デメリットはどのように説明されていますか。

 

橋本:やはり分析のしやすさについて、実際に画面を見ていただくとCIOのほうが見やすいことをお伝えできるかと思います。これが一つ目のメリットです。あとは広告連動ですね。代理店側も広告評価だけではなく利益率も踏まえて一緒に広告戦略を考えていけます、というところが二つ目です。ただ、この二つだけだと弱くて、あまり連携していただける状況ではないですね。

 

実は今、Amazon側にも打診をしているところです。現状はベンダーセントラルのARAPを連携すると、CIOでひも付いていないASINなども全部入ってきてしまいます。CIOを導入している日用消耗品メーカーでは、例えばCIOで連携したいのはシャンプーなのに、ARAPを連携したことによって芳香剤のデータまで見られてしまうといったことが起きます。それはARAPをアカウントで切り離せないAmazon上の仕様なので、直せないかとAmazonに打診をしています。

 

浅田:ここはAmazonにアップデートしていただきたい部分ですね。

 
 

Amazonでは事例のないテレビ連動配信を実現する

 
浅田:Amazon広告の運用最適化ツールは他社も提供されていますが、CIOならでは、他社に比べた強みはほかにどんなことがありますか。

 

 

橋本:今お話しした時間帯別の入札調整や予算管理などは、他社のツールでもできるのです。やはり競合優位性として、テレビ連動は重要になっていくと思っています。電通グループという強みを生かして、テレビCMやテレビ放送のデータを広告の運用に取り入れられないかと始めたプロジェクトです。

 

例えば特定のCMが放送されたら、そこから15分から20分ほど入札強化をするといった設定が可能です。ほかにも例えば「シャンプー」をキーワードと設定した場合、特定の番組でシャンプーというキーワードを誰かが発言したタイミングで入札調整することもできます。これは字幕のデータからキーワードを抽出して実現しています。

 

こういったテレビ連動はまだAmazonでは進んでいないものの、Googleやヤフーではもっと進んでいて、放送後15分から20分ほどはユーザーの関心が高まり購買意欲も高まるというデータも出ているので、時間指定をしっかりして精度を高く広告運用することができます。いずれにしてもAmazonとしては世界初の試みなので、進化させられたら競合優位性も図れますし、企業さまや代理店さまの関心度も高まるのではないかと考えています。

 

浅田:確かに、STADIAのデータと連携できるだろうなと絵が浮かびました。電通グループならでは、強みの部分ですね。Amazonに注力してさらに精度高く運用していきたいような広告主はテレビにも出稿されているケースも多いので、連動配信は魅力的に映りそうです。

 
 

日本と海外の違いは、スピード感と業界全体を見ているか

 
浅田:先ほど、日本はアカウントが代理店に閉じている、グローバルだと開放してエージェンシーもクライアントも同じアカウントを見ている違いがあるというお話がありました。iProspectさんから見て、日本とグローバルでコミュニケーションの濃度や成果に違いはありますか。

 

橋本:まず一つ、海外の方と話していて全く違うのがスピード感です。例えば最近でしたら「Amazonでカスタムイメージという機能がリリースされました」と広告代理店が広告主に紹介・提案し「さてどうします?」という順番で話が進みますが、海外では先に法人にアップデートの情報が入ってくるので、代理店が情報をキャッチアップするよりも早く、リリースされて即利用開始されていたりします。

 

広告の成果では、グローバルでは基本的には利益率も代理店に開放しているケースが多いので、広告としての評価だけではなく、全体の企業的な運営に携われます。

 

「広告は良いけれど正直オーガニックで売れてないよね」という話になる日本に対して、海外は全体を踏まえて広告効果がいいという話になるので、広告評価を明確にしてくれるイメージがあります。

 

代理店にオーガニックの情報が開示されないと運用的には難しいことが多く、CTRだけを見がちというか、広告だけの評価を見がちというところは、少しもどかしいところではあります。

 

浅田:ツール自体も日本市場向けにローカライズした点があるのでしょうか。

 

橋本:翻訳以外はほとんど一緒です。ただ、先ほどお伝えしたオーガニック順位と連動したルール化、広告調整といった部分は、日本だけの機能です。海外ではそういった細かくて精度の高い運用は求められておらず、基本的にはROAS向け、ROASが良ければそれでいいとなりがちです。もちろん細かく運用しているところもあり、逆輸入的に導入が進んでいるようです。

 

あと海外で非常に重視しているのが、自社の実績だけではなくて業界全体を見ている点です。そこは日本企業と少し違うところだと思っています。日本企業を悪く言うわけではないのですが、例えばシャンプー一つ切り出したとしても、日本では昨対や先月対比で良かったからいいという話はありがちですよね。しかし昨対120%伸びていても、業界全体が200%伸びていたら自社は遅れているのです。業界全体に対して自社は伸びているのか遅れているのか。そこを海外では重視しています。

 

現状、日本ではまだCIOで業界全体の数値を見ることができないので、分析するのは非常に難しいデータではあるのですが、海外ではCIO以外のツールやデータを取り入れて評価しているので、日本もそうなってほしいですね。

 

浅田:面白いです。確かに日本だと基本的に広告運用上は自社に閉じていて、他社や業界全体のデータは調査レベルでしか使わないことが多い気がします。おっしゃるとおり昨対が良くても業界全体の伸びに対して負けているのであれば全然良くない、ということになりますね。

 

橋本:そうです。例えば、弊社では「オーディット」というツールがあります。業界全体として、日用品の2019年は売り上げがこれだけあり今年はこのぐらい、伸び率はこのぐらいといったデータが見られるものです。こういったツールも利用してもよいと思います。

 

日本市場だけだとまだ案件が少ないですが、海外ではシェア率が高いので、CIO外のツールのデータも連動できるようになっていく予定です。

 

浅田:最後に、日本のユーザーに向けたメッセージがあればお願いします。

 

橋本:現在いろいろな代理店特有のツールが自社で開発されています。世に出回っているさまざまなツールがある中で、基本的に運用面でできることにはあまり差がないのではと思っています。

 

しかしその中で、弊社としてはテレビ連動やアップデート施策は随時行っていて、現状毎月アップデートが行われています。今が完成ではなく、発展途上のツールだということをまず前提に踏まえていただいて、導入のタイミングを見計らってご検討いただきたいと思います。

 

浅田:本日は、貴重なお話をありがとうございました。
 


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