Adjust Global App Trends 2019に見るモバイルアプリの動向

Adjust Global App Trends 2019に見るモバイルアプリの動向

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Adjust主催のプレス発表会が開催

2019年5月23日、モバイルアプリ計測プラットフォームやアドフラウド防止ツールを提供するAdjust株式会社が、同社の企業活動や今後の計画、モバイルアプリ市場の動向とその成長をまとめた『Adjust Global App Trends 2019』のハイライトを紹介するプレス発表会が開催されました。

 

同イベントには同社CEO兼共同創業者のクリスチャン・ヘンシェル氏とCTO兼共同創業者であるポール・ H ・ミュラー氏に加え、 Unbotify(2019年1月にAdjustが買収)CEO兼共同創業者のヤロン・オリカー氏とAcquired.io(2018年12月にAdjustが買収)CEO兼共同創業者のアンドレイ・カザコフ氏が登壇しました。

 

 

同記事ではイベントで発表された内容に加えて、『Adjust Global App Trends 2019』の内容を踏まえ、現在のアプリ市場の潮流について紹介したいと思います。

 

参考:『Adjust Global App Trends』の全文は以下よりダウンロードできます

 

モバイルアプリ市場の盛り上がりとLTVの短さ

イベント内でクリスチャン・ヘンシェル氏とポール・ H・ミュラー氏が語った内容によると、2018年末時点で、世界のモバイル端末の契約数は、世界の総人口である77億人をはるかに凌ぐ79億件に達したそうです。また、モバイルに関するテクノロジーやサービスの売上は過去最高の3.9兆ドル、アプリのインストール数は1,940億件、収益は1,010億ドル(App Annie調べ)と、現在世界のアプリ市場が活況に沸いていることが伺い知れます。

 

アプリのインストールがオーガニック検索由来なのか、広告経由なのかは、広告運用者にとって気になる点です。『Adjust Global App Trends 2019』によると、2018年12月時点での有料広告によるインストールは26%で、昨年比で4%伸びています。


eMarketerのデータを基に、モバイルに対する世界の総広告費(1.880億ドル)ほぼ全額を反映させたグラフ(出典:Adjust Global App Trends 2019/クリックで拡大)

 

現時点ではオーガニック検索からダウンロードされる場合が大半ですが、ショッピング・天気のカテゴリーについては有料広告からのインストールがオーガニック検索を上回っており、2019年にはさらに、有料広告によるインストールが増加すると予測されているそうです。


カテゴリー別にみた有料広告VSオーガニックインストールの割合(出典:Adjust Global App Trends 2019/クリックで拡大)

 

上のグラフからも読み取れるように、カテゴリー別ではショッピングの有料広告の割合がもっとも多いことがわかります。これは広告主のショッピングアプリへの投資が進んでいることの証拠だと考えられます。事実、2018年の全世界でのショッピングアプリのダウンロード数は57億件に達し、前年比9.3%の伸びを示すなど、モバイルコマースアプリは隆盛を極めている状況といえるでしょう。

 

2019年5月実施の「Google Marketing Live 2019」ではDeep linking in Google Ads(検索、ディスプレイ、ショッピング広告から直接モバイルアプリの関連ページにリンクさせられる機能)などが発表されましたが、ウェブ・アプリを問わず広告主の売上を最大化するという観点では、Googleがこうした機能をリリースしたことも頷けるかと思います。

 

※参考:Google Marketing Live 2019 キーノートスピーチで発表された機能まとめ

多くのアプリが勃興し、市場が成長する一方で、一つ一つのアプリの生涯価値は非常に短いといえます。同氏によると、アプリインストール後1日目までに全ユーザーの平均69%、週平均で79%が失われるとのことです。継続率でみてみると、インストールから30日目の継続率は14%にまで落ち込み、30日経っても継続率20%以上を保持しているのは、ニュースとコミュニケーションアプリの2カテゴリーのみでした。

 

日本市場におけるアプリトレンド

同イベントでは、日本におけるアプリのトレンドについても紹介されました。Adjustが定めた成長指標(※1)をカテゴリー別(※2)に分類したところ、日本においては音楽やカジノゲーム、配車サービス等の日常的に利用頻度が高いカテゴリーの成長率が高く、逆に利用頻度の低い旅行予約の成長率がもっとも低いという結果になりました。


日本におけるモバイルアプリのカテゴリー別成長指標(出典:プレスイベント資料/クリックで拡大)

 

また、日本の1ユーザーあたりの1日の平均セッション数ではソーシャル・ネットワーク、ミッドコアゲーム、マッチングアプリが群を抜いており、カテゴリー別の使用状況では、ゲームアプリ(ミッドコア・カジュアル・スポーツ)が一日のアプリ内使用時間の半分近くを占めていることが明らかになったそうです。

 

特に興味深いのがゲーミングアプリにおける日本の特徴で、ポール・ H・ミュラー氏によると、日本ではゲームアプリユーザーの約半数が女性であり、さらに他国ではカジュアルゲーム(短時間でカジュアルに遊べるゲーム)が比較的好まれる中、日本においてはミッドコアゲーム(RPGやシューティングなど長時間の注力を要するゲーム)に人気が集まる傾向にあるそうです。


日本の1ユーザーあたりの1日の平均セッション数(出典:プレスイベント資料/クリックで拡大)

 

時間帯ごとのアプリの使用状況を見ても、どの時間帯においてもゲーム関連アプリは一定数使用されていることがわかります。


日本における時間帯毎のアプリ使用状況(出典:プレスイベント資料/クリックで拡大)

 

興味深いのが健康カテゴリーで、出勤・通学前の時間帯である早朝と、下校・退社後の時間帯に(しかも夜が更けるにつれ)使用率が高まっている点が特徴的です。

※1:1ヶ月あたりのアプリインストール数をAdjustのデータセットカテゴリーと国別に算出したMAUで割った数値
※2:Adjustが独自に「ビジネス/Eコマース/エンターテイメント/フード&ドリンク/ゲーム/健康/出版物/ソーシャル/旅行/ユーティリティー」の10カテゴリーに分類。さらに23のサブカテゴリーに細分化されている

 

市場活況に比してアドフラウドも台頭

次に、不正広告に関する調査結果についても発表されました。アプリ市場が活気づくのに比例して、アドフラウド(広告詐欺や不正広告)の手法も高度化してきており、2018年中にAdjustが検知した不正インストールは約3億件にのぼったそうです。


Adjustが2018年に検知・排除した不正のタイプ別分布(出典:プレスイベント資料/クリックで拡大)

 

なお上図ではクリックインジェクションの割合が約半数に上っていますが、Adjustによれば、現在流行しているのは、図では17%にとどまっているSDKスプーフィング(実際のユーザーになりすましてエンゲージメントを横取りする)なのだそうです。

 

また、カテゴリー別に見るとEコマース・モバイルバンキング・マッチングがもっともアドフラウドの被害を受けていました。理由としては、調査対象となったサンプルサイズが小さかったからだということもありますが、コンバージョンあたりのコストの高いアプリが標的となっていると予測されます。

 

ポール・ H・ミュラー氏は、現在明るみに出ているボットによる不正は、ほんの氷山の一角でしかないといいます。これは単に広告予算を盗むという問題だけでなく、アプリ内不正ボット(Bot in App)としてインストール後にビジネスモデルを攻撃し、ユーザーエクスペリエンスやブランドの評判に影響を及ぼします。こうしたアプリ内不正ボットはアプリごとに作成されており、非常に高度化されてきているそうです。

 

カテゴリー別に見ると、以下のような例が見られます。

 

  • ゲーム:侵入したボットがユーザープロフィールを盗み、自動的にプレイし、アプリ内課金などエコシステムに損害を与える

 

  • ファイナンス:ユーザーアカウントをハックして盗まれた認証情報リストを利用/クレジットカードをスキミングし、商品を購入など

 

  • Eコマース:アカウントにハッキングして商品を購入、限定商品を奪い取り、高い価格で転売

 

 

こうした問題に対処するべく、Adjustは2019年1月にイスラエルのサービスセキュリティ企業「Unbotify」を買収。4月よりソリューションの販売が開始されています。同社のソリューションは、人間のデバイスとの接触から得られたセンサー情報を使用し、実在するユーザーの行動パターンをもとに機械学習モデルを構築するものです。人間のインタラクションを機械が模倣することの難易度の高さを利用し、高度な検知を可能にしています。

 

人間とボットの行動パターンの違い(出典:プレスイベント資料)

 

Adjustによればアドフラウドに対して先進的な国や地域といったものはなく、各企業のマーケターがどれだけ危機感を感じているか、情報収集できているか否かにかかっているそうです。

 

Adjustが発表したデータからもモバイルアプリ市場が今後しばらく伸び続けることは明白です。かつ、前述したGoogle 広告のほかにも、Criteoもアプリキャンペーンにおいてすでに提供中のリエンゲージメント・ダイナミックリターゲティングに加え、インストール広告への対応を進めているなど、プラットフォーム側もアプリに注力している様が見て取れます。

 

広告運用者やマーケターは、引き続きモバイルアプリの動向やアドフラウドへのキャッチアップを欠かさないようにし、機を逃さないようにしていきたいですね。

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