広告代理店のBIツール活用に寄り添う:Unyoo.jp Meetup Vol.14イベントレポート

エージェンシーのBI/ダッシュボードに寄り添う:Unyoo.jp Meetup Vol.14イベントレポート

アタラ BIツール導入コンサルティングサービス

なぜ今BIツールなのか

日進月歩の勢いで進化し続けるデジタルマーケティング業界において、マーケッターが担う業務は複雑多様化する一方です。また、確認するべきデータも指標も増えているうえ、企業ごとに実施内容や数値も異なるため、「売上」や「コンバージョン数」などの結果指標しか見られていない場合も多いのではないでしょうか。

広告代理店がこれまで多用してきたエクセルレポートでは、前月分が翌月頭に確定したのちに広告主に報告し、そこから意思決定が行われるため、アクションの確定に時間がかかってしまいます。意思決定のスピード感が売上の差に直結する現在のマーケティングの在り方を考えると、エクセルを使ったレポーティング方法はもはや限界だと言えるでしょう。
そこで注目されているのが、モニタリングから意思決定、アクションまでをスピーディに判断するのに役立つBI/ダッシュボードの存在です。

今回Unyoo.jpでは、広告代理店が置かれている環境下で、特にデータについてどのような課題があり、BI/ダッシュボードがどのような形で求められ、活用され始めているのかについて整理するべく、2018年12月7日にUnyoo.jp Meetup Vol.14「広告代理店のBIツール活用に寄り添う」を開催しました。同記事では、好評を博したイベントの内容をレポートします。

テーマがテーマなだけあって、来場者は広告代理店の方が多い印象でした。皆ダッシュボードの存在は知っているものの、実際に活用したことのある方は半数程度。すでに活用はしていても、まだまだ課題を感じている方が多いようでした。

プログラム
セッション1
株式会社オーリーズ:足立誠愛さん

セッション2
株式会社デジタルアイデンティティ:佐野泰成さん

セッション3
アユダンテ株式会社:井上達也さん

パネルセッション
足立誠愛さん(株式会社オーリーズ)
佐野泰成さん(株式会社デジタルアイデンティティ)
井上達也さん(アユダンテ株式会社)
杉原剛(アタラ合同会社)※モデレーター

 

セッション1:オーリーズの取り組み

株式会社オーリーズ:足立誠愛さん

株式会社オーリーズの足立誠愛さん

「運用型広告を通じて課題解決する広告代理店」をテーマに掲げる株式会社オーリーズではBIツールであるDomoを導入し、対社外/社内で活用されています。活用方法として、社内では生産性の管理やSQ管理など、顧客向けには広告実績のBIツール化や広告領域に限定しないアジャイルなマネジメントに使っているそうです。

 

オーリーズでのDomo活用

セッションでは、特に「アジャイルなマネジメントへの挑戦」の項目を中心に、足立さんに同社の取り組みについて教えていただきました。

同社では、BIツールは「ビジネス目標の達成に影響を与える要素を、包括的かつ構造的に分かりやすく可視化し、目標達成に向けて組織やチームのアクションにつなげる手助けをする」ためのものであると考えているそうです。BIツールを十分に活用するためのポイントは以下。

 

BIツールを導入する意味を考える

ビジネス目標の達成のためには、KGI、KPI、またそれに繋がるアクション指標がすべて包括的に結びついていて、かつ構造化されている必要があります。当初はBIツールを広告実績の報告業務に使う想定もしていたそうですが、広告指標はお客様のビジネスのごく一部でしかなく、ここをBIツール化しても意義目的を達成できないと考えたそうです。そのためあくまで事故防止の観点で広告実績をBIツール化しているものの、広告主への報告業務には使用していないそうです。

 

ダッシュボード導入の目的/KPIマネジメント

 

KGIでは年間・当月の累積収益や広告費の累積、それぞれのギャップをモニタリング、KPIは、KGIに対して影響を与えるアクション指標を検討し、見つけたらすぐにモニタリングするようにしているそうです。

 

LPI モニタリング

 

BIツール導入は、組織風土や行動様式を変えてこそ価値がある

マーケティング仮説を検証するため、同社ではアジャイルマーケティングの考え方を取り入れています。アジャイル開発のプロジェクト管理方法(スプリント)の概念を適用し、1スプリント(2~3週間)でKPIに影響を与え得る仮説を検証するというものです。

 

アジャイルマーケティングの実践

 

方法としては、まず日々の広告運用や分析、マーケットトレンドなどからタスクを発見・アーカイブ化し、クライアントとのプロジェクト管理ツールに記載していきます。タスクにはGoogle 広告の新機能などの計画型と、発見/仮説型の2種があります。発見/仮説型タスクとは例えば、ECサイトの会員種別推移をBIツールでモニタリングする中で、非会員比率が増えると全体の顧客単価が下がるという傾向が発見できたとします。その場合、少なくとも全体収益の30%は新規顧客からの購入を維持すると意思決定し、そのために非会員ユーザーへの広告露出低下調整などのアクションを行うことなどです。

タスクが発見できたら、その中でももっともKPIに影響を与えるタスクを決め、2~3週間で検証しきることを目指します。そのために同社では、「スクラム」というミーティングをクライアントと毎日実施しているそうです。スクラムでは昨日したこと、今日すること、そしてスプリントの妨げになる障害について共有します。

日々の成果をBIツールでリアルタイムに共有することは、スプリントをできるだけ早く正確に回すために不可欠なのだそうです。

アジャイルマーケティングの実践

最後に、関係者として共通言語と想像力を持つためには、大前提としてデータの正規化とSQLの基礎知識を押さえておくことも重要だと、足立さんは結びました。

 

セッション2:業務負荷大幅軽減の実現 生産性・社員のモチベーション向上

株式会社デジタルアイデンティティ:佐野泰成さん

株式会社デジタルアイデンティティの佐野泰成さん

2つ目のセッションは、株式会社デジタルアイデンティティの佐野泰成さんによるDatoramaを使ったBIツールの組み方、コミュニケーション方法についてでした。通常のBIツールは売上などの会計ベースですが、Datoramaはマーケティングに関わるデータの集約・統合、可視化に特化したMI(Marketing Intelligence)ツールとして有名です。

同社がBIツールを導入しようと思ったきっかけは2つあり、ひとつはレポーティング作業の負荷軽減でした。同社は100社以上の入稿・運用・レポーティングを行う運用部隊を抱えていますが、毎日エクセルと向き合う作業に対して部隊のモチベーションが上がらずにいたそうです。

一方、フロント部隊はクライアントへの報告用資料として、運用部隊が作ったエクセルレポートをパワーポイントに貼り付けたものを使用しており、資料作成にかなりの時間を費やしていたそうです。時間がかかる割に資料に対するクライアントの満足度は高くなく、これらに課題を感じてBIの導入を決めたと佐野さんは語ります。

 

株式会社デジタルアイデンティティのBIツールの導入背景

 

手を使う作業から頭を使う業務へのシフト

2017年9月より各社ツールの検討を開始し、12月に契約、翌2018年1月よりプロジェクトがスタートしました。ツールの理解・テストに3か月かけ、繋ぎ込みは4月から開始。2018年10月時点で80案件での導入が完了し、作業時間月600時間が削減されたと佐野さんは語ります。

BIツールは基本的にクライアントに開示しているため実働部隊がレポートを作成する手間が省かれ、運用コントロールの方により注力できるようになったそうです。可視化により自分の行った施策がどう数字に反映されたかがわかるため、業務内容が手を使う業務から、頭を使う業務へと徐々にシフトしました。

 

BIツールの実際のアウトプット

また、BIツール上でクライアントとコメントのやりとりができるため、コミュニケーションコストも徐々に減る案件も出てきたそうです。BIツールは運用メンバーならば誰でも改造できるようにしており、ビッグワードや平均掲載順位など運用に必要だと思った指標はどんどん追加していくスタイルをとっています。

 

BIツールの実際のアウトプット一方フロント部隊は、BIツールを使った報告をフォーマット化することで資料作成時間を削減でき、提出資料の質のボトムアップが図れているそうです。

 

定例会の在り方を変える

今後は各メディア・担当別のコスト・粗利の管理もBIツールで行っていきたいそうです。また、請求作業などはこれまで会計担当者が管理画面にログインして照合していたそうですが、今後はDBで照らし合わせができるようにする予定だそうです。

BIツールの導入により、定例会の在り方がガラリと変わったと佐野さんは言います。広告関連指標をBIツールでクライアントに事前確認してもらうことで、数字報告の時間が削減でき、提案やクリエイティブのブレスト、検討に多くの時間を割けるようになりました。加えて社内メンバーのモチベーションが向上につながった点にも大きな成果を感じているそうです。佐野さんは、今後も社内外問わず多くのシーンで活用していきたいと語りました。

 

セッション3:「ダッシュボードの構築とアユダンテの取り組み」

アユダンテ株式会社:井上達也さん
アユダンテ株式会社の井上達也さん

アユダンテ株式会社の井上達也さんからは、BIツールをビジュアライズする前段階である、データ構築の部分を中心にお話いただきました。同社ではBIツールを構築する際、APIなどをサーバに接続して一旦データを溜め、Amazon Redshiftで統合したのちにTableauからデータベースを参照し、クライアントにレポートをデリバリーする体制を整えています。

 

ダッシュボード構築に必要なデータを一元管理する仕組み

 

Tableauは強力なビジュアライゼーション技術や直感的な操作性を強みとしていますが、導入を決めた決定打は、ユーザーコミュニティの活発さだったそうです。ユーザー数が多いためつまずいた際のコミュニティでの課題解決が早く、パブリック上には何万ものレポートが上がっているため「データはあるが、どう見せるか悩む」といった際のヒントとして活用できます。ただクライアントの環境やデリバリー方法によっては、Googleデータポータルを使う場合もあるそうです。

 

まず考えるべきはデータ整備

ツールごとに特性はあれど、ツールに関わらず大切なのはデータ整備だと井上さんは語ります。BIツールを構築する際に考えなければいけないのは、以下の3つ。

 

ツールに関わらずまず考えるべきはデータ整備

 

その際、期間や指標の組み合わせなど取得データに制限がある場合や、複数データの結合が困難な場合、そもそもAPIの口がなかったり、手動でのデータダウンロードが必要だったりと、いくつかの課題が発生しがちなのだそうです。これは各媒体の仕様に依存するため解決しづらく感じますが、不可能ではないと井上さんは言います。

同社ではこれらの課題を解決するために、冒頭で語られたデータを一元管理する環境を構築したそうです。同環境であれば、APIが取得できないサービスであってもWEBスクレイビングや、オフラインデータであればFTPを経由させることで、各媒体からデータを自動的に取得・蓄積することができます。

 

データを一元管理するメリット

データを一元管理するメリットはたくさんあります。まずBIツールからの接続先が一つなので管理がしやすく、HTML上にしかないようなデータでもフラットな行データとして使用できます。さらに、過去3か月分しか取得できないようなAPIであったとしても、ずっと蓄積し続けることができます。

同社では、こうしたデータクレンジング、デリバリーの仕組みを「Quick DMP」としてサービス化しています。井上さんは、これくらい泥臭い作業をしないと、BIツールで見せたいものをすべて見せることは不可能だと言います。

また、ツールに取得したいデータのコネクタがなかったとしても、諦めずに試行錯誤してほしいと語りました。例えばGoogleスプレッドシート上にはたくさんのアドオンがあり、そこからデータ取得ができるかもしれません。とはいえ難しい部分もあるため、積極的にエンジニアを巻き込むことも大事だと語りました。

 

パネルディスカッション

最後は、ご登壇いただいた3名に加え、弊社の杉原によるパネルディスカッションでした。
BIツール 利用各社によるパネルディスカッション

 

BIツール・ダッシュボード、それぞれを選んだ理由は?

佐野:弊社はDatoramaを導入しています。社内全体のプロジェクトとしてのBIツールを探していたのでツールの機能面と費用面を考慮したのと、まだ代理店での本格的な事例が日本で出ていないツールを導入してみたいと思っていました。

足立:弊社はDomoを導入していますが、Domoのビジネス最適化プラットフォームというコンセプトに惹かれました。クライアントに対して対外的に用いるだけでなく、労働生産性の管理やサービスクオリティの文化醸成といった社内的な活用に重点を置いていたため、ビジネス最適化というのはまさに欲していたものでした。また、単純に一ユーザーとしてDomoを触ってみたかったという気持ちもありますね。

 

導入を進めるうえで、どのような課題がありましたか?

佐野:Datoramaはデータ量課金制なので、いかに行数を入れないかというところに頭を使いましたね。データ統合や自動収集をしてくれるツールであるgluを併用し、データを極力圧縮することで対策しています。

井上:クライアントにBIツールを提供した際に、社内でしっかり浸透させてもらう部分に課題を感じます。上層部がエクセル文化に慣れすぎていると、BIツールを使っても結局エクセルと似たようなフォーマットを希望されたりする場合もあります。

 

組織での定着化をするための工夫やアイデアはありますか?

井上:できる限りレポートを数多く作って関係者にデリバリーし続けることが重要だと思います。その中で一人でも興味を持ってくれれば、それは学習に繋がると思います。

佐野:社内でも積極的に活用できている人と、そうでない人がいるのが実情です。なので社内向けのプレゼンを複数実施し、理想を語り、我々の最終的な目標を都度共有しています。

足立:導入目的を忘れないことに尽きると思います。我々はアジャイルマーケティングを実践していますが、仮説検証のスピードを上げるためにはBIツールは不可欠です。なぜ導入しているのか、BIツールを使うことの強い目的意識を持っておく必要がありますね。

 

来場者の皆さんへのアドバイス

足立:先ほども言った通り、強い目的意識が必要です。DomoはUIが優れているため色々なことができるため、いわば目的のない指標でもモニタリングできてしまうわけです。ツールの機能に引っ張られすぎないことも大切だと思います。

佐野:案件や関係各所が増えるほどBIツールの導入はハードルがあると思います。そこを考えると中小企業こそ、導入しやすいと思います。なるべく早い段階での導入を推奨します。

井上:テクニカルな友達をぜひ作ってみてください。自分で勉強してみてもいいですが、すでに知識を持っている人を巻き込んだ方が、課題解決スピードが速まるケースも多いと思います。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!次回のUnyoo.jp Meetupは企画が固まり次第、Unyoo.jp上でアナウンスします。ふるってご参加のほど、よろしくお願いします!

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