広告運用者のキャリア:目の前の仕事に向き合っていくことの地続きに、未来がある:ネクステッジ電通 植田恭平さんに聞く

広告運用者のキャリア:目の前の仕事に向き合っていくことの地続きに、未来がある:ネクステッジ電通 植田恭平さんに聞く

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『State of AdOps』連載の趣旨

※このインタビューはadmarketech. の運用型広告インタビューシリーズ「State of AdOps」を転載したものです。

オリジナルURL:目の前の仕事に向き合っていくことの地続きに、未来がある。 ?ネクステッジ電通 植田恭平氏:State of AdOps Vol.16

「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

第16回目は、2013年の設立以来破竹の勢いで運用型広告を推進されている、株式会社ネクステッジ電通の植田恭平(うえだきょうへい)さんにご登場頂きます。

電通グループの中のデジタルマーケティングの最先端を担う現場では、どのように仕事が進められ、どのようなナレッジが蓄積されていっているのか。実際にコンサルタントとして従事されている植田さんに総合広告会社のデジタルの最前線をお伺いしました。

# インタビューは 2015年1月に行われました。

 

最適解を求めて積極的に変化していく。

●まずは、植田さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

株式会社ネクステッジ電通の植田恭平さんネクステッジ電通の植田です。コンサルティング部門のコンサルタントとして、大手の企業様数社へ、デジタル広告のプランニング、運用をワンストップで提供しています。

ネクステッジ電通に入社する前までは、ウェブマーケティングの事業を行うベンチャー企業で SEO を提案していました。SEO は仕事としてやりがいもあったのですが、それのみでは部分最適といいますか、お客さまのビジネスに与えるインパクトが小さいなと悩んでいた時に、ネクステッジ電通の立ち上げメンバー募集を知り、2013年10月に入社しました。

ネクステッジ電通の特長として、他の代理店と違い「SEO だけ」「リスティングだけ」と提供できるものが決まっているわけではなく、お客さまのビジネスに貢献することが目的なので、メニューにこだわらないという考え方があります。

私はそれまで SEO が仕事でしたので、どうしても SEO ありきで提案を考えるようになってしまっていたのですが、何か特定の施策にこだわるのではなく、最適解を求めて積極的に変化していく、というネクステッジ電通の姿勢は、自分自身も成長できるのではと思ったことが入社の直接的な理由です。

●入社前まで運用型広告の経験はなかったとお聞きしていますが、新しい業務を覚えるのに苦労されたことがあれば教えてください。

運用型広告はネクステッジ電通に入社する前まで未経験でしたが、個人的にはキャッチアップはそれほど辛くはなかったですし、むしろ仕事の幅の拡がりや、施策がすぐにフィードバックされるサイクルがありますので、面白さの方を強く感じました。

強いて苦労した点を挙げれば、やはり覚えることが多いことでしょうか。広告を一本入稿するのでも、ケアしなければいけないポイントは多数ありますし、プラットフォームの仕組みや考え方を把握するまでは時間がかかりました。

書籍で読んで分かることは限定的で、例えば上限入札単価を100円で設定しても、実際の平均入札単価は30円の広告もあれば80円の広告もあるわけですが、どういう場合にこのような実績になるのか、自分で実際に触れてみないと分からないことが多々ありました。

●ルールを知らないとゲームに勝つのは難しいですよね。

まさに、ゲームのメタファーに近いと思います。例えば「コンバージョン数を◯◯まで増やす」というゴールがあった時に、運用型広告も、予算、時間、リソースなどの所与の制約条件の中で、競合や市場環境などの外部要因も加味しながらあらゆる手段を組み合わせてゴールを目指していきます。「お客さまの事業成長の支援」という非常にやりがいのあるゲームだと考えてもいいのかもしれません。

そして、デジタルであるがゆえに、ゴールは明確な数値に落とし込むことができますし、それをほぼリアルタイムで追いながら対策を立て続けることができるのも、この仕事の面白さだと思います。

 

大手企業ほどハードルが高く、ビジネスに与えるインパクトも大きい

●電通グループとして特徴的な取り組みなどがあれば教えて下さい。

お客さまの課題を解決するには、施策をデジタルに留まらせておく必要はまったくありません。ネクステッジ電通は、電通本体や、電通イージス・ネットワーク(Dentsu Aegis Network Ltd.)とも連携しながら、国内外の知見あるグループ会社と協働できるところが強みであり、特長だと思います。

イージス・ネットワークの例で申し上げますと、英iProspect のコンテンツマーケティングチームと連携して、ネクステッジ電通社内の専門ソリューションチームとの混成チームで日本展開を進めていたり、テレビとデジタルのアトリビューション分析なども積極的に行なっています。

●素晴らしいですね。ネクステッジ電通はテクノロジーへの取り組みも強化されているように思いますが、実際のお取り組み事例などがあればぜひ教えて下さい。

ある大規模Eコマースのお客さまの事例ですが、それまで特定の高単価商材に売上が偏っており、なかなか費用対効果の見合わない低単価商材に投資が出来ない状況が続いていた状況を、Google Analytics のユーザー行動データを分析して広告配信のターゲティングに利用することで、予算を投下できるレベルにまで ROAS を引き上げたことがございます。

具体的には、低単価商材ということで購入確度や頻度が高いユーザーを中心に配信するために、Google Analytics に蓄積されているデータを RFM分析などで洗い出し、優良セグメントの仮説を複数作りました。その仮説ごとに GDN(Google Display Network)を通じて配信しました。

結果は、低単価商材にも関わらず予算投下が可能な ROAS でコンバージョンを獲得できるセグメントを発見することができ、そのセグメントに合わせて配信を最適化することができました。その結果を受けて、Yahoo!側でも YTM(Yahoo! タグマネジメント)で同条件のセグメントを作成し、効果を上げることができました。

施策開始前と開始後の結果 グラフ

施策開始前と開始後の結果 (数値は省略)

この事例を成功だと考える理由は2つありまして、1つはメニューではなくメソッドを横展開ができたことです。AdWords と Analytics で成功したことを、Yahoo!プロモーション広告と Yahoo!タグマネジメント に応用することで、違うプラットフォームでも方法論を共有できたのは大きいと考えています。

もう1つは、それが大手の企業様と二人三脚で実現できたことです。今申し上げたような施策は、他の企業でも取り組んでいるところはあると思います。ですが、それが企業規模の大きなお客さまであればあるほど導入による売上へのインパクトは大きく、また、それを実施するための様々なハードルを乗り越えていかなければいけません。

Google Analytics も、最初は導入の承認がおりませんでした。大手のお客さまならではかもしれませんが、Analytics を導入することで社内の重要な情報が Google に送信されると懸念されるケースは多くあります。

最終的には「ユーザーのアクセス情報をマーケティング施策に活かしましょう」と営業と粘り強く説得を重ねたことでご納得いただきましたが、こういったプロセスを経ているからこそ必ず結果を出さなければいけないというプレッシャーがありましたので、結果が出た時は非常に嬉しかったです。

 

2種類のテクノロジーの役割

●なるほど、そのような事例が大手企業から出てきているということが成果ということですね。広告運用において社内での技術的なチャレンジなどはありましたか?

チャレンジと呼ぶのかどうか分かりませんが、広告運用におけるテクノロジーと人とのバランスを考える機会はよくありました。

一般に、広告運用の中でのテクノロジーの役割とは、大きく分けて ?マニュアルでの作業負担の軽減や精緻化 ?活用の幅の拡大 の2点に集約されると思います。

?は、入札や入稿の自動化であったり、人が行う作業をさらに高精度にするという意味です。拡張CPCのような自動入札や、API や Script を使ったレポートの取得などが含まれます。

?は、商品リスト広告や動的検索広告のような、マーケティングの活用の幅を拡げてくれるようなものですね。これまで広告と直接は連動できなかった商品データベースやランディングページへの注力が、そのまま広告にフィードバックしていく世界です。

個人的には、テクノロジーはどんどん人の領域を侵食すればいいと考えています。それによって確保できる時間を、より付加価値の高い業務に割り当てていくことがこれから広告運用においてすべきことなのではと考えています。付加価値を生み出せるように、機械ではできない設計や判断といった部分が問われてくるのではないでしょうか。

●そういった流れに対して組織的に動いていたりするのでしょうか?

先ほどの?と?を接続(ブリッジ)する意味で、英iProspect が利用している iAnalyse というシステムを日本仕様にローカライズしています。デジタルだけでなくマス広告などもまとめて一つの管理画面で表現できますので、マニュアルで集計する手間を極力省き、様々なインサイトを得ることができます。

そこで得たアイデアや知見を再度キャンペーンに適用していくことは人間でないとできませんので、自動化とマニュアルがちょうどいい具合に交わることができているのではと考えています。

そして何より、製品を日本仕様にローカライズすることができるような、開発のチームが同じ会社にいることも、様々なチャレンジを可能にしている理由なのではと思っています。

 

地道な取り組みの先に未来がある

●ありがとうございます。最後に今後の展望などがあればぜひ教えてください。

今の仕事を始めてまだ1年半程度ですが、最初は右も左も分からず、多くの方々の助けで何とかやれていました。あれから時間が経って、自動化できる部分は自動化し、自分自身も知識や経験が少しずつ蓄積できてきたことで、お客さまの抱えている課題そのものを考える時間が増えてきて、以前よりこの仕事の面白さが分かるようになってきました。

今後の展望といっても、あまり大きなことは言えないのですが、引き続き、インパクトを出すプランニングと実行に時間を割いていきたいと考えています。変化を常に感じられる分野に身を置いているので、普段からお客さまや市場に向き合っていくことの地続きに未来があるといいますか、地道な取り組みの延長にしか答えはないのだろうと思っています。

運用型広告は、プラットフォームが何になってもユーザーを中心にして広告を考えるという根本は変わらないと思いますので、基本を忘れずに成果を出し続けられるコンサルタントを目指していきます。

なお、ネクステッジ電通では現在一緒にデジタルマーケティングを推進していく仲間を募集していますので、興味を持たれた方はぜひご連絡もらえますと嬉しいです。

●本日はありがとうございました!

株式会社ネクステッジ電通の植田恭平さん

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