LIVE BOARDに聞く:データ活用で広がりをみせるDOOHの未来

LIVE BOARD

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家庭以外にある広告媒体OOH、そのデジタル版であるDOOHに注目が集まっています。街中にあるサイネージ広告、電車内や駅構内のサイネージ広告などが含まれます。Web上のデジタル広告同様、プログラマティック販売が可能になったこの分野において、携帯電話で圧倒的なシェアを誇るNTTドコモのビッグデータを使ってDOOHの配信を行っているのがLIVE BOARDです。今回は、DOOHとは何か、データをどう活用して配信を行っているのか、クッキー規制の影響はないのかなど、LIVE BOARDの髙山晋太郎さんにお話を伺いました。

話し手:
株式会社 LIVE BOARD
クライアントサービス部 アソシエイトディレクター
髙山晋太郎さん

聞き手:
アタラ合同会社
コンサルタント
小湾喜仁

DOOHとOOHの違いとは

小湾:髙山さんとLIVE BOARDの自己紹介をお願いいたします。

髙山:株式会社 LIVE BOARDクライアントサービス部にてアソシエイトディレクターを務めている髙山晋太郎です。LIVE BOARDでは主に、国内外の広告会社やDSP事業社と協業しながらプログラマティックOOH(※Programmatic Digital Out of Homeの略)の啓発と推進に努めています。

LIVE BOARDはメディアオーナーという立場もありますが、プラットフォーム事業社でもあり、SSPやDSP機能も有しています。基本的に媒体社でありながらプラットフォーマーである、といった立ち位置です。

私自身、LIVE BOARDに加入する以前はいくつかの業界にも携わってきましたが、広告業界においてはインターネット広告会社のサイバーエージェント、イギリス系のモバイル広告関連スタートアップにて、ともに新規事業の立ち上げなどを経験しました。

小湾:では、LIVE BOARDさんも事業立ち上げフェーズですか。

髙山:はい。LIVE BOARDは2019年2月に設立されたスタートアップであり、株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と株式会社電通のジョイントベンチャー・カンパニーです。業界にとって新しい領域であるプログラマティックOOHのローカライズを主導しています。欧米をはじめ諸外国では急ピッチで定着しつつあるコンセプトながら、国内では過去例のないような取り組みが多い中で、賛同していただける国内外のパートナー会社と一からビジネスを作っていくようなことをしています。

小湾:そもそもDOOHとOOHには具体的にどのような違いがあるのですか。

髙山:OOHは「Out of Home」の略称で、家庭環境外にある広告媒体を総称します。その頭にD(Digital)を加えたのがDOOH(Digital Out of Home)で、デジタルサイネージ化されたOOHの総称です。なので、家以外で接触するメディアの中で、デジタル化されているのがDOOH、そうでないものがOOHという区分になります。DOOHの中にプログラマティックOOHが内包されているとも言えますね。


小湾:屋外空間はイメージしやすいのですが、屋内空間はどういったスペースに掲載されるのでしょうか。

髙山:家庭環境外にある屋内空間ですので、例えば交通媒体と呼ばれる駅構内や電車内のサイネージ、またリテールなど店舗内のサイネージもDOOHの一部です。

それらの販売のされ方について補足をすると、一般的なDOOHの販売手法には「ジャック販売」や「ロール販売」といったものがあります。ジャック販売は、任意の期間を設けて「1週間、1社が独占して1000万円」といったものです。ロール販売は、例えば15分に1回広告放映されることを「15分ロール」と呼ぶのですが、一定間隔を置きながら一定の広告枠を販売する手法を指します。「1週間、15分ロールで300万円」のようなイメージです。一方で、プログラマティックOOHというソリューションが受け入れられ始めているのは、これまでのDOOH販売手法の多くが媒体(サプライ)基点であったことにも理由があるかと思います。

われわれはインプレッションベースでDOOH枠の販売を行っています。これまではサプライサイドに寄りがちであった販売の基点を、ドコモデータを使いながらデマンドサイドへ移しました。基点をサプライからデマンドへ変えると、必ずしも全ての枠を買いたかったわけではないことが分かります。例えば、ビジネスパーソンがターゲットであれば、彼らの通勤導線かつ通勤時間帯など、限られたロケーションや時間帯のみ指定して、より細かな粒度でDOOHを買い付けたい、といったニーズも当然浮上します。そういったデマンドのリアルな声に合わせて、枠を細分化して販売できることが強みです。

小湾:必要な量だけ買うことができるのですね。そこにはオークションのようなやりとりがあるのですか。

髙山:そうですね。なので、非常にデジタル広告と近しいものと思います。ご存じのようにいろいろな接続方法があり、例えばRTB(※Real Time Biddingの略。広告1回表示ごとにリアルタイムでオークションが行われ、表示される広告が決まる仕組み)接続されたDSPへは、LIVE BOARD SSPより再生タイミングごとにビッドリクエストが送られ、その中身に応じて応札していただくことになります。

小湾:オークションの中でもDOOHの特徴はあるのですか。

髙山:はい。公共の場にフィジカルに存在するものですので、審査のハードルはやや高まります。デジタル広告においても、基本的には入稿したものの、基準を満たしていない素材ははじかれますよね。また、媒体社ごとにも基準が異なるので、事前審査を通過した媒体をホワイトリスト化して配信します。要は、PMP(※Private Market Placeの略。掲載する媒体や枠、広告主を限定した広告取引)と同様の形になり、オープンオークションではなく限られた中で取引ができることが特徴です。

小湾:本当にPMP的なやり方なのですね。

ドコモデータを使って適切なタイミングで適切なターゲットに当てることが可能

小湾:データ活用の観点での特徴はどういったものがありますか。通常のOOHとの違いだけでなく、ターゲティングや効果測定などLIVE BOARDならではの強みを教えてください。

髙山:一言でいうと、LIVE BOARDの強みはドコモのビッグデータ活用にあると考えています。

前提として、LIVE BOARDはすでに国内最大級のネットワークを有しており、現状で2万6000を超えるDOOH媒体がマーケットプレイスに接続されています。この規模のネットワークにて、屋外・屋内問わず、多様なフォーマットで生活導線上のモーメントを捉えながら、適切なタイミングで適切なオーディエンスに当てていくことができれば、よりDOOHの広告価値が高まると考えています。これからも連携媒体は増えていきますが、それらをドコモのビッグデータでひとくくりにして販売することが可能です。プログラマティックOOHにおいて欠かせないステップである、(1)インプレッション計測、(2)メディアプランニング、(3)ターゲティング、(4)効果検証まで、一気通貫でドコモデータを使用できることがキーポイントです。

小湾:ドコモデータを使える唯一のDOOHの事業社という点は大きな強みですね。

髙山:そうですね。ドコモのユーザーは現状約9300万(2023年4月末現在)おり、国内モバイルキャリアにおいて最大のマーケットシェアを占めています。ユーザー母数が大きければ大きいほど、ビッグデータとしてもより精度が高いものになります。

小湾:計測以外に、データの活用に強みはありますか。

髙山:前述した、メディアプランニング、ターゲティング、効果検証の三つです。特に、自社にて運営する面とパートナー媒体社より連携していただいている面を含めて、われわれが束ねている全てのDOOH媒体の中で、どのような面の周りにどのような属性の方々がいるかを可視化できることが強みです。これには「docomo data square™」というデータクリーンルームを活用しています。位置情報許諾済みユーザーの位置情報などや、会員情報、オンライン・オフライン上の行動履歴など、さまざまなデータが全てそこに集約されており、データの掛け合わせによって、どのようなロケーションに、どういった属性の方が多くいるかを把握することができます。性年代、職種といった一般的な幅の他にも、年収レンジ、趣味嗜好、さらにはログに基づく来訪施設、インストールされたアプリといった情報まで判別できるため、それらを位置情報などと掛け合わせることで任意のターゲットが周辺に多い面をあぶり出すことができます。

一つの例としてゲーム系クライアントへは、ゲームへの興味・関心を示すアンケート回答と、実際のアプリインストール状況をOR条件で結び、ターゲット含有率のトップ面をランク化することもできます。この場合、肌感にも近い秋葉原の面がトップ3に入ってくるのですが、その一方で、これまでは拾えなかったロケーションもたくさんあります。それらを総じてビッグデータにて可視化できることが強みですね。

小湾:ある意味で、なんとなくやっていたオフラインのプランニングが、データを使って数値化されるのですね。

髙山:そうですね。例えば従来のOOHはサーキュレーション(※そのエリアにいる人の数)情報などをベースに媒体評価をしてきました。最寄り駅の乗降者数などです。とはいえ、実際にその面の周りにどれだけの人が集まり、どれだけの人が視認可能か、ということはデータとして示されてこなかったので、それをより細かい粒度でインプレッションするのがLIVE BOARDの手法です。従来では拾えなかったニーズが拾えると思います。

インプレッションに関連しては、昨今のグローバルの潮流としてOOHと他媒体をクロスメディアで評価することや、それらを統合的にどのようにプランニングし、予算アロケーションしたら最適か、ということを解き明かしていこうとする流れがあります。しかし、共通指標がないと評価できないという問題があり、OOHにおいてもインプレッションへの深掘りが始まりました。

媒体の特性によってインプレッションの定義は変わる

髙山:インプレッションにはいろいろな方法論がありますが、LIVE BOARDでは「The World Out of Home Organization(WOO)」という国際的な機関が作っている「GLOBAL AUDIENCE MEASUREMENT GUIDELINES」(国内では「デジタルサイネージコンソーシアム(DSC)」という機関が定めている)に準じて作り込んでいます。

ただ、インプレッションを相互比較するといっても、そもそも媒体が違えば媒体特性によってインプレッションの定義が異なります。OOHにおいては、サーキュレーション、OTS(※Opportunity To Seeの略。視認エリアにいるオーディエンス/進行方向などの加味はなし)、OTC(※Opportunity To Contactの略。視認エリアにいて、進行方向・障害物の有無においても媒体を見ることができるオーディエンス)、VAC(※Visibility Adjusted Contact。後述)という各段階があり、この順にどんどん深くなっていきます。この「面の周りにいる人たち」をドコモの基地局由来の位置情報などを使って捉えているのですが、その中でVACという基準があり、実際に見たとされる人数のインプレッションを計測で出しています。

デジタル広告においても、よりクライアント目線での広告効果を求めてビューアビリティを重要視する流れがあると思います。それに似た考え方で、われわれも実際に広告を見たであろうと想定されるViewed Impression(VAC:OTCのうち、広告を見たと想定される確率(視認率)をかけて調整をしたオーディエンス)をメジャメント基準として採用しています。先述した中で最も深い基準ですね。

ガイドライン上はこのVACを共通指標にしていこうとしているのですが、われわれのクライアントからも、この一つ上にあたるOTC(視認範囲内にいて見る可能性があるという基準)をベースにクロスメディアでのCPM(※Cost Per Milleの略。インプレッション1000回当たりの費用)比較を希望されることがあります。これはデジタル広告におけるViewable Impressionと同等なものです。

ただし、ここで重要なのは、クライアントのニーズを捉えるということです。より精緻な「視認」ニーズに対しては、最も深い、われわれの通常指標(VAC)が評価をいただいています。一方で現状の日本のデジタル広告や、クロスメディアでのCPM比較に乗る上で、一つ上にあたる指標(OTC)に換算し直すこともあります。これもクライアントにとっての広告価値を深掘りしているからこそ対応できるところです。

小湾:かなり深掘りできるのは意外でした。

髙山:そうですね。DOOHといってもビルボードと電車内・駅構内の媒体、リテールでも周辺環境が大きく違うので、それぞれに対応したインプレッションを作っています。屋外においてはVR環境下での検証、電車の場合はAIカメラを使ったり、駅ではWi-Fiを使ったりもします。媒体環境ごとに最適なテクノロジーを採用しています。

また、世界的に「アテンション」と呼ばれる指標が注目され始めていますが、これがOOHでいうところのVACにあたります。実際に広告を見たとされる割合(アテンション率)を乗じたインプレッションベースで課金されるものです。このアテンション指標を用いて、TV・デジタルなどとともに、クロスメディアでいちばん深い指標、つまり実際に見た人をベースにそろえて課金・検証することができれば、クライアントにとってもメディア比較が容易となりメリットがありますよね。そうした方向にグローバルでは動きつつあり、おそらく国内でもここ数年のうちに進んでいくのではないかと考えています。

小湾:そこに共感して発注する広告主も増えていますか。

髙山:はい、ありがたいことに。例えば、某ナショナルクライアントさんなどは、非常にアカウンタビリティを重視しています。本当に見たとされる人を、しっかりとテクノロジーで解明してそこに対価を払っていただく、といったわれわれの取り組みを評価して出稿していただいています。

小湾:外資の広告会社などはこのViewable Impressionを重視していますよね。当時は手打ちでビューアビリティの計算をしていましたが、こうやってDOOHでも同じようにできることが意外です。

髙山:現時点でもそうですが、これからはさらにいろいろなテクノロジーを交えながら、より精緻になっていくと思います。われわれはそれを現在進行形でベストを尽くして行っていますが、もちろん全てはクライアントニーズを捉えるためです。

小湾:海外からのバイイングは多いでしょうか。印象に残っている事例はありますか。

髙山:非常に増えています。主な要因としては、グローバルプレイヤーと呼ばれるようなオムニチャネルDSPとの接続があります。われわれのマーケットプレイスには例えばGoogleのDV360、The Trade Desk、MediaMath、Yahoo!といった主要なDSPが数多くつながっています。もちろん国内DSPとの連携もありますが、一方で、海外にはこれらのDSPを介すことで、あらゆるインベントリ(広告在庫)を一元的に買い付けようとするクライアントもいます。

これらのDSP経由でグローバルにてセントラルバイイング(媒体一括購入)をするようなクライアントにとって、米国からもシンガポールからも一つのダッシュボード上で、デジタルもDOOHも併せて広告枠を買い付けることが可能となるので、間違いなくDOOHへの出稿ハードルも下がってきています。弊社においては海外からの買い付けが2022年度にて前年度比約360%超の成長速度ですので、注力領域の一つと位置付けています。

プログラマティック販売によって出稿前のハードルとリードタイムが激減

小湾:この買い付け方法は、プログラマティック販売だと、通常のPMPのように、いわゆるディールID(※PMP実施時に媒体社がSSPから発行する取引番号のこと)のようなものを渡して、そのまま買い付けてもらう買い方なのですか。

髙山:まさにそんな感じです。

小湾:本当にWebのバナーを買うのと一緒のやり方なのですね。

髙山:同じですが、媒体審査が少し厳格という点だけは異なります。

やはり公共の場に放映されるものですので、広告を見る人に不快な思いをさせないようケアする必要があります。ただ、おっしゃるようにバナーを買うのとかなり近しい買い方ができることによって、出稿前のハードルとリードタイムがすごく減っています。

これまでの日本のOOHは良くも悪くも縦割りのような形で、数多あるメディアオーナーに対して、一つ一つ電話をして連絡していた時代がありました。それが今では、統合された一つのプラットフォーム上にて買い付けていただけます。ワンストップのハブになるようなイメージですが、それが国内外からの出稿需要に対応できている理由の一つです。

従来のOOHに柔軟性が乏しかった理由として、広告放映のための番組表を手で作って、それが固まったからには変えられない、といったことがあったと思います。一方でわれわれの場合は、番組表を作るのではなく、あくまでインプレッションベースで買い付けの機会を提供し、買い付けていただくだけなので、それはフレキシブルですね。

バイイングの違い:プログラマティックとダイナミック

小湾:バイイングにおいて、プログラマティックとダイナミックという手法があると思いますが、明確な違いはあるのですか。

髙山:われわれにも大きく二つの販売手法があります。一つは、予約型という、純広告に近い方法です。純広告といっても中身はインプレッション販売のプログラマティックです。予約型では、期間やインプレッションを保証する、アドサーバー・ギャランティードのようなことを行っています。二つ目は、完全なDSP商品のプログラマティックです。こちらはさらに柔軟で、任意設定していただいた期間において、買いたいだけ買っていただく、というものです。そこに、DSP側にて保有するファースト・パーティ・データやサード・パーティ・データを使って付加価値を乗せながら広告配信することもできます。

小湾:先ほど、海外からの買い付けが非常に増えている、というお話をお聞きしましたが、日本での成長スピードはどう見ていますか。

髙山:LIVE BOARDにおいて、日本国内では200%前後の成長が続いています。イメージしやすいかもしれませんが、OOHは新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、かなり逆風を受けました。その中でプログラマティックOOHでは、インプレッションベースでの取引が可能なので、どれだけ人が減ってもその分だけの課金になります。それもあって、コロナ禍のような人流変化が起こりやすい状況下でも比較的受け入れられやすかったようです。プログラマティックOOHの他、昨今これほどの成長率を示しているのはOTT広告(※Over The Topの略。ストリーミングテレビ広告)領域のようなところで、従来のOOHではなかなか見られないと思います。いずれにしても、インプレッション単位で買い付けができるという意味で、クライアントにとっての柔軟性が高いといえますね。

小湾:国内と海外とでプランニングの位置づけには差があるのではと思うのですが、どのような違いがありますか。

髙山:似ているところと違うところがありますが、国内では、データよりもロケーションを重視する傾向があるのかなと思います。もちろん、OOHの性質上、ロケーションや出面の良さは非常に重要です。

一方で、クライアントにもよりますが、海外ではデータに基づいていればロケーションの世評を超えて媒体が評価されることもあります。国内でのメディアプランニングにおいて、例えばターゲットがZ世代やビジネスパーソンになると渋谷や新橋といったエリアに出稿したい、となりますが、海外ではそのエリアのイメージだけではなく、データドリブンに買いたいとも考えられるので、いろいろな媒体を総合的に評価、許容してバイイングされることが増えています。

小湾:今まで買い方の話にフォーカスしていましたが、表現の幅やデジタルに関しては、海外と国内で差はありますか。

髙山:国によりますが日本よりもDOOHに対する規制が緩かったりもするので、ソーシャルメディアとの連動や、ライブ配信など、よりインタラクティブかつダイナミックな表現がされているのを見かけます。それらをいかにわれわれが国内の慣習に沿いつつも、実施可能にしていけるかが重要だと思います。

小湾:特徴的な事例があれば教えてください。

髙山:アメリカのワーナー・ブラザーズ様の事例『マトリックス・レザレクションズ』のキャンペーンがAdweek 2022 Experiential Awards(New York開催)の広告賞を受賞しました。これは、Twitterと連動したキャンペーンで、マトリックス・レザレクションズが公開される前に、#The Matrix ResurrectionsなどツイートされたものをDOOHに掲示するというキャンペーンです。これまでの一方的に伝える広告ではなく、受け手も参加が可能なインタラクティブ性のある新しいものとして評価されたのだと思いますし、今後も受け手にとって自分ごと化できるような手法が増えていくと思います。

同キャンペーンでは、DOOH放映されたツイートの写真をフォトグラファーが撮影した上で添付・ツイートバックするなど、オンラインから始まったハッシュタグがオフラインで表示され、それを今度またオンラインに戻すという「On to Off to On」の事例となっており、このような面白い取り組みもDOOHでは増えてきています。

小湾:規格化されたクリエイティブというか、LIVE BOARDのネットワークでもこういった表現がありますか。

髙山:国内においても増えています。例えばハッシュタグをキーとして引っ張ってくるものがそうです。

小湾:APIで引っ張ってくるということですか。

髙山:そうですね。ハッシュタグにて収集された投稿が可視化されるようなダッシュボードを作ります。もちろん審査はあるので、原則としてマニュアル的に選択された素材のみを放映しますが。その他、テクノロジーを活用したクリエイティブ表現では、天気や気温など、外部環境と連動した事例が増えています。例えばOpenWeatherMapのようなサービスを活用し、リアルタイムにほぼ近い形で、晴れのタイミングではクリエイティブA、曇りではクリエイティブB、雨では……といったような、モーメントを捉えたクリエイティブの出し分けも可能です。

某飲料系クライアントのDOOHキャンペーンにて、サワー系飲料を飲みたくなるのは晴れた暑い日ではないか、といった仮説を立てました。その上で「晴れ」という条件と「特定の気温以上」という条件をAND条件で結ぶことによって、指定されたタイミングのみでDOOH放映されるようにしつつ、一方でABテストとして「雨」のときにも配信してみました。それらを比べた結果、やはり「晴れた暑い日」の方が明らかに購入意欲を底上げすることが分かりました。

テクノロジーを駆使して、その場の環境に合わせてダイナミックにクリエイティブ展開、およびその効果検証が可能になったことで、これまで肌感でしかなかったものを数値としてしっかりと可視化、PDCAを回せるようになっています。OOH広告における「肌感の可視化」はプログラマティックOOHならではの価値ではないでしょうか。

小湾:購入意向の調査も、ドコモデータを使って事後アンケートから集めるのですか。

髙山:はい。大きく分けて二つあります。アスキングとログ検証です。どちらにもドコモデータを使っています。

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アスキングの場合では、ドコモの位置情報などを使ってキャンペーン期間にスクリーン周辺にいた方々を対象にアンケートをプッシュし、回収効率を上げています。

ログ検証は、先ほどの「docomo data square™」というデータクリーンルームを活用して行うので、本当にいろいろな検証が可能です。例えば、DOOH接触者の来店率リフト、アプリのダウンロード率や起動率リフト、さらには休眠復帰への効果なども分かり、これらをターゲットセグメントとそれ以外に分けても見ていけます。例えば某ファッション系クライアントは、店舗を構えながら自社アプリも持っているので、オフライン・オンラインの2軸検証をご一緒しました。どちらも、DOOH広告放映タイミングのタイムスタンプと位置情報などを掛け合わせ、実際に広告接触したであろう方々の端末識別IDを取得、コンバージョンポイント(d払いやdポイント利用による購買やアプリ内の特定行動ログなど)にあるID群と突合します。それらを性年代や商材への関心度など検証したいくくりによってグルーピングの上、行動比較することで、デジタル広告とも遜色ないような粒度でDOOH接触者のリフト検証まで行うことができます。

クッキー規制はDOOHの追い風に? データ活用でより可能性は大きく

小湾:他のプラットフォームやデジタル広告だと、どんどんクッキーが規制されていて、こういったことが見えにくくなってくると思うのですが、DOOHにおいて実際ニーズはありますか。

髙山:ニーズは増えていますね。クッキー規制に関しては、もともとOOHはフィジカルな媒体なのでクッキーという仕組みの影響を受けません。そういった点でも私はOOH全体が着目されていくと考えています。もちろん、クッキーだけでなく段階的にモバイル広告IDも規制されていく流れにあるのでしょうね。ただ、われわれの強みは、やはりドコモのビッグデータを活用できることです。要するにファースト・パーティ・データを活用することができるので、それは当然、独自のIDであり独自の価値です。そういった意味では、ドコモのようなビッグデータの活用によってそうした規制にも対応できると思いますし、確実にニーズは増えていくと思います。

小湾:最後の質問になりますが、今後のDOOHの可能性を教えてください。

髙山:私は、可能性しかないと思っています。OOHは最古のメディアであり、太古の壁画が起源とされている、なんて業界ではよく言われますが、OOH業界以外の方から見ると、ずっと進化が止まっていたように見えているかもしれません。ようやくここ数年でグローバルの潮流を受けながら、TVやデジタルと同じ土俵に上がってのクロスメディア比較など、データを使ってできることがどんどん増えています。

LIVE BOARDでは、これまで蓄積した数百件のノルムと各種データを組み合わせることでDOOH単体での最適出稿レコメンドはもちろん、KPIに応じてTVやYouTubeとDOOHの予算アロケーション・シミュレーターも用意しています。ここにもドコモデータが活用されています。これにより各メディアへの最適な予算配分が可視化されるため、クライアントにとっても痒い所に手が届くようなものになればと思っています。総合広告会社の統合メディアプランニングに組み込まれるような動きも本格化し始めました。自分の思いも加わりますが、OOHは非常に可能性があり、フレキシブルで何より面白いメディアなので、もっともっとこのデジタル業界の方にも知っていただけたら嬉しいです。

小湾:DOOHだけの進化ではなく、ほかのメディアとも寄り添っていく点に可能性を感じますね。
本日はありがとうございました。

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