インハウスでの広告運用の精度を高める施策データベース「CASEful」とは

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アタラ 伴走型インハウス化支援サービス

数少ないスタッフで担当することが多いインハウスでの広告運用では、運用の実績の蓄積が行われていない、属人化によって担当者が退職するとナレッジも実績も引き継がれない、ということが少なくありません。そうした課題を解決するのがマーケティングを効率化する施策データベース「CASEful(ケースフル)」です。今回は、バクリ株式会社の荒川大史さんに、インハウス支援で見えた課題、CASEfulを使った課題解決、そして広告運用業界に必要なCRMについて伺いました。

話し手:
バクリ株式会社
代表取締役
荒川大史さん

聞き手:
アタラ合同会社
CEO 杉原剛

上流から利益を上げる仕組みづくりを提供する“レンタルCMO”

杉原:まず御社についてと荒川さんの自己紹介をお願いします。

荒川:バクリ株式会社と申します。社名は「お客さまの利益を爆発的に上げる仕組みづくりからご一緒します」という趣旨に由来します。設立自体は2022年なのですが、個人事業主として従事していたころから考えると、現在創業3年目というところです。

私自身は広告代理店のセプテーニ出身で、その後、マーケティングや広告運用、制作の会社に約10年いました。現在はバクリでWebコンサルタントをやっています。

杉原:経験としては実行のほうをやっていたのですね。

荒川:はい。実行部分を主に担当しているときは「この案件をやってください」と決まった前提で発注が来ました。しかし、実行以前の戦略が間違っていて、違う方向に走っている案件もあり、その戦略を立てるところからやりたいと思いました。

バクリ 荒川氏

杉原:決まったこと、言われたことを実直に実行しても、戦略立案できないし、やらないし…というところは意外とあるので、すごくよいところにフォーカスをされたなと思いました。

荒川:ありがとうございます。20年の経験があるので、今はその中でためたノウハウでやっています。

Webは同じような商材で差別化しづらいので、大手が資本力で入ってくると、あっという間に利益が出なくなる構造にあります。弊社のメイン顧客は経営者なのですが、Webの戦略を立案し、上流から一緒に利益を上げる仕組みづくりを提供しています。CMOをレンタルするイメージに近いかもしれません。

杉原:実行支援だけでなく、戦略を立てて実行するところまで支援するのですね。

荒川:はい。制作やマーケティングの実行支援だけだと、他社と差別化がしづらいのです。知名度を業界で上げて差別化する方法もありますが、僕らはそこまで知名度がありません。実行支援は勝負領域にせず、Web戦略立案、つまり、CMOの領域(下図の上部に相当)から入って、そこにひも付く範囲で実行も支援(下図の下部に相当)するという方法をとっています。実行支援は、専門的な分野など、場合によってはパートナーに入ってもらってプロジェクトを回すこともあります。

バクリ 事業範囲

大手企業にはCMOがいらっしゃるところもたくさんありますが、雇うと一人年間数千万円の世界です。弊社のターゲットは中小企業や業界の中堅どころの企業なので、CMOを雇うのは簡単ではありません。マーケティングを経営者や広報部長などが兼務しているパターンがほとんどです。

他のこともやりながらだと、Webマーケティングの知見もそれほどなく、回らなくなることが少なくありません。そこで「ここを“レンタルCMO”がお手伝いします」とサービスを提供できるのが弊社の強みであり、そこにひも付く範囲で社内担当としても動く形をとっています。

杉原:あくまでもメインはCMOなのですね。

荒川:はい。“レンタルCMO”として、フロント商材とバックエンドの商材の展開方法やWeb上でのターゲットの土台について提案したり、一緒に販促のロードマップを作ったり、ブランド戦略も構築したりすることもあります。

こうしたマーケティングの戦略を支援する会社は他にもたくさんありますが、月数百万円のコストがかかってしまいます。僕らのターゲットの中小企業さんには難しい金額なので、月20万円、30万円に抑えて、その代わり工数も月2回ぐらいのミーティングに抑えるという形をとっています。

杉原:なるほど。最近多い依頼としては、どのようなものがありますか。

最近は、Web戦略は弊社にお任せいただくものの実行は内製化したい、というニーズが多いです。実行支援でも広告のグロスが大きくなるとマージンも大きくなり、であれば自社で巻き取りたい…。でも、そのノウハウがないので、そこを見てほしい、といったニーズですね。経営者さんなので、金額、粗利に対しての感度というか節約度合いが高いです(笑)。

インハウス支援で出てきた課題とは

杉原:では、インハウス支援の際の課題と「CASEful」の話をお願いします。

荒川:CASEfulは、マーケティングを効率化する施策データベースです。簡単に言うと、コンバージョンレート(以下、CVR)の自社データベースSaaSツールです。実は元々、CASEfulは事例を社内外に公開するツールとして開発されたものでした。実際に今もそのように使われています。このCASEfulをマーケティングの施策のデータベースとして使うことで、ご相談の多いインハウスの支援でこの後述べるような課題を一気に解決できるのではないか。そう思って使い始めたのが、マーケティングのデータベースとしての活用のきっかけでした。

杉原:インハウスでWeb広告運用のアドバイスをしている中で、必要なツールという形で使い道を発見し直したのですね。

CASEful

荒川:はい。インハウスの担当者の人数は少ないことがほとんどなのですが、少ないにもかかわらず情報共有が意外とできていません。また、過去の施策がうろ覚えだったり、前任者から引き継がれていなかったり、といった課題もインハウス支援の中で出てきました。前任者がどの時期にどんなキャンペーンをやっていてCPAはいくらだったか、といった記録が残っていないわけです。

また、十何年も前に僕が代理店にいたときから変わっていないと思うのは、お客さまから「シミュレーションをつくってほしい」と言われて、CPA目標を聞いて、そこから逆算してCVRを提示していることが、実は結構あるのですよね。

他にも、社内の詳しい人に質問して「これってどのぐらいですかね」「CVR0.5%ぐらいじゃない?」と、言われた数値をそのまま提示しているケースもあると思います。明らかに目標値のCPAと乖離していて、これをそのまま出したら受注できないから無理に合わせてシミュレーションを出すこともよくありました。

そこに対して、お客さまから「これは本当に実現可能な数字なのですか」「これはどういう論拠なのですか」と聞かれたときに「過去の実績からです」としか言いようがありません。しかし、過去実績といっても先ほどのように実は詳しい誰かに聞いただけという…。

そういったことも含めて、正しい過去実績から提案するほうが真摯ですし、あとでクレームにもなりにくいです。なので、CPAとかCVRの過去実績が蓄積できるデータベースがほしいな、というところから事例データベースを施策データベースとして使い始めたのが最初のきっかけでした。

そこで、CPAとCVRのデータベースをコアに、そこから芋づる式にどんな商材か、どんなキャンペーンをやっていたか、どんなLPだったか、といった関連する事項を一元管理できるツールとしてCASEfulを使い始めました。

今は、主にインハウス支援のお客さまに社内のCPA、CVRのデータ蓄積のために使っていただいているのですが、意外とこの業界にありそうでないツールだと思っています。

前任者の行ったキャンペーンのCPAやCVRなどの細かい引き継ぎが可能に

杉原:機能面を教えてください。

荒川:機能面は、主に社内向けと社外向けに大きく二つに分けられます。社外向けの機能は、ポートフォリオを管理画面に打ち込んで社外に共有できるというものなのですが、社内向けの機能を利用して、社内の共有サイトのような使い方をされているお客さまのほうが多いです。

機能面としては、商品名とCPA、CVRを登録すると、縦軸と横軸、例えば、とあるAという商品で、昨年同月のCVRが検索でぱっと確認できるようになります。データベースサイトとして活用できるというのが主なメリットです。

杉原:軸は商品軸以外、自由に設定ができるのですか。

荒川:できます。出稿媒体軸でもできますし、配信メニュー、年月、キャンペーン内容など縦横全部変えられます。こちらが管理画面で、事例登録も簡単にできます。

事例登録

他にも、以下のような機能があります。

機能1

機能2

今までは、いつ、どのキャンペーンでCPAとCVRがどれくらいだったか、細かいところまで前任者から引き継ぐことができませんでした。CASEfulがあればそれを見ることができる、というのが一番のポイントです。今までになかったツールで楽になった、と言われます。例えば「前年同月こうだったから、今回のキャンペーンはこれくらいかな」というのを決めやすい。弊社がインハウス支援させていただいているお客さまに主に使っていただいています。

使用例1

杉原:御社のインハウス支援で使っているお客さんは、入力も自分たちで小まめにやっているのですか。

荒川:はい。データが100件、200件を超えれば定着してスムーズにワークします。

杉原:広告代理店の利用もありそうですよね。

荒川:ありますが、広告代理店の中の閉じたお客さまのデータベースとして使われています。お客さまとの共有には、Excelやスプレッドシートが使われることがやはり多いです。

広告代理店さんにもお声をかけてはいるのですが、インハウスのお客さまのほうが割合は多いです。広告代理店さんからは「データのインプットと定着が難しいですよね」と言われます。つまり、広告代理店でも属人化しているということですね。

CRM不足が業界の課題

杉原:みんな、どうしているのでしょうね。属人化している状況が、もう20年ぐらい続いているじゃないですか。

弊社の運用型広告レポート作成支援システム「glu」は、基本はレポーティングツールなのですが、その中に簡易CRM機能があり、いつ何をやったかを手動で登録できるようになっています。それは、このCPAや、いつキーワードを追加した、クリエイティブをこれに変えた、といったシンプルな日報のような機能なのですが、それでも結構重宝されているのですよ。ただ、いろいろな広告代理店さんと話していると、あまりCRMを使いこなしている感じがしません。

アタラ 杉原

荒川:クライアント様のCRMまで意識して徹底している代理店さんは、なかなかないですよね。

杉原:よくやれているなと思ってしまいます。顧客管理とか、そもそもどうしているのだろうと。

荒川:どうなのでしょうね。サイボウズのkintoneを使っていたり、クライアント様の売り上げは別で経理のフォーマットに入れて計上していたり、というのは見ますね。

杉原:そういうレベルですよね。

荒川:はい。それぞれバラバラのフォーマットで、さらにそれが属人化しているようです。

でも広告代理店さんは忙しい中で、さらにCRMもなんとかしろと言われても、なかなかそこまで手が回らないのでしょうね。

ただ「本当はやらなきゃいけないのは分かっている」と皆さんおっしゃっています。でも目の前のタスクに追われてなかなかできない。あとインプットが最初、数がたまって定着するまで時間がかかる。インハウスはそこがクリアできていると私は思っています。経営者の方もそれが財産になるので、社員にもインプットを徹底するよう言いやすいのですよね。インハウスの担当者はだいたい一人、二人ということが多いので、退職してしまうと過去に何をやっていたか分からず、会社として困ってしまうパターンがあります。その退職者のナレッジのリスクヘッジとして導入してくださるところは多いです。

杉原:経営者が、そこをリスクだと考えて導入するのですね。だからこそインハウスだと担当者に「入力し続けてね」という意識づけがしやすいということですか。

荒川:はい。広告代理店さんだと「あったらいいのは分かりますが、実際のところ定着のイメージが持てない」「その膨大な数の事例の入力、自分でやるの?本当にワークするの?」という話になってしまうことが少なくありません。

杉原:そうですね。大手の広告代理店だと、数もやはりきいてくるでしょうから。

過去履歴を見ながら精度の高いインハウス運用が可能に

杉原:何か事例があれば伺えますか。

荒川:事例としては、広告運用の予算が数百万円程度のお客さまが多いです。インハウスで、担当者が一人か二人で他のことも兼務しながら、ある程度数字も細かく見ないといけない…というパターンが多いですね。

杉原:担当者の方は、自分でそういったことをCASEfulで見て、過去の履歴を参照しながらシミュレーションを自分で組み立てられるようになっているのですか。

荒川:例えばの例でお話しさせてください。毎月月初に今月の予算の稟議を上げることになっているお客さまがいらっしゃいます。そのとき必ず媒体間の費用の内訳などについて理由を聞かれるそうです。

CASEfulがない場合には、過去のレポートを掘り返して「Googleで基本は指名検索でCPAが安いので、目標を達成するのに予算を最大限振りましょう」とか「残りの予算のうちYahoo!の一般のキャンペーン予算は○○ですが、過去の昨年同月の実績を掘り返して、おそらく合格圏内のCPAで収まるはずなので、該当の○○キャンペーンにいくらくらい予算を振り分けしましょう」などと決めます。CASEfulを使えば、昨年同月の実績を見て、「今月はこれぐらいの予算とメニューの予算内訳はこれくらいで考えている」というふうに変わってきます。

使用例2

杉原:精度が高くなっているのですね。

荒川:はい。「昨年はこうでした」という論拠もあるので。「昨年はこのキャンペーンでCPAはこれくらいだったので、今年も同じキャンペーンをやりたいです」とか「これは昨年失敗したのでもう今年はやらずにいきます」といったことが言えるようになります。直近の分かりやすい例では「BtoBのお客さまでゴールデンウィークのCVRが、昨年は商標以外のコンバージョンが取れていなかったので、今年は商標以外は停止して運用します。商標もゴールディンウィーク中のCVRから逆算して、このくらいに抑制したいという形になってきました」ということがありました。

最初は寄り添って管理画面を見ながら話し合って進めていたのですが、今ではもう一人でできてしまいます。

杉原:そこまでできるようになると、経営者としても安心するだろうし、その人も自信がついてくるでしょうね。

今後は広告運用に必要なCRMツールの業界デフォルトを目指す

杉原:最後に今後の展望を教えてください。

荒川:まずは目の前の課題解決の目標としては「インプットと定着化」です。

開発者とも常日頃から話しているのですが、やはり「最初に事例を多数インプットしなければならない」という心理的なハードルをどうクリアするか、がある思っています。

杉原:難しいところですね。お金は払うからこういう条件で入れておいてください、とアウトソーシングすることもできますが、そうすると自分の中で定着化しないのですよね。

荒川:そうです。また、CASEfulのようなツールはありそうでないので、業界デフォルトになれればと考えています。

杉原:インハウスにしても、広告代理店にしても、ツールというよりも概念としてのCRMの意識が僕はこの業界の課題だと思っています。

荒川:CRMへの意識は薄いですよね。

杉原:薄い。皆さんおっしゃるとおりで、分かっているけれど大変なんだよと。

そうだけど、それを言ってしまうと始まらないのですよね。忙しいのはもちろん事実としてあるので、入力の効率化を可能な限りはかる必要はあるとは思いますが、顧客案件管理としてのCRMと同じくらい運用の具体的なレイヤーのCRM的なものもやっていかないと業界が変わらないと思います。20年たっても全然変わっていません。

やはり意識づけや根拠をきちんと持つとすごくいいことがあるのに、と思っています。そこを変えていきたいと思って、今回取材させていただきました。絶対必要なツールだと思います。世の中的にもないと思うし、考え方として大事なのではないかと。

荒川:ありがとうございます。

杉原:広告代理店利用もあるかもしれませんが、おっしゃるとおり広告代理店の人が手動で全部データを入れていくイメージがわきません。では今はインハウスメインでいくということですね。

荒川:はい。時代の流れとしても、広告の運用は今後インハウスが主流になると思います。複雑な運用は広告代理店さんにお任せする、というお客さまのお声もありますが、自動化の流れの中でできるところから自社運用をしていくというお客さまは多いです。

そうなった際、コンバージョンとCPAを増やす、CPAを下げてCVRを上げていくためには、キャンペーンやその他の付随する外部要因が大きくなります。そこはCRM的なものがないと、やはり知見がたまっていかないのではないでしょうか。そうしたところで活躍できるのではないかと思っています。

杉原:本日はありがとうございました。

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