アドベリフィケーションの現在と未来:Integral Ad Scienceに聞く

アドベリフィケーションの現在と未来:Integral Ad Scienceに聞く

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『プログラマティック広告最前線』連載の趣旨

デジタル広告が総広告費に占める割合はグローバルでみても年々増加しており、このデジタル広告のデファクトスタンダードとなっているのが、広告在庫の自動売買に対応するプログラマティック広告です。5Gに代表される通信システムの発達やIoTの普及も相まって、テレビや屋外/交通広告(以下OOH)といったデジタル広告に分類されない媒体においても、プログラマティック化が進んでいます。

そこで本連載では、マーケティング先進国の欧米の事例を中心にプログラマティック広告の最前線をお伝えするとともに、最前線の少し先の世界を考察しています。また、日本国内の最新事例についても、キーパーソンとの対談を通して紹介していきます。

第六回では、動画・ディスプレイ広告の第三者配信ツールを提供するInnovidの日本地域ディレクター 渡邉 統一郎さんに、Innovidを活用した動画クリエイティブの最適化はもちろん、特に米国において注目を集めているコネクテッドTVの最前線をお聞きしました。

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今回の話し手:Integral Ad ScienceのLisa Utzschneiderさんと山口武さん

第七回となる今回は、アドベリフィケーション・サービスを提供するIntegral Ad Science(以下IAS)のCEO (最高経営責任者)に2019年1月より着任したLisa Utzschneiderさんと、同社のエバンジェリストの山口武さんに、アドベリフィケーションの現在と未来についてお聞きしました。

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話し手:
Integral Ad Science

CEO Lisa Utzschneiderさん
エバンジェリスト 山口武 さん

聞き手:
アタラ合同会社 高瀬優

 

2009年からアドベリフィケーションに取り組む

 

高瀬:まず初めに、お二人のこれまでの経歴をお聞かせいただけますか。

 

Lisa:デジタル広告業界で20年ほど従事しています。Microsoftで10年、Amazonで6年、Yahooでちょうど3年です。その間、デジタル広告も含めたビジネスの立ち上げはもちろん、セールスとオペレーションの両面でデジタル広告ビジネスの再構築を担当してきました。

 

Yahooでは、Verizonへの売却をメンバーの一人として担当し、少しの休憩期間を経てこの1月にIASのCEOに着任しました。

 

山口:ニューヨークの大学を卒業し、しばらく現地の会社で働いていました。アドベリフィケーションに出会ったのは2012~2014年ころで、アドテック東京で第三者配信と一緒にアドベリフィケーションの概念が紹介されていたのを覚えています。ちょうどそのころ日本に帰国し、IASの日本オフィスの立ち上げメンバーとして2015年から在籍しています。

 

高瀬:ありがとうございます。Lisaさんにお伺いしたいのですが、IASにCEOとして参画された理由を教えてくださいますか?

 

Lisa: いくつか理由がありますが、まずひとつは企業のトップとして会社を経営するということに魅力を感じたことです。実は、IASに入るまではCEOの経験がありませんでした。ふたつめに、私はデータとテクノロジーに対して高い情熱を持っており、IASはまさにその二つをビジネスのコアと位置付けています。加えて、IASのビジネス規模や会社のミッションにはとても共感を覚えました。

 

アドベリフィケーション、特にブランドセーフティやブランド適合性に関しては、現在のデジタルの世界では非常に必要とされていると感じています。そして、ブランドに適合したコンテンツの横に広告を掲載することを重要視するマーケターはますます増えています。また、グローバル企業を経営して、会社の拡大と成長をリードするのはとても興味深い体験です。

 

 

高瀬:ありがとうございます。改めて、事業内容を紹介いただけますか?

 

山口:IASは2009年にニューヨークで設立され、当時はAdSafe Mediaという名前でブランドセーフティのソリューションからスタートしました。その後ビューアビリティ、アドフラウドへと対応を進め、計測から配信ブロック、入札前ターゲティングと対策の幅も広げてきました。業界的にもブランドリスクをゼロイチで判断するのではなくよりブランド適合性を重要視するようになってきたり、ビューアビリティに関してもただ見られただけでなくどれくらいの時間累計して見られたか、それがどうコンバージョンに影響したかという点が重要視されるようになってきました。アドベリフィケーションでマイナスをゼロにするところから、プラスの面にシフトしていったことも受けて、2012年にIntegral Ad Science に社名を変更しました。

 

高瀬:なるほど。AdSafe Mediaという名前で2009年に設立されたとのことですが、米国ではその当時からブランドセーフティやビューアビリティ、アドフラウドに関する議論が活発にされていたのでしょうか?

 

山口:はい、特にブランドセーフティに関してはそうですね。やはりインターネット上に存在するコンテンツは、テレビや雑誌と違ってプロが監修して作っていないものや、規制が行き届かないものが多い。そういったものも含めて効率的に広告在庫を買うことが出来るのがRTBの良さではあると思うのですが、結局ブランドからすればブランドセーフティの観点から出すべきではない枠に広告が出てしまっているという事実に直面するわけです。

そこから不正インプレッションの問題も業界内で認識され始めて、おそらくアドベリフィケーションの議論が海外で活発化してきたのは2011年~2012年頃だと思います。

 

相関性の分析によりROIのスイートスポットを判定

 

高瀬:IASにリブランディングされた背景のひとつとして、広告が見られた時間の長さによる効果といったプラスの面にシフトしていったというお話があったかと思います。まさに御社が昨年ひとつの指標として開発されたタイムインビュー(蓄積閲覧時間)がそれにあたると思うのですが、現在のタイムインビューへの御社の取り組みを教えてください。

 

Lisa:タイムインビューは米国でも用いられていますが、最近では、今年の初めに日本でネスレジャパンと共同でタイムインビューを活用した検証を実施しました。この「オンライン・コンバージョンリフト・スタディ(Online Conversion Lift Study)」は、タイムインビューとフリークエンシー(露出頻度)をROIとの相関性で分析し、ROIのスイートスポット(最適箇所)がどこであるかを判定します。

 

参考リンク

 

オンライン・コンバージョン・リフト分析によって、ネスレはそのキャンペーンのインパクトを最大化することができただけでなく、予算をスマートに配分できるようになりました。ネスレは予算の一部を配分し直して、別のところに投資することもできるようになったのです。オンライン・コンバージョン・リフトはネスレのほか、JALやソニーといった企業にも利用いただいています。

 

高瀬:なるほど。これらの広告主は、具体的にはタイムインビューをどのように活用されているのでしょうか?

 

Lisa:タイムインビューの目的は、時間の好機を特定することです。例えば、ネスレが15秒の動画広告を配信しているとして、その動画の中でもエンゲージメントのレベルやROIが最も高いタイムインビューを判定します。それは最初の3秒間かもしれませんし、あるいは最初の5秒間かもしれません。動画広告だけでなく、バナー広告でも活用されています。

 

広告のデジタルシフトにより高まるブランドセーフティのニーズ

 

高瀬:御社のサービスを利用されている広告主の特徴を、米国、日本それぞれでお伺いできますでしょうか?

 

山口:米国だと、ブランディング重視はもちろんのこと、パフォーマンス重視の広告主にもかなり使っていただいています。グローバル企業で、広告予算でいうとそれこそトップ100社とされている広告主の中で90社が、われわれのテクノロジーをすでに導入されている状況ですので、競合他社も含めるとトップ企業はほとんどアドベリフィケーションツールを使っているイメージが強いと思います。

 

日本に関しては、グローバル企業が他の国で弊社サービスを利用していて、本社がイニシアチブを取って日本でも利用することになるケースがほとんどでした。一方で、ここ1年、2年で日本国内のブランドによる利用が徐々に出てきています。

 

背景としては、日本国内のブランドによるデジタル広告への投資が本格化するなかで、これまで投資していたテレビや雑誌といったトラディショナルなメディアと同等のブランドセーフティをデジタルの世界でも担保したいという意図があると思います。

 

高瀬:確かに、これまで一定の品質が担保されているトラディショナルなメディア中心に投資してきたブランドからすると、デジタル広告へシフトしていく中でブランドセーフティを重視することは自然な流れですよね。

 

山口:そうですね。そもそも、そういったブランドの広告主は、安く多くという観点で広告は買われていないと思います。例えばテレビでも、ゴールデンタイムの番組の広告枠を買うのか、ケーブルテレビの深夜番組枠を買うかであれば後者のほうが絶対安いですけど、そういった買い方はされていないので、パフォーマンス重視でデジタル広告へ投資してきた広告主と視点が違うかと。

 

クリックでは計り知れない効果を見ている広告主のほうが多かったりもするので、そういった意味だと既存のCPC、CPMの指標だけで、できるだけ安く多くという買い方に対して疑問を持たれている広告主は、ブランド広告主のほうが多いのかなとは思います。

 

高瀬: Lisaさんは、アドベリフィケーションの観点から、日本市場についてどのように見ていますか?

 

Lisa:日本の市場で特に重要視されているのがブランドセーフティやブランド適合性です。同時に、ビューアビリティやアドフラウドに対しても関心が高まっていると感じています。

 

アメリカやイギリスなどと違い、日本市場ではパフォーマンスベースのマーケティングが特に重要視されています。ROIへの関心が高く、CPCといったパフォーマンス指標に重きが置かれています。デジタル広告におけるプログラマティック広告比率の高まりともに、独立した第三者による計測の必要性も認識され始めてきています。ブランドセーフティ、ビューアビリティ、アドフラウドといったデジタル広告の課題はこれまでになく高い関心を集めていますが、具体的な事例などを通じてさらに業界全体にデジタル広告の課題やアドベリフィケーションの重要性を啓発していく必要があると考えています。

 

パフォーマンス偏重におけるビューアビリティの立ち位置

 

高瀬:ブランドセーフティに関しては日本国内のブランドにおいても関心が高まっているというお話がありましたが、ビューアビリティに関してはいかがでしょうか?プログラマティック広告が普及している米国のほうが圧倒的にニーズがあると思うのですが、実際のところどうでしょう?

 

山口:実際そうですね。文化の違いというよりは、マーケットが何をベースにして作られているのかという話になると思います。先ほどブランド広告主だとCPCやCPMだとちょっと合わないよねという話をしましたが、日本国内で一番重要視されている、圧倒的な数のキャンペーンが基準としているものってCPCだと思うんですね。

 

そうなってくると、結局ビューされていなくてもクリックされていればいい、見られていない広告はクリックされていないので課金対象とならないため、ビューアビリティは気にしなくていいのではないかという考え方は存在しています。

 

Lisa:日本のマーケターは引き続きブランドセーフティを最も重視するでしょう。と同時に、CPAやCPCに偏重したKPIでデジタルキャンペーンの成功を測るのではなく、ブランド認知やブランドエンゲージメントの向上といった、よりキャンペーンの成功の本質を測るKPIにシフトする必要があります。

 

IASと緊密に連携し、オンライン・コンバージョン・リフトなどの指標を活用しているマーケターは、正しくキャンーペーンを評価するためには透明性が必要だということを理解しています。IASのソリューションを使うことでキャンペーンの成果を公平に評価できるデータを手に入れることができる、つまりキャンペーンの成功により近づくということを意味します。

 

山口:あとは、どちらかというと問題が起こった際の対策としてアドベリフィケーションに踏み込むお客さまが日本はまだまだ多いです。海外では、アドベリフィケーションツールを使って、もっと売上を上げていくにはどうするのか、もっとROIをプラスにしていくには、ブランド認知度を上げていくにはどのようにこのデータを使っていくのかという考え方にシフトされているお客さまが多いので、日本でもこういった使われ方が普及すれば、さらにビューアビリティの認知度は高まっていくと考えています。

 

高瀬:先ほど、日本国内のブランドが広告予算のデジタルシフトを進めていく中で、アドベリフィケーションのニーズも徐々に高まってきているというお話がありました。そうなっていくと、徐々に日本でもそういったブランド広告主を中心にビューアビリティが重要視されていくのではと思ったのですが、いかがですか?

 

山口:もしかすると御社のほうが詳しい分野になってくると思うのですが、パフォーマンス重視の広告運用の現場と、全体のマーケティングを考える広告主、ブランドチームの方の間って、結構距離があると思います。

 

高瀬:ありますね。

 

山口:通常、アドテクの新しい技術はデジタル専門の方の理解や導入が早い傾向にありますが、アドベリフィケーションは逆で、トラディショナルなメディアに広告予算を投下した経験のある方の理解が早かったりします。例えば包括的にマーケティングを見ているCMOの方は、広告が実際見られていない、ブランド毀損するような面に広告が出ている、不正インプレッションが発生しているといったことは言語道断という考え方が多いです。

 

逆に、デジタル専門の方に話をすると、でもそれってCPCの帳尻合うんですかという話で終わってしまうケースがあります。やはり担当の方のKPIもあると思うので、与えられた広告予算の中でいかに多くのコンバージョンを獲得していくかという現場の運用まで落とし込むことは現状難しいですね。

 

高瀬:いまの話を聞いて、ブランディングとパフォーマンスのチームの距離感を縮めることができれば、ビューアビリティも広告運用のひとつの指標として落とし込まれていってニーズが増えるかもしれないと感じました。

 

 

山口:なかなか難しいですね。良い例で言うと、弊社のクライアントに某大手化粧品会社さまがいるのですが、各ブランドを横串で見ている担当者からブランドセーフティの実現とビューアビリティの向上を図っていきたいというご相談をいただきました。

 

ただし、ブランド毎に予算を持っているのって、各ブランドのマーケターの方たちからすると、予算の一部をブランドセーフティやビューアビリティに投下することで全体のパフォーマンスが下がってしまうのは元も子もない。彼らにとっては日々のパフォーマンスや各々が達成すべきゴールがあるので、そこをご理解いただくフェーズというのはやっぱりあったりはします。

 

アドベリフィケーションを軸にKPIを組み立てなおす

 

高瀬:なるほど。例えば米国だとそういった課題はどのように解決されているのでしょうか?

 

山口:そもそも米国だと、もう2009年頃ですかね、デジタル広告はネット上の8%か10%ぐらいの限られた人にしかクリックされていないといった記事が出ていたり、ブランド広告主が例えば高速道路の垂れ看板に車が何台衝突したかなんて気にしないのと同様にクリックは気にしません、といった発言をされていたり、そのレベルでもうクリックを使うお客さま自体がほとんどいらっしゃらないので、日本のようなケースはあまりないですね。マーケットの通貨自体がクリックではないので、それが落ちようがどうしようがどうでもいいというか、そもそも見ていないというケースが多かったりします。

 

高瀬:日本と米国の大きな違いですね。

 

山口:日本国内で以前弊社がお手伝いさせていただいたお客さまで、弊社の計測の結果インプレッションの2割を不正インプレッションが占めていることが分かりました。CPCを安く抑えるかたちで最適化を進めた結果、不正インプレッションが増えてしまったケースですね。

 

結局クリック詐欺などをしている人たちはそういった仕組みを逆手にとって、どんどん安いクリックを売ります。代わりに不正インプレッションを紛れ込ませているので、不正インプレッションを排除した結果クリック率が低下してCPCが高騰してしまい、お客様も最初は疑問を持たれました。しかしながら、コンバージョン率が上昇したため、最終的にはご納得いただけました。

 

高瀬:CPCは上がるけれどもコンバージョン率が上昇し、結果的にCPAが下がるという理想的な例ですね。

 

山口:はい。そのお客様の場合、お金が発生する実際の人間でないとできないコンバージョンだったことが幸いしたのですが、資料請求やお申し込みはbotでも偽装できてしまうので、偽装分のコンバージョンが減るというケースもあるにはあります。

 

弊社のタグをコンバージョンポイントに設定いただくことで、タイムインビューとフリークエンシーがコンバージョン獲得に寄与したかを計測することが可能です。実はグローバルで見てもこのようにコンバージョンまで追っていくケースは日本での導入が多いです。ビューアビリティとコンバージョンの相関性を示すことで、それであればクリックからビューアビリティにシフトしていこうというお客様も日本の方が多いです。

 

逆に米国では、そもそもビューアビリティを上げることが目的で、vCPMにかじを切っているので、コンバージョンまでの分析は要らないというケースが多かったりします。

 

高瀬:良い意味でも悪い意味でも、あらためて日本市場がパフォーマンス偏重であることを感じますね。

 

山口:そうなんです。非常にセンシティブに指標を見られて、あまりふわっとした概念に踊らされないマーケターの方が日本は多いと思うんですよね。ビューアビリティが上がることは概念的に良いことであるのは分かるけれども、実際のパフォーマンスにどう落とし込むのかというところまで皆さん本当にシビアに見られるので、そこを証明するニーズはあるとは思います。

 

高瀬:ある意味新しいKPIを開発していくきっかけにもなりますよね。

 

山口:おっしゃる通りで、現状弊社のソリューションをお使いいただいていて、代理店のチームの方ともすごく密にお付き合いさせていただいている広告主さまの中には、アドベリフィケーションを軸にしたKPIの組み立て方というところで一から考え直されているケースが多かったりします。

 

高瀬:それによって実施できる施策の幅もかなり広がっていきますね。

 

山口:おっしゃる通りです。ただその分一つ一つのケアに時間が掛かったりはするので、啓蒙しながらお客さまとキャンペーンを成功に導いていくっていうのはまだまだそういった地道な作業、地道な啓蒙が必要なフェーズにいるのかなっていうところを実感しています。

 

ブランドセーフティ重視によりビューアビリティは減少傾向

 

高瀬:先日公開された御社のメディアクオリティレポート2019の内容に関してご質問させていただければと思います。まず全体感として、2019年の上半期から見えたトレンドがあれば教えていただきたいです。

 

参考:

 

山口:残念ではあるのですが、日本においてビューアビリティが大幅に落ちています。グローバルで見ても日本のビューアビリティが最も低いということに加えて、2018年の上半期と比べて唯一下がっている国も日本であることが非常に残念ですね。ほかの国は徐々に上がってきているのですが、日本だけが下がっています。

 

 

その問題の裏側にあるのがブランドセーフティです。2018年上半期のブランドリスク(ブランドイメージ低下やブランド毀損に繋がるページコンテンツで発生するインプレッション)が5.5%であるのに対して、2019年の上半期は2.9%と、リスク対象となりうるインプレッション数が約半分になっており非常に良い傾向です。これはブランドセーフティの問題がフォーカスされる中で、広告主や代理店がブラックリストやホワイトリストといった対策を実施してきた結果でもあります。

 

しかしながら、ブラックリストやホワイトリストを適用した後もこれまでと同じ予算や入札単価で広告運用をされていたため、単純に安価なCPCやCPMで一定のビューアビリティを担保できる広告在庫が減り、ビューアビリティの低い広告在庫への配信が加速していったのです。

 

あとは不正インプレッションの影響もあると考えています。ホワイトリストで配信先のドメイン数を1,500だったり1,200に絞ってるお客さまでも、不正インプレッションによって何万ものドメインに広告が配信されてしまったりするので、そういった安いインプレッションを無理やり限られた在庫の中で買おうとした結果、不正インプレッションが増えてビューアビリティが下がるという結果になっていると思います。

 

高瀬:なるほど。ブランドセーフティへの対応と同時に日々追っているKPIに対してCPCやCPMを調整することで、結果的にビューアブルではない質の低い在庫を意図しないかたちで買ってしまうのは皮肉ですね。

 

山口:皮肉ですね。特にブランディング重視の広告主にとっては、そもそもブランド毀損もネガティブですが、ビューアビリティが下がることも、10%下がったら10%分、ブランディング予算が無駄になってしまっているので、それはもう本当、元も子もない話なので、そこも含めて直していきましょうという話はさせていただいてます。

 

高瀬:今のお話をお伺いして、改めて先ほどのKPIを開発していく必要性に行き着いていくのかなと感じました。

 

山口:行き着いてく感じにはなります。

 

OTTやコネクテッドTV、コンテキスト・ターゲティングへ注力

 

高瀬:グローバルでは、今後どういった分野にフォーカスしていく予定ですか?

 

Lisa:アドベリフィケーションの核となるソリューションには引き続き投資をしていきます。同時に、私たちはOTTやコネクテッドTV(以下CTV)に注目しています。アメリカでは約1億世帯がOTTやCTVでコンテンツを視聴していると言われていて、急成長しています。当然、消費者とつながりたい広告主の注目もOTT・CTVに向いています。IASはVerizon Mediaと共同で、複数の動画パブリッシャーとともにOTT・CTVでの動画広告の視聴完了を測るソリューションのベータを公開しました。徐々にベータの対象を拡大し、来年の第一四半期には正式ローンチを予定しています。

 

高瀬:米国のマーケターは、CTVにおけるアドフラウドやビューアビリティを問題視しているのでしょうか?

 

Lisa:現時点ではOTTやCTV上のフラウドは少ないですが、今後これらのプラットフォームでプログラマティック広告の在庫が拡大すればフラウドも増える懸念があります。

 

高瀬:プライバシー、個人情報に関する懸念も拡大しており、デジタル業界のエコシステムも転換期を迎えています。デジタル業界全体はどう変化していくべきか、課題はどこにあると考えていますか?

 

Lisa:GDPRやCCPAといった新たなルールは、デジタルエコシステムに参加するプレイヤーがどうデータを扱うかに影響を及ぼしています。IASは消費者のデータは収集しておらず、メディア品質に関するデータを扱っているため、直接にはGDPRなどの影響は他のプレイヤーほどは受けていません。

 

FacebookやGoogleといった巨大プラットフォームはデジタル広告予算の約90%を占めていますが、Amazonといったプレイヤーもエコシステムに食い込んでおり、競争原理が働いています。ユーザーデータや個人情報に関する規制に関してはさらに強化されると見ています。

 

OTT/CTVは爆発的に成長するでしょう。OTT/CTVでコンテンツを視聴する消費者が増え、マーケターが投じる広告予算も増えると考えています。

 

高瀬:プライバシーの問題とともに、コンテキスト・ターゲティングが再び注目を集めています。IASではこれらの分野に関してどのような取り組みをしていますか?

 

Lisa:ちょうど今朝、「Cookie-freeな世界では、アドベリフィケーションベンダーのニーズが高まる」という記事を読みました。全くその通りだと思いますし、IASはコンテキスト・ターゲティングの分野にも積極的な投資を検討しています。ここではまだ発表できないことも含めいろいろと計画を進めていますので、ぜひ注目していてください。

 

山口:今は少しでも問題のあるものを排除していくというところにフォーカスされがちですが、ポジティブなコンテンツに広告を出していくというところにも力を入れていくことになると思います。プロの作ったコンテンツを持っているメディアがデジタルで儲かる世界が米国ではすでに始まっていますし、欧州でもメディアのコンソーシアムも出てきてはいるので、日本も当然そちらの方向に向かっていくとは思います。

 

ネガティブな部分に対してお金を払うというのは皆さんあまりいい気持ちではないと思うので、対策だけのアドベリフィケーションというのは今後あまり未来がないかなとは思います。データを使ってより良い広告の配信をしましょう、より良いコンテンツを提供しているメディアに予算をシフトしていきましょうという世界観がおそらく一番健全であり、アドベリフィケーションの正当な使い方だと思うので、対策だけというのはもう本当あまり先は長くないのかなとは思います。

 

高瀬:ありがとうございます。最後に、Lisaさんから日本のマーケターに向けてメッセージをお願いします。

 

Lisa: IASは日本市場に非常にコミットしています。日本のブランドやマーケターがデジタルキャンペーンを成功させるサポートを積極的にしていきたいと願っていますし、事例や調査などを通じて具体的にどのように私たちのソリューションがお役に立てるかを示していく必要があると考えています。ぜひIASを活用し、キャンペーンの効率化と成果の最大化を実現してください。

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