アドベリフィケーション最前線:プログラマティック広告最前線 第四回 CHEQ JAPANに聞く

アドベリフィケーション最前線:プログラマティック広告最前線 第四回 CHEQ JAPANに聞く

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『プログラマティック広告最前線』連載の趣旨

デジタル広告が総広告費に占める割合はグローバルでみても年々増加しており、このデジタル広告のデファクトスタンダードとなっているのが、広告在庫の自動売買に対応するプログラマティック広告です。5Gに代表される通信システムの発達やIoTの普及も相まって、テレビや屋外/交通広告(以下OOH)といったデジタル広告に分類されない媒体においても、プログラマティック化が進んでいます。

そこで本連載では、マーケティング先進国の欧米の事例を中心にプログラマティック広告の最前線をお伝えするとともに、最前線の少し先の世界を考察しています。また、日本国内の最新事例についても、キーパーソンとの対談を通して紹介していきます。

第三回では、日本経済新聞社の大塚栄一さん、國友康弘さんに、パブリッシャーとしてのプログラマティック広告に対する最新の取り組みとデータ活用を起点とした今後の事業構想をお聞きしました。

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今回の話し手:CHEQ JAPAN株式会社の犬塚洋二さん

第四回となる今回は、「リアルタイムアドセーフティ」を標榜し、広告主にとって相応しくない広告表示の「事後検知」ではなく「未然制御」に主軸を置いたサービスを提供するCHEQ JAPAN株式会社のカントリーマネージャー 犬塚洋二さんに、アドベリフィケーションの最前線といっても過言ではないリアルタイムアドセーフティについてお聞きしました!

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話し手:
CHEQ JAPAN株式会社
カントリーマネージャー 犬塚洋二さん

聞き手:
アタラ合同会社 高瀬優

 

軍事技術をベースにリアルタイムアドセーフティを実現

高瀬:プロフィールのご紹介をお願いします。

 

犬塚:デジタル広告業界は2000年から従事しており、ポータルサイトを運営しているエキサイトの広告営業でキャリアをスタートしました。その後、2011年に当時のグラムメディア・ジャパン(現モードメディア・ジャパン)に参画し、広告営業チームのマネジメントをやらせていただきました。主にブランディング目的のインターネット広告を販売していました。CHEQ JAPANには2018年5月から参画し、アドベリフィケーション事業に従事するのはこれが初めてです。

 

高瀬:元々媒体社にいらっしゃったとのことですが、その頃から広告の透明性や安全性というものに興味をお持ちだったんですか?

 

犬塚:そうでうすね、媒体社にいた頃もいわゆるレスポンス広告ではなくブランディング広告を主に販売しており、デジタルでブランディングをしたいという想いを持っていました。CHEQは、人間の目視チェック等をはるかに超えたクオリティでブランドセーフを実現する非常に優れたテクノロジーだったので、興味を持ち参画しました。

 

高瀬:具体的にはどういったサービスやプロダクトを提供されているのでしょうか。

 

犬塚:いわゆるアドベリフィケーションというサービスはすでに世の中にいくつかありますが、これらは基本的にレポーティングにフォーカスを当てています。

 

例えば、とあるブランドのバナー広告がブランド毀損になるような事件や事故のニュースページに表示されてしまったり、広告のクリックを水増しするといったアドフラウドの被害にあった場合、従来のアドベリフィケーションサービスは、これらの広告表示やクリックが全体の何パーセントを占めているかレポーティングすることが中心です。

 

我々はレポーティングすることにとどまらず、リアルタイムアドセーフティと言っていますが、ブランド毀損を引き起こすいわゆるバッドプレイスメントをシステムが検知し、バナー広告がそこに表示されることを回避できます。

 

 

高瀬:軍事技術をベースにしているとのことですが、具体的にはどういった技術を使っているのでしょうか。

 

犬塚:おおまかにいうと、AIとNLP(自然言語処理)の技術でリアルタイムアドセーフティを実現しています。軍事という観点では、CHEQのファウンダーやCTOがイスラエル軍の情報部門出身で、実際に国防のサイバーセキュリティを担ってきた人たちです。

 

イスラエルはその周辺を敵国で囲まれており、古くから敵国の情報をしっかりと分析することで攻撃される前にそのリスクを潰すということを国家レベルで行っています。従来はヒューマンリソースによる監視・情報分析が主流でしたが、それらをAIで24時間四六時中スキャンし続けるというような分析の仕組みに投資をしてきた国家です。こういった技術をCHEQは活用しています。

 

簡単にいうと、人の脳が理解するようなかたちで情報源を分析し、それが文章であればその文章が何を意味しているかAIが理解して、コンテンツがネガティブかポジティブかを判定します。

 

フラウドも高度なものが多く、実際今までのテクノロジーだと優秀なロボットほど見逃しがちな状態になっていました。CHEQはロボットにしか見えないピクセルを置いていて、クリックをさせてロボットかどうかを判別するトラップのようなものを仕掛けることで、より正確に詐欺や悪意のあるようなものを検知してブロックしてしまうことを得意としている会社です。

 

高瀬:判断する要素として文章を挙げられていますが、それ以外に見ている要素はありますか?

 

犬塚:現状ではフラウドのチェック項目を700以上のパラメーターで見ており、アドリクエストが上がったときに本当に人間かどうかを非常に複雑なかたちでスキャンして判定します。

 

人間だと分かったら、コンテンツがネガティブかポジティブかをテキストだけでなく画像も含め総合的にAIがスキャンします。ページのソースコードにおかしなコードが含まれていないかも同時にチェックしています。

 

タグベースで広告表示をブロック

高瀬:広告主が御社のプロダクトを使ってリアルタイムアドセーフティを実現する場合の具体的な導入フローを教えてください。

 

犬塚:大まかには2つありますが、広告主に使っていただく場合、基本的には我々が発行するスキャンコードを走らせるためのタグをバナー広告の中に入れていただき、その広告を配信していただければCHEQが自動的に危険なページへの広告表示をブロックするという仕組みです。

 

高瀬:その際は配信先の媒体社サイトへの御社のタグ設置は不要なのでしょうか。

 

犬塚:はい。一方で、昨年8月に株式会社サイバー・コミュニケーションズ(以下CCI)様とパートナーシップを組ませていただいて、媒体社様のページへのタグ設置を進めております。こちらはタグがページにいることでより深いスキャンを四六時中行いますので、より完全なかたちでリアルタイムアドセーフティを実現できます。

参考:

必ずしも媒体社様のページにタグを設置できるわけではないので、それをカバーするために広告主様の広告にタグを入れることで、広告配信の中でタグを発火させるようなやり方を組み合わせている、ということですね。

 

高瀬:広告素材側のタグでもリアルタイムアドセーフティは実現できるのですか?

 

犬塚:はい、同様ですね。

 

高瀬:なるほど。媒体社のページにタグがあるケースは分かるのですが、媒体社のページにタグがなく広告主の広告のみにタグを入れてリアルタイムアドセーフティを実現できるというのがあまりイメージできないですね。

 

犬塚:例えばビデオプログラマティックといわれる広告の仕組みでいいますと、ビデオプレーヤーが動画広告の表示を仲介しています。動画広告に設定されたCHEQのタグが、該当のページへの広告配信をNGと判定した場合、ビデオプレーヤーにエラーコードを返すことができるので、そもそも広告オークションへの入札から回避できます。エラーコードを受け取ったビデオプレーヤーは別のデマンドをリクエストします。

 

GDN向けのプロダクトも提供していますが、ビデオプログラマティックと異なりビデオプレーヤーのような仲介物がないため、オークションへの入札自体は回避できず、代替え広告を配信する仕組みです。これは媒体社様のページにタグがないことによる限界ですが、CHEQの高度なAIでのスキャン効果は同様ですので高精度なフラウドブロックとネガティブコンテンツブロックが実現できます。
※代替え広告を配信するため、CHEQの3PAS(第三者配信)での設定が必須となります

高瀬:メディアとしての価値を高めたいという理由から媒体社側で御社のタグを設置するというケースもあるかと思いますが、広告主と媒体社だといまはどちらの利用が多いでしょうか?

 

犬塚:現状のブランドセーフティやフラウドブロックは広告主様のニーズの方が高いと私は感じています。

 

高瀬:広告主がCHEQを使ってより完全なかたちでリアルタイムアドセーフティを実現するために、媒体社側にもタグを設置するケースが出てくるかと思います。この場合、広告主から媒体社に、媒体社の特定のページにタグを設置するようプッシュするかたちを取るのでしょうか?

 

犬塚:そのような動きもあり得ると思います。現在CHEQのタグを設置していただいている媒体社様は50社程で、これらの媒体に関してはCCI様がご用意しているPMPで広告配信が既に可能になっています。

 

1インプレッション毎にコンテンツを判定

高瀬:競合するアドベリフィケーションベンダーも数多くあると思いますが、他社との差別化ポイントをお伺いできますでしょうか。

 

犬塚:フラウドの話とコンテンツを理解するというところに絞ってお話させていただきます。

 

まずフラウドについては、すごくおおまかにいいますと、他社さんのシステムではIPアドレスとユーザーエージェントの二つの項目をスキャンします。そして、過去にフラウドとして認定したIPアドレスとユーザーエージェントの情報を蓄積したデータベースを参照し、そのデータベースにリストアップされているものはブロックするという仕組みです。これをデータベース参照型といいます。

 

このデータベース参照型の場合、過去にフラウドとしてリストアップできなかった悪い意味で優秀なフラウドはブロックの対象となりませんし、フラウドの多くは常に形態を変化させますので、一度フラウド判定をしたデータを利用し続けるには限界があります。CHEQの技術は様々なトラップ、例えばロボットにしか見えないピクセルを置いていて、クリックをさせてロボットがどうかを判別するようなリアルタイムの制御を行うことによって、データベースにリストアップされていないフラウドも含めて非常に正確にブロックすることができます。

 

ブランドセーフティに関しては、既存のサービスのほとんどはNGワードを事前にキーワードとして登録し、それがないかどうかを見るものやブランドリスクのありそうな媒体やカテゴリーを丸ごとブロックする、というのが基本的な仕組みです。CHEQはAIが一瞬でコンテンツのネガティブ・ポジティブを’1インプレッション’ごとに判定することができます。これはまさにコンテンツとしてブロックしているものがリアルタイムでレポートされるダッシュボードになります。

 

 

高瀬:クライアントが見ることができるダッシュボードですか?

 

犬塚:そうですね。1インプレッションごとにスキャンし、そのデータが残りますので裏側でどのようなコンテンツがブロックされているかをご理解いただけます。このソリューション側の判定結果をしっかりと広告主様、代理店様側で確認できる、という部分もCHEQの技術の革新的な部分です。

 

高瀬:ブランドセーフティの観点では、いわゆる公序良俗に反する一般的にNGなカテゴリのページがあるかと思いますが、広告主によってはそのNGの範囲も異なってくると思います。この範囲をある程度カスタマイズすることは可能でしょうか。

 

犬塚:公序良俗に反するものは全部ブロックできるようになっていますが、例えば男性化粧品を売られる場合、アダルトコンテンツも広告の配信対象として入れておいた方が良い場合があったりします。

 

このニーズに応えるために、今後はAIの判定基準を個別にカスタマイズできるようなチューニングをシステムに加えていく予定です。これにより広告主のニーズに合わせた緻密なチューニングが可能になります。

 

また、さらにその先のお話ですが、AIによって正確にコンテンツの持つ文脈や意味を理解する、という技術を利用して、例えばポジティブな気持ちになれる記事だけを判別して広告配信できるようにする、というようなエモーショナルターゲティングの仕組みも準備中です。

 

配信先のホワイトリストが不要に

高瀬:従来のアドベリフィケーションツールはレポーティングの役割が主流で、キーワードベースでNGコンテンツへの広告配信をブロックすることもあり、広告主によってはツールだけでは事足りないケースもあるようです。この場合、広告主自身が配信先のブラックリストではなくホワイトリストを作成するのですが、今までのお話を聞いていると御社のこのツールを使えばホワイトリストの作成やメンテナンスが不要になるのではないかと思いました。

 

犬塚:おっしゃる通りです。ホワイトリストやブラックリストは、リスクの強弱を経験や人の目によるチェックでリスト化、運用するという考え方ですが、CHEQの技術はそれらの判定をAIが1インプレッションごとに自動でスキャンし、安全なものだけに広告配信をする、ということを可能にしますので、媒体社ごとのリスト管理という概念が不要になります。

 

高瀬:そうですよね。プログラマティック広告では日々配信先も変わってくるので、一度作成したホワイトリストを定期的かつ人的にメンテナンスを実施している広告主もいらっしゃって、膨大なコストがかかっているなぁと思ったのですが、御社のツールがすべて解決してくれるなぁと。

 

犬塚:はい、ですので極端にいうとCHEQを使うとブラックリストとして管理されている媒体様にも普通に広告を配信することができます。例えば、ネガティブな書き込みが多い掲示板があった場合でも、その1ページごとにAIがチェックしますのでその中で良い書き込みのページがある場合、配信対象にできます。逆にホワイトリストにした媒体のコンテンツでもコンテンツ単位でチェックするとネガティブな記事なども当然含まれます。現状のホワイトリスト対応ではこのリスクは回避できない、というのもポイントです。

 

高瀬:GoogleやFacebookといった大手プラットフォーマーも、最近ではアドベリフィケーションベンダーとパートナーシップを組んでブランドセーフティの実現やアドフラウド対策を進めています。御社としては、大手プラットフォーマーとのパートナーシップを組むというお考えはあるのでしょうか。

 

犬塚:はい。非常に重要なプロジェクトと位置づけています。

 

コンテンツ分析の技術をターゲティングに活用

高瀬:昨今のアドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティに対する注目も相まって、プレミアムインベントリを見直す動きが一時期あったと記憶しています。一方で、比較的安価なCPMで購入できるオープンオークションの広告枠もある程度対策をしてきており、質と価格のバランスでみた時にやはりオープンオークションだという議論もされています。犬塚さんは媒体社とパートナーシップを組むことでプレミアムインベントリの創出に関わっている立場だと思いますが、どうお考えでしょうか。

犬塚:「広告価値」をどこに置くか、という部分の整理が重要ですが、CCIさんのPMP 2.0という商品が実はCHEQの機能をつんだ一番ハイエンドなPMPの在庫で、最高水準のフラウドブロック、コンテンツ分析を通して、消費者の態度変容やクリック反応率など、重要なパフォーマンスをしっかり担保することができています。PMPという優良媒体リストをさらにAIによる分析を付加することで最高水準の配信面に仕上げる取り組みは多くの広告主様にとって有益な動きだと思います。

 

高瀬:ブランディングなど総合的な評価指標で活用することで、PMPの本当の価値がより伝わっていきそうですね。最後に、今後の展望をお伺いできますでしょうか。とはいったものの、御社のリアルタイムアドセーフティがもはや完成形のような気がしているので、別の角度で今後力を入れていくことなどありますでしょうか。

 

犬塚:現在のスコープでいうと、広告主様が全てのプラットフォーム、媒体でCHEQの機能をご利用いただけるようにタグの設置やインテグレーションを通して連携を拡大していく、といったことが今後の展望となります。

 

そして、その先ですが、広告とコンテンツと読者という関係性をコンテンツ分析の技術によってデジタル上でより正確に分析し、文脈や読者のインサイトを理解したうえでのターゲティングの仕組みを実現していきます。クッキーの将来性についての議論もある中、このコンテンツ把握の仕組みの活用にも大きな期待をしています。

 

また、ブランドセーフティのような考え方を適用できる広告領域も広げられるかもしれませんし、著作権管理やアドクラッターの問題など、解決しなければならない課題はたくさんあると思います。これらをCHEQの技術で解決し、広告主や媒体社様が100%コントロールできる領域になるというところに向かうのではないかと思っています。

 

高瀬:ブランドセーフティやアドフラウドに限らず、デジタル広告のエコシステム全体を通してユーザー体験を向上させていくことを目指しているんですね。特にターゲティングのお話は、ITPやGDPRの影響でまさにコンテキストベースが注目されている現状にマッチしていると感じました。本日はどうもありがとうございました!

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