2016年5月版Google AdWords(Google 広告)新機能発表と、その詳細解説

2016年5月版Google AdWords(Google広告)新機能発表と、その詳細解説

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春のアドワーズ新機能発表

例年行われているアドワーズのメジャーアップデートの2016年版が、2016年5月24日(日本時間で5月25日未明)に発表されました。既にオフィシャルブログでもハイライトが公開されていますので、ご覧ください。

リンク:Inside AdWords: Ads and analytics innovations for a mobile-first world


YouTubeでも発表の様子を見ることができます

昨年の発表(参考:2015年5月版アドワーズ新機能発表と、その詳細解説)でも感じましたが、特定の何かの機能が打ち出される背景には、ユーザーの情報行動や、メディアが置かれている環境の劇的な変化があり、その変化の中心がモバイルである、ということが明確に打ち出されています。

モバイルが中心の世界において、広告はどうあるべきか

サミットの最初のプレゼンテーションで、広告とコマースのトップである Sridhar Ramaswamy が強調したのは、「モバイルが中心となる世界」についての確認でした。Sridhar は自身の発表のほぼすべてを(1時間の発表全体の実に2割の時間)を、モバイルの重要性の説明に費やしています。

gps-sridher

例えば、Googleは年間に数兆回の検索クエリ(ダニー・サリバンは2兆回程度ではないかと予測しています)を処理しており、今やその半分はモバイルから発生し、今後もデスクトップPCとの差は広がっていくだろうと予測しています。

他にも、自動車広告(Automotive Ads:参考記事はこちら)を活用した北米トヨタの事例では、自動車製品の画像検索が前年比で37%増加しており、その検索の80%はモバイルから発生しているなど、モバイルによる情報行動の変化の例は枚挙にいとまがありません。

gps-toyota

人々の生活に深く浸透し、情報行動そのものを変えてきているモバイルは、あらゆる「知りたい」「欲しい」という瞬間(マイクロモーメント)に最も近いデバイスだと思います。矢継ぎ早に発表される Google の広告プロダクト新機能は、変化の中心であるモバイルが変えてきた現実世界に合わせて、広告の仕組みをリデザインしていくという取り組みの表れだと言えるのではないかと思います。

今回の変更は大きく分けて、以下の5つに集約されます。


・デバイスごとの入札
・テキスト広告の仕様変更とディスプレイフォーマットの追加
・地域向け広告の強化
・ターゲティング/配信の拡大
・機能強化に合わせた管理画面の変更

この中には昨年の「最終URL」のような強制変更があります。(←拡張テキスト広告) 広告運用の担当者の実務に直接関わる変更もありますので、順を追って紹介します。

デバイスごとの入札

タブレットを含めたデバイスごとの入札が、今後数ヶ月以内に実装されるとのことです。

2013年に行われたエンハンストキャンペーンでは、デスクトップPCが中心の設計となり、そこからモバイルデバイス(タブレットを除く)に対して入札単価調整を行う、という仕様でした。あれから3年が経ち、世の中がモバイル中心へ完全に切り替わっていることから、キャンペーンの目的に合わせてデバイスごとに独立した入札ができるように仕様変更が行われます。

gps-indivisual-bids

具体的には、以下のようになります。

・モバイル、タブレット、デスクトップのそれぞれで独立した入札単価調整比が可能に
・入札単価調整比は+900%まで設定可能に

現在と同じように広告グループ/ターゲットごとの入札単価を基準にしますが、それがタブレットも含めてすべて独立した入札調整比率が利用可能になり、最大で+900%(10倍)まで幅を付けることができますので、モバイルのみを前提としたビジネスや、シーンごとに利用状況が極端に変わるビジネスなどで、これまで以上に柔軟性のある設定ができるようになりますね。

アドワーズのフォーラムではたびたび入札単価調整比に関するフィードバックがあったと聞きますし、この発表の瞬間に会場では大きな拍手が起きましたので、個別入札がいかに広告利用企業から求められていた機能かが伺えます。

テキスト広告文の仕様変更

広告のフォーマットも、モバイルファーストになります。

2016年の2月に実装されたデスクトップ検索の右広告枠廃止は、「モバイルに表示とユーザー体験を合わせるため」と説明されてきましたが、今回のテキスト広告の文字数変更の布石でもあったようです。

gps-expanded-text-ads

画像:Inside AdWords

上記は今回の変更をまとめた表ですが、新しいテキスト広告表示は Expanded text ads(拡張テキスト広告)と呼ばれ、タイトルが長くなり、説明文が一つにまとめられるなど、アドワーズが今のかたちになって以来約15年間続いていたテキスト広告の形式が、今回大幅に変更になります。

見出し(タイトル/Headline)
半角25字(※)×1行  ※日本では半角30字

半角30字x2行

広告文(説明文/Description)
半角35字(※)×2行  ※日本では半角38字

半角80字x1行

表示URL
表示URLを手動で設定

最終ページURLのドメインが自動的に適用(ドメイン以下のパスは追加変更可)

これにより、テキスト広告の文字数は従来より1.5倍になります。確かにモバイル表示では説明文が2行である意味が薄れてきていましたし、事前のベータテストでは 20% ほど高い CTR となったようで、基本的にはポジティブではないかと思います。

モバイルに最適化した広告フォーマットの採用によって、ユーザーの視認性や情報量の向上と、モバイルにおける RPM の向上を同時に達成しようとする狙いが見て取れますね。

レスポンシブディスプレイ広告の追加

分散型メディアという言葉にも象徴されるように、モバイルによって、ユーザーがアクセスできる場所はウェブサイトのみならずアプリやソーシャル、動画など、様々な場所に拡散してきています。それぞれの場所でそれぞれのサイズやトーンに合わせて広告表示ができるように、モバイルに最適化されたレスポンシブ広告が発表されています。

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画像:Inside AdWords

これまでも「広告テンプレート」というかたちでレスポンシブ広告は提供されていますが、それがモバイルでの表示に合わせ、ネイティブ広告としても対応したフォーマットとしてアップグレードされたような印象です。

タイトル(見出し)、広告説明文、画像、URLの4つを入力すれば、Googleディスプレイネットワーク(GDN)上の様々なサイトやアプリの広告枠に合わせて表示が自動的にカスタマイズされます。これまでのようにバナーのサイズが大量にあって制作コストがかさむということがないため、クリエイティブのPDCAサイクルが早くなりそうですね。

パブリッシャー側のアドサーバーである DoubleClick for Publishers(DFP)側では既にネイティブ広告への対応が可能になっていることを考えると、広告主とメディア側双方の需給バランスを合わせる意味でも、このタイミングでのアドワーズのネイティブ広告対応は必須だったと思われます。

地域向け広告の強化

地域を意図している検索(Local searches)は、ただでさえ成長率の高いモバイル全体の検索を、さらに50%も上回る勢いで伸びてきており、モバイル検索の約30%は地域に関連した検索とのこと。現在はグーグルマップ上での目的地検索が毎月15億回ほど発生しているとのことで、常に持ち歩くデバイスと地域との相性の良さは抜群で、数字的にも証明されています。

gps-maps

そこで、実店舗を持つビジネスがよりオンラインの恩恵を受けられるように、地域向けの機能強化がハイライトされています。具体的には、住所表示オプション(≒Googleマイビジネスとの連携が必要)が設定されていれば、Googleの通常検索とマップ検索の際に、ユーザーの位置情報に合わせて店舗型広告を表示させることができるとのこと。

既にテスト的に導入されているところもあるようですが、店舗の所在地をピンマークで表示する Promoted Pin が表示され、ビジネスページに詳細が表示されることで、ローカル在庫広告のように店舗での商品詳細とも連動したり、広告を見た人に向けての特別オファーなども表示可能になります。

発表時は、日本のセブン&アイ・ホールディングスの事例が紹介されていました。

gps-7andi

アドワーズを利用した来店コンバージョンの計測では、モバイルで検索した人のうち来店した人の割合は約10%で、モバイル広告の来店単価はPCよりも約40%低く、費用対効果も高いという結果が出たとのこと。

この事例は以下の記事で日本語で読めますが、世界に先駆けて事例を出しているのは素晴らしいですね。

リンク:Google 新サービス「来店コンバージョン」測定機能をセブン&アイ・ホールディングスが導入し、オンライン広告からの来店数の可視化に成功

検索向け類似ユーザーの開始

モバイルとは直接的には関係ないかもしれませんが、アドワーズのターゲティングにも幾つか変更が発表されており、その一つが検索連動型広告のターゲティングの拡大である検索向け類似ユーザー(Similar audiences for search)です。

現在でも検索向けリターゲティング(Remarketing list for search ads: RLSA)は可能ですが、そのリストを拡張して、類似ユーザーとして検索連動型広告に出せるようになるとのこと。

gps-similar-to-search

これにより、通常の検索連動型広告と RLSA との間のに、ターゲティングのグラデーションをつけることが可能になります。これにデバイスごとの入札単価を掛け合わせるとかなりカオスになりそうですが、ある程度の規模の配信が可能なアカウントであれば、自動入札に切り替えた方が精度が上がると思います。

リマーケティングの第三者配信

配信の拡大は、ディスプレイ広告にも及んでいます。今後、アドワーズのリマーケティングキャンペーンは、GDN/DoubleClick Ad Exchange での掲載に加えて、他の広告ネットワークの広告枠でも掲載が開始されるとのこと。

We’re also extending the reach of GDN remarketing campaigns by giving you access to cross-exchange inventory, which includes more websites and apps around the world.

さらっとしか触れられていませんが、これはものすごい変化です。これまでアドワーズでは AdSense/DoubleClick Ad Exchange の広告枠へのみディスプレイ広告の配信が可能でした(Admobなど買収した他の広告ネットワークは除く)が、今後は DSP を使わずとも複数のアドエクスチェンジのオークションに参加することになりますので、GDN以外の枠へもリーチが拡大されます。

リマーケティングキャンペーンだけなので対象としては限定的になりますが、品質計算に優れたアドワーズが他のネットワークへも配信を拡大することでおそらくインプレッションボリュームとしては増えると思いますし、今後はネットワークを跨いだ成果の確認もできるようになると思われます。

なお、他のネットワークへの配信は自動的に行われますので、「あれ?リマーケティングリストが増えたわけでもないのにインプレッションが急に増えたな?」と思ったらこれが原因かもしれません。

検索向け類似ユーザーと同様に、これをリストごとやサイトごと、ネットワークごとに入札コントロールするのはほぼ不可能だと思いますので、早めに自動入札に切り替えた方がよさそうですね。

管理画面のデザイン変更

ここまで挙げてきた多くの変更を無理なく表現するために、管理画面の変更のデモも少しだけ公開されました。

gps-adwords

今回の発表では時間も少なく、あくまで紹介のレベルにとどまっていた印象です。事前の発表でも、管理画面の変更は通常より移行期間が長く設定されているようですので、今後詳細情報が続々と上がってくると思います。フラットで、ビジュアルに訴えたダッシュボード的な画面になるようですね。

この他にも、Googleアナリティクスのアップデートも同時に発表されており、かなり熱い内容となりました。

アナリティクスの新機能の紹介は専門サイトに譲りますが、例えば、デモされていた「自然検索経由で4月は何人のユーザーが来た?」という質問を管理画面にあるフォームに入力すると、アナリティクスがクエリから導いた答えを返すという機能は、非常に面白いと思いました。検索で培われた自然言語処理が色んなところで活かされていますね。

gps-analytics

モバイルを軸にした広告のオーバーホール

今回のアップデートのキーワードを箇条書きにすると、以下になります。


・デバイスごとの入札
・テキスト広告文の仕様変更
・レスポンシブディスプレイ広告の追加
・地域向け広告の強化
・検索向け類似ユーザーの開始
・リマーケティングの第三者配信
・管理画面のデザイン変更

モバイルが変化の中心になっているという傾向は2015年と同じでしたが、2016年は完全にモバイルを軸に機能がオーバーホールされたという印象を受けました。

そして、ここでは詳しく触れていませんが、断片化するデバイスやメディアを横断的に計測していくというインフラと機械学習の基盤があって、広告配信機能の精度が担保されているのだと思います。

外部環境の急速な変化は、マーケティングプラットフォームに構造的な変化を常に強いていると思います。Googleにとっての生命線である広告において、通信環境の変化、デバイスの変化、競合の変化、ユーザー行動の変化といった、急速な変化が同時多発的に起きている状況を正しく認識し、最大限のキャッチアップを続けていく姿勢が鮮明に見えた発表だったと思います!

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