TikTok広告:プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える 第4回

TikTok広告:プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える 第4回

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『プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える』連載の趣旨

デジタル技術の進化により、年々増え続ける広告プラットフォーム。しかも各媒体でサイレントを含むアップデートが繰り返され、新機能を使いこなすことに手一杯になっている運用者の方も多いのではないだろうか。しかし、普段機能の一つ一つに目を向けていると分からないものだが、それらはもっと根幹の部分にある「プラットフォームとしての思想」が反映された結果として、生み出された機能であるはずだ。
 
ユーザーベースドな広告運用が大事だといわれている今だからこそ、各プラットフォームの思想を理解し、これからの広告運用に向き合うためのマインドセットを再確認することが大事なのではないだろうか。本連載では「どういう想いでプラットフォームが立ち上がり、その思想がサービスにどう反映されているのか」をテーマに進める。
 

今回、プラットフォームの思想を伺った方:TikTokの畠山雄さん

第4回となる今回は、モバイル向けショートムービープラットフォームである「TikTok」を運営するTikTok For Business Japanの畠山雄さんにお話を伺った。

話し手:
TikTok For Business Japan
パフォーマンス広告プロダクト責任者
畠山 雄さん

聞き手:
アタラ合同会社
マネージャー/コンサルタント
高瀬 優

※本インタビューは2020年6月に実施されました
 

ローカル戦略からオペレーションまで

高瀬:畠山さんのプロフィールを教えてください。
 
畠山:新卒で入社して以来、約12年間デジタル中心の広告代理店に在籍していました。最初の1年半は営業でしたが、それ以降はSEMのコンサルタントとして長く働いており、そこからずっと運用型広告に携わっています。
 
また、運用自体を定型化したり仕組み化したりするのが得意で、自動入札ツールを作るプロジェクトの責任者を任されました。そのツール自体は社内で使うことがメインだったのですが、機械学習からUIの設計まで手掛けました。
 
入札以外にも、運用の全社ルールや基準を作る仕事にも携わり、オペレーションの組織の責任者や、クリエイティブ子会社の責任者もやらせていただきました。このタイミングで、Google、ヤフープロダクトだけではなく、FacebookやTwitterなど、運用型メディア全般に関わる運用やサービスをみてきました。
 
あとは代理店としての強みを作るためのシステム開発にも携わり、それこそ自動入札ツールもそうですが、自動のレポーティングツールや、運用を統括するような仕組みを作る組織の責任者もやっていました。
 
高瀬:なるほど。TikTokに移られた理由を教えていただけますか。
 
畠山:シンプルに言うと、よりプロダクトに近いプラットフォーム側でモノを作りたかったからです。前職時代に自分がやっていたのはプラットフォームに乗っかるモノづくりなのですが、もう一つ手前のプロダクト開発に関わりたかったというのが理由です。
 
高瀬:分かりました。TikTokでは現在どのような役割をされているのですか。
 
畠山:PSO(Product Strategy and Operationの略)チームで広告商品のストラテジーとオペレーションの両方に関わっています。その中でも、ブランドとパフォーマンスという顧客軸でプロダクトが分かれており、CPAやコンバージョン数を指標とするお客さまにご利用いただくパフォーマンスプロダクトの責任者です。
 
ストラテジーの観点では、日本でより高い広告成果を出した上で、我々のレベニューも伸ばすためにはどのようなプロダクトであるべきかというローカル戦略を考えています。一方、オペレーションの観点では、新機能のリリースや既存機能のバージョンアップなど、日々アップデートされるプロダクト情報を現場に届けるという役割を担っています。
 

 
 

気軽に遊べるプラットフォーム

高瀬:これは運用型広告に関わっている人に限らずですが、TikTokが急成長しているプラットフォームであるという共通の理解があるかと思います。一方、ユーザーが実際にどのような使い方をしているのか把握できていない人も多いと考えているのですが、TikTokのプラットフォームとしての特徴について伺えますか。
 
畠山:特徴でいうと、おっしゃるとおり世界でも急成長しているアプリケーション、プラットフォームであり、センサータワーが2020年4月下旬に発表した最新レポートによると、TikTokは世界のダウンロード数が20億を突破しました。1日当たりの平均視聴時間は44分から現在さらに伸びています。これは少し主観的にはなりますが、TikTokが「面白い」からだと思います。毎日長い時間を費やすということは、ついつい見続けてしまうコンテンツが数多くあることの裏返しでもあり、我々としてもコンテンツに出会える場所を提供するというコンセプトを持っています。
 
また、無名な方のコンテンツでも面白ければどんどん広まっていくということもTikTokの特徴の一つではないでしょうか。有名無名問わず、さまざまなコンテンツに出会える仕組みがあるため、人を飽きさせないサイクルを作ることができているのだと考えています。
 
加えて、一般ユーザーにとって投稿のハードルが低くなるような仕組みもうまく作れていると思います。テクノロジーを駆使したスタンプや、ノーズペイントのように鼻で絵を描くなど、コンテンツとテクノロジーをうまく使って簡単に投稿できる仕組みを常に提供しています。「この人のまねをしてちょっと遊んでみよう」とか、そういった気分で気軽に投稿でき、少しの工夫でそれが他の人に称賛され、広がっていく。そのような仕組みの起点をきちんと作れているというのも、我々の強みだと思っています。
 

高瀬:気軽に遊べるプラットフォームであることは大きな魅力ですね。
 
 

レベニューを占める比率が高いのはパフォーマンスプロダクト

高瀬:順調にユーザー数ならびに平均視聴時間も伸長しているとのことですが、広告主はTikTokをどのように活用しているのでしょうか。広告だけではなく、オーガニック投稿の観点でもお聞きしたいです。
 
畠山:正直なところ、企業がオーガニック投稿を積極的に行っている事例は現段階では少ないです。というのも、これまで企業が公式アカウント(以下ビジネスアカウント)を作るには一定量の広告出稿が必要であったりとハードルが高かったんですね。この点は今まさに変えようとしていて、ビジネスアカウントをより簡単に作成できるようにすることで、オーガニック投稿が活用される事例は増えていくと考えています。
 
高瀬:僕もTikTokを実際に見ていると、企業アカウントに関してはどういった投稿をすればいいのか迷われているなと感じていました。ビジネスアカウントの作成ハードルが下がれば、オーガニック投稿する企業もある程度増えそうですね。
 
畠山:そうですね。広告のパフォーマンスはもちろんのこと、オーガニック投稿した動画のエンゲージメントをビジネスアカウントから確認できるような仕組みを提供予定です。
 
高瀬:広告の活用方法に関して、いわゆるブランディングとパフォーマンス目的ではどちらの比率が高いですか。
 
畠山:現状でいうとパフォーマンスの方が比率としては高いと思います。
 
高瀬:少し意外ですね。特に他国だとブランディング寄りの事例に関する記事が多いので、日本でもブランディングが多いのかなぁと思っていました。
 
畠山:商品の特性でいうと、アプリを起動したときに出るトップビューといわれる商品や、ハッシュタグを付けていろいろなチャレンジをするハッシュタグチャレンジなど、そういったものはやはりブランディング目的で実施されるお客さまが多いです。
 
一方、パフォーマンスプロダクトは最低出稿金額を設けておらず、少額でも出稿可能な広告商品であるため、数多くの中小規模の広告主にも活用していただいており、結果として全体のレベニューに占める比率もパフォーマンスプロダクトの方が高いという状況ですね。
 
 

強みは機械学習含めテクノロジーの部分

高瀬:TikTok For Businessの現状に関して伺います。大きく分けてオフラインアカウントとオンラインアカウントの二つがありますが、それぞれの概要を教えてください。
 

 
畠山:広告商品に差はありません。オンラインとオフラインのアカウントの違いでいうと、まず実施までのフローが違います。支払いの方法と、契約などのフローがオンラインだと直接簡単に手続きできます。ご利用いただく際、オンラインアカウントだからできないといった大きな制約は特にありません。同じようにオークションの広告をご利用いただけます。
 
高瀬:セルフサーブ型の広告が出る前は、オフラインの手続きのみだったのですか。
 
畠山:そうです。オフラインでの手続きが必要だったものが、オンラインで配信から支払いまで一貫してできます。
 
高瀬:すると、オンラインアカウントでもリザベーションタイプの広告は出せるのですか。
 
畠山:現時点ではオークションのプロダクトだけですね。
 
高瀬:なるほど。ターゲティングに関してはどういった機能がありますか。
 
畠山:他広告プラットフォームと遜色なく、いわゆる属性でいうと年齢、性別、エリア、そしてTikTok内の行動からという意味合いでの興味・関心などでターゲットを設定することができます。あとは3G、4G、Wi-Fiなどの通信環境や、au、ソフトバンク、ドコモなどキャリアの指定も可能です。
 
高瀬:入札戦略はどういったものがありますか。
 
畠山:課金タイプはCPV、CPM、CPCの3つで、CPCを一番多くご利用いただいています。CPCに関してはコンバージョンオプティマイズのoCPCを選択可能で、具体的には目標CPAを入力していただければ我々の機械学習で入札を自動最適化するというものです。
 
また、このoCPCでは目標CPA内でのコンバージョン獲得を目指す「スタンダード」入札タイプと、設定した予算内でなるべく多くのコンバージョンを獲得しようと調整をする「コンバージョン最大化」の入札タイプのいずれかを選択することができます。
 
高瀬:他の広告プラットフォームが備えているような自動入札の部分はある程度カバーされているということですね。
 
畠山:はい。あと最近では、アプリのお客さま向けにApp Event Optimization、略してAEOと呼ばれるプロダクトも提供しています。これはアプリインストールの先の、例えば課金や登録といったイベント目標を設定し、これを最大化するという仕組みです。
 
我々の強みは機械学習含めテクノロジーの部分です。AEOに関していえば、課金や登録のイベント数はインストール数と比較してどうしても母数が少なくなりますが、それでも優れた機械学習で最適化が可能です。広告プラットフォームとして成長できているのは、このような強みが背景にあるからです。
 

 
 

コンテンツの変化を察知してクリエイティブ最適化を

高瀬:TikTok For Businessオンラインアカウントを使っている広告主の業種には特徴がありますか。
 
畠山:2020年4月のローンチ以降ご利用いただく広告主は増え続けており、業種自体も広がっています。例えば、健康食品やコスメ、ファッションなどのECサービスをはじめ、アプリの情報を紹介するようなメディアや音楽の新曲のプロモーションにもご利用いただいています。これまで見受けられなかった業種でいうと学校・教育関連ですね。大学や専門学校だけではなく、ローカルのダンススクールといったお客さまにもご利用いただいているので学校・教育業種の中でも幅は広いです。占いのアカウントもあり、これはオフラインのときにはなかった業種です。
 
高瀬:ローカルかつSMBという観点だと相性は良さそうですね。
 
畠山:そうですね。さきほどアプリという話が出ましたが、代理店さんを通してお取引をさせていただいているオフラインアカウントのお客さまでいうと、売り上げの割合としてもアプリのお客さまが多いというのが特徴です。
 
それと比較すると、オンラインアカウントのお客さまにはアプリよりウェブのサービスを幅広くご利用いただいているというのが現段階での特徴かもしれないですね。
 
高瀬:順調に広告主も増えているということですが、恐らく初めて活用するにあたって悩むであろうポイントの一つにクリエイティブがあるかと思います。実際TikTok For Businessを活用している広告主は、クリエイティブのポイントを押さえて広告運用できているのでしょうか。
 
畠山:幾つかの切り口で紹介しますね。まず、TikTok For Businessは動画ではなく静止画でも広告配信可能です。具体的には、取扱プレースメントの一つであるBuzzVideoは静止画とテキストで広告配信可能なので、動画をご用意いただけない場合でもご利用いただけます。
 
次に、これはSMBに限らずですが、しっかりと作り込まれた広告はパフォーマンスがいいかというと必ずしもそうではないのですよね。逆に、ユーザーのコンテンツに近い、素人が撮ったようなリアルな動画の方がパフォーマンスが出るということも十分にあります。
 
ですので、広告主の皆さまにはどんどんチャレンジしていただきたいと思っており、動画クリエイティブを簡単に作ることができる仕組みを幾つか提供しています。TikTok For Businessアカウント上では、機械学習により静止画・動画素材またはウェブサイトの情報から半自動的に動画素材を生成できる「スマートマイクロムービー」と、テンプレートとBGMを選択し、画像をアップロードしたり、テキスト入力することで動画が作成できる「動画テンプレート」をご活用いただけます。
 
高瀬:例えば一つのキャンペーンで複数の広告を設定して配信する場合、優れたパフォーマンスの広告に配信ボリュームを寄せていくといった最適化の仕組みはあるのでしょうか。
 
畠山:はい、基本的にはパフォーマンスの優れた広告に寄っていきます。Automated Creative Optimization(ACO)というプロダクトを提供しているのですが、これはあらかじめ入稿した複数の素材から最適な組み合わせを決定し、広告が自動生成され最適化されるというもので、約6割のお客さまにご利用いただいています。
 
高瀬:これまでの話をお聞きして、ユーザーのコンテンツに馴染むようなクリエイティブで、かつ御社の優れた機械学習による自動最適化機能を活用していくことがポイントだと思ったのですが、いかがでしょうか。
 
畠山:一つの成功パターンであると言えますね。コンテンツに関していうと、エンタメだけでなくHow to動画やニュースなど幅が広がってきており、トレンドも常に変化しています。その変化を察知してクリエイティブを最適化していくことも重要だと思います。
 
 

TikTok For Businessのフル活用で幅広いユーザー層にリーチ

高瀬:TikTokはいわゆるZ世代をベースに急成長しているプラットフォームかと思いますが、Z世代をメインターゲットとしない広告主の中にはTikTok For Businessをまだ活用したことがないといったところもあると考えています。こういった広告主に対して、御社からメッセージはありますか。
 
畠山:お伝えしたいポイントは二つあります。まず、TikTokのユーザー層は広がってきており、Z世代に限りません。恐らく多くの方が想定されているTikTokのユーザー層より幅はかなり広いと考えており、この点はお伝えしておきたいです。
 
次に、TikTok For Businessの視点で捉えたときに、取扱プレースメントの一つであるBuzzVideoは比較的可処分所得の高い30代以上のユーザーが多いです。同じく取扱プレースメントの一つであるPangle(TikTok For Businessから配信できるオーディエンスネットワーク)は、ハイパーカジュアルゲームやマンガアプリをメインとした動画トラフィック在庫を保有しており、規模感はもちろんユーザー層の幅といった点でも魅力的だと考えています。
 
このように、TikTok For BusinessはTikTok以外にもBuzzVideoやPangleといった取扱プレースメントがあるので、ターゲットやご予算によってプレースメントを選択していただければと思います。また、我々の強みである機械学習で、パフォーマンスの優れたプレースメントに配信を寄せていくといったことを実現していけば、お客さまにも長く使っていただけると考えています。
 
高瀬:ありがとうございます。今後の広告プラットフォームとしての成長も楽しみにしています。
 
※過去記事はこちら





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