Facebook広告:プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える 第1回 

Facebook広告:プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える 第1回 

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『プラットフォームの思想を知れば、これからの広告運用が見える』連載の趣旨

デジタル技術の進化により、年々増え続ける広告プラットフォーム。しかも各媒体でサイレントを含むアップデートが繰り返され、新機能を使いこなすことに手一杯になっている運用者の方も多いのではないだろうか。しかし、普段機能のひとつひとつに目を向けているとわからないものだが、それらはもっと根幹の部分にある「プラットフォームとしての思想」が反映された結果として、生み出された機能であるはずだ。

ユーザーベースドな広告運用が大事だと言われている今だからこそ、各プラットフォームの思想を理解し、これからの広告運用に向き合うためのマインドセットを再確認することが大事なのではないだろうか。同連載では、アタラ合同会社の清水が「どういう想いでプラットフォームが立ち上がり、その思想がサービスにどう反映されているのか」をテーマに連載を進める。

 

今回、プラットフォームの思想を伺った方:フェイスブック ジャパンの中村淳一さん

第1回目となる今回は、フェイスブック ジャパンにインタビューした。

話し手:フェイスブック ジャパン 執行役員/マーケティングサイエンス日本統括 中村淳一さん
聞き手:アタラ合同会社 執行役員/シニアコンサルタント 清水一樹、チーフコンサルタント 中川雄大
編集:アタラ合同会社 Unyoo.jp編集部 井谷麻矢可

 

「ユーザーエクスペリエンス」を重視した広告配信システム

清水:まずは自己紹介をお願いします。

 

中村:マーケティングサイエンス日本統括の中村と申します。業務としては、クライアントのマーケティング課題の解決や、パフォーマンス最大化というような課題に対しての効果測定、オークション分析やユーザー調査からインサイトをベースにアドバイスするといった仕事をしています。FacebookだけでなくInstagramのマーケティングサイエンスのリードや、外部ではJIAA(一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会)の理事も務めています。

 

 

清水:ありがとうございます。Facebookといえば今や世界中の誰もが知る巨大プラットフォームですが、もともとは創設者のマーク・ザッカーバーグ氏が大学内でのコミュニケーションのために立ち上げたものなんですよね?

 

中村:大学内や大学間でのコミュニケーションのために作られたと聞いています。時系列で言うと2004年に設立し、2006年に一般公開、2007年に広告事業が始まり、2008年に日本版が提供開始されました。設立当初はグローバル展開は考えていなかったようですが、当時のインターネットでは、音楽・本・情報などほぼあらゆるものを検索できた一方で、「人」という最も重要な要素を検索することができなかったことから、人と人をつなぐサービスを創設し、世界へ広がっていったようです。

 

清水:なぜ設立から3年後というタイミングで広告事業も開始されたのでしょう。

 

中村:私の理解では、設立当初はマネタイズが目的ではなく、「インターネットが人と人との繋がりの在り方を変えるかもしれない」という部分にポテンシャルを感じ、実現したいと思ったのがはじまりだと思っています。そのため当初はサーバー費用も自分たちでずっと賄っていたと聞いています。

 

ただ規模が拡大するにつれサーバー費がかさんでくると、当然自分たちのみで賄うのは難しくなります。そうすると当初の目的である「人と人との繋がりをサポートする」ことの実現もできなくなるので、広告事業も始めたようです。

 

こうした歴史を持つため、「ユーザー・人基点のプラットフォームであること」という思想が、オーガニック・広告問わず、アルゴリズムなど様々な面に色濃く反映されています。

 

中川:「人と人との繋がりをサポートし、よりオープンで繋がった世界を実現する」という設立時のミッションを変更なさった時は、衝撃を受けました。なぜ変更されたのでしょうか?

 

中村:2017年より新ミッション「コミュニティづくりを応援し、人と人とがより身近になる世界を実現する」に変わりましたが、基本的な思想は変わりません。よりコミュニティづくりに焦点を当てた方向に発展したという方が正しいかもしれない。人と人の繋がりだけでなく、同じ目的や興味を共有するコミュニティならばそこに深さが出てくる。繋がりの広さだけでなく密度を重視しているイメージです。

 

新ミッションを掲げて以来コミュニティ形成のサポートにはかなり注力しており、「Facebook Community Leadership Program」を通しての世界中のコミュニティリーダーの支援や、女性起業家のコミュニティを支援するプログラム「#起業女子」、や地方活性化、シニアのFacebook活用プロジェクトなども行っています。

 

新ミッションの思想はプラットフォーム全体に反映されていて、コンテンツが単にフィードで上がってくるのではなく、コメントやシェアの度合いを鑑みて関連度の高い投稿が優先表示されるようなアルゴリズムに変更されています。

 

清水:かなりミッションドリブンな企業だということが伝わってきました。新ミッションの思想は、広告にも反映されているのでしょうか?

 

中村:コミュニティ=広告ではないため、コミュニティ思想はFacebookの根幹をなすアルゴリズムに反映されていて、広告部分は旧ミッション時から変わらず「ユーザーエクスペリエンス」をベースとした設計になっています。ユーザーエクスペリエンスを最適化するためには、広告であっても利用者にとって意味のあるものであるべきです。

 

そのため、利用者の価値を最大化するような広告配信アルゴリズムが設計されている点、つまり「ユーザー基点のプラットフォーム」であるということが、Facebookの一番の特徴であり強みだと思います。

 

中村:オークションの計算式ひとつをとっても、思想が反映されています。一例えばオークションの計算式には広告主の入札価格に加えて、推定アクション率と利用者にとっての価値(いいね!やコメント数、シェア数、レレバント(親和性)など)が加味されます。

 

推定アクション率は目的(コンバージョン・認知など)によってアクションが変わるため、そこがずれているとアルゴリズム上マッチしにくくなります。そのため、広告の配信目的を明確化することが重要です。

 

また、利用者の価値が足し算になっている点もポイントです。つまりオークション計算式をする上で掛け算ではなく、どんどん加点されていくわけです。

 

 

中川:例えば同額入札で推定アクション率も一緒である2社が競争した場合、関連性やユーザーからの反応の大きな方が勝つという理屈ですよね。

 

中村:はい。またFacebookの場合、検索連動型広告のようにクリックだけでなく、推定アクションに幅があるのも特徴です。加えて利用者も特徴的で、興味のない広告にはアクションを起こさない。やはり利用者と広告主の目的の合致を重視した作りになっていると思います。

 

「人」基点のデータを与え、機械学習アルゴリズムをうまく活用する

清水:機械学習にもそういった思想は反映されているのでしょうか?

 

中村:Facebookでは様々なスケールのデータを機械学習のアルゴリズムでまわしていますが、すべての基点にはやはり「人」が置かれています。例えばデータベースはIDベースで構築しています。Cookieベースだと、同じ人であってもそれぞれのCookieに対して機械学習が働いてしまい、全体像が見えない中で最適化がかかってしまいます。

 

清水:スケールという点では、FacebookやInstagramを含む巨大なFacebookファミリーネットワークの中で機械学習を働かせるというのは、正確性を上げるうえで非常に重要ですね。

 

中村:また、顧客に関しては広告主の方が一番熟知しているはずなので、オフラインコンバージョンやCRMデータなどのデータ量を増やすと同時にピクセルやSDKを漏れなく設置していただくことが重要です。それによって機械学習の精度が上がり、ビジネスが伸びていく仕組みなのです。

 

データ量を増やすことで広告主にとってもパフォーマンスが上がりますが、一方で利用者にとっても意味のある広告が出せるシステムなんです。例えばダイナミック広告であれば、利用者が欲しいタイミングで商品が出てくると、その広告は大きな意味を持ちます。自分や友人のポストと同じくらい広告にも意味を持たせられるというのが、大きな特徴だと思っています。

 

もう一つ大事なのは、透明性の部分です。利用者にとってどれだけ意味のある広告だとしても、利用者がある程度コントロールしたいこともあるはずなので、広告が表示される理由を確認する機能を提供し、履歴の消去の選択肢を持っていただくような新機能も開発中です。

 

 

中川:アプリイベントへの最適化をしてからインストール広告を配信するのと、単に配信するのとでは、仮にインストール単価は同じでもその後の行動の深度が全然違いますよね。私も経験があります。

 

中村:人を理解すること」に基軸を置いた仕組みなので、要は人を理解するための情報は少しでも多いほうがいいのです。ここが誤解されがちで、例えばSDKをインストールのみに設定し、ウェブサイトは購買ページにのみFacebookピクセルを実装するといったように、コンバージョンポイントにのみイベントを設定するケースがとても多いです。これでは限られたデータのみで配信されることになります。

 

だから、SDKは設置可能なアプリイベントすべてに入れ、かつウェブサイトも全ページにFacebookピクセルを入れることで、顧客データが充実し、より多くのシグナルによって質の高い広告が配信できます。

 

 

中川:Facebookピクセルであれば、標準イベントを対応するディレクトリやページに入れるのと、単にベースピクセルが入っているのでは、全然結果が違ってくる気がします。全ページでベースピクセルを発行しているけど、コンバージョンはカスタムコンバージョン、といった設定を良く見ます。

 

URL指定してカウントできるようにしているというパターンもありますが、それだとコンバージョンしたか、商品を見たか、カート追加したかなどは、Facebookさんからは分からず、最適化のしようがないですよね。

 

中村:そうですね。標準イベントをなるべく入れていただくことをおすすめします。

 

清水:最近ローンチされた、自動詳細マッチングはどんな機能なんでしょう?

 

中村:FacebookやInstagramにログイン済みの利用者はFacebook IDで特定できますが、未ログインブラウザなどFacebook IDで特定不可のブラウザであっても、自動詳細マッチング(Advanced Matching)を装備していただくことでデータが送られてくるようになります。これにより特定できるオーディエンスが20%から40%に、コンバージョンも20%から35%増加しました。こちらを実装していただくことで、ITP2.0問題も防ぐことができます。

 

広告セットは分けすぎない=機械学習の最適化

中村:今までお伝えしてきたように、Facebookは「人」をベースにした機械学習のアルゴリズムで動いています。そのシステムを最大限活用するためには、やはりある程度データを溜める必要があります。運用者の方には釈迦に説法かもしれませんが、理想で日あたり50コンバージョン、少なくとも15コンバージョンあると、うまく学習が進むと思います。

 

清水:つまり、広告セットを細かくしすぎてはダメだと。

 

中村:はい。やりがちな運用方法として数千円・数万円を上限予算とし、Facebook、Instagramなどフィード別に配信するという方法があると思うのですが、そうではなく、全体の予算や入札を上げ、ストーリーズの配信面を含むファミリーアプリ全体に自動配置、さらに最適化ポイントを本当の目的に合致させ、機械学習に任せていただいたほうがより最適化されやすいです。さらに、最適化ポイントは、例えばクリックではなくビューなど、本当の目的に合致させたほうが良いです。

 

清水:最適化ポイントを本当の目的に合致させるというのはどういうことですか?

 

中村:例えば、クリックを最適化ポイントにされている方もいらっしゃると思うのですが、クリック率は人によって異なりますし、約9割の人は必ずしもクリックせずにコンバージョンするというデータもあります。クリックを目的にしてしまうと、どうしてもパイが狭いところで戦わざるを得ないので、CPMが高騰してしまいます。

 

そのため、アッパーファネル向けのキャンペーンの場合はクリックを目的にせず、ピクセルを入れていただいてコンバージョンを目的にされることをオススメします。

 

 

清水:「人を基点に考える」という設立当初からの思想を意識したデータの扱い方やアカウント設計を行えば、Facebook広告上のパフォーマンスも上がるということですね。

 

Instagramはユーザーとのコミュニティ形成が肝

中川:Instagramが飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びていますが、Instagramの広告運用において、「人ベース」を意識した運用ポイントはありますか?

 

参考:

 

中村:2018年10月に行った国内ユーザー調査で、Instagramで製品やサービスの投稿を見たあとに何らかのアクションを起こしている利用者が82%いるということが分かりました。その中で、ブランドサイトやアプリに訪れる人は52%もいるわけです。その意味でも、やはりSDKやFacebookピクセルは抜けなくもれなく設定していただいたほうが良いでしょう。

 

また今回の調査で、Instagram上での検索やフォローなどの行動を起こした人も56%にのぼりました。つまり、アカウントプロフィールをしっかり作るなども基本的なことではありますが、重要なことだと思います。

 

 

中川:プロフィールを通して企業とユーザーのコミュニティが形成されますね。やはり「人と人」や「コミュニティ」を意識することが大事ですね。

 

中村:個人的に、冒頭で申し上げた「アドエクスペリエンス」は今後ますます大事になっていく気がします。今、広告がどんどん嫌われ者になる流れがあると思います。ただ広告って、適切に表示できれば、実は利用者にとってほしい情報の提供の場でもあるんですよね。

 

なので現在、Instagramのストーリーズ上でのアンケート調査の広告版を作ったり、ゲームアプリなんかだと、その場で遊べるタイプの広告にするなどの取り組みを行っています。利用者にとって意味のある広告、広告のエクスペリエンスを上げていくために、色々と今後も変えていきたいなと思っています。

 

清水:ありがとうございます。やはりInstagramもFacebook広告同様に、ユーザーエクスペリエンスが大事である、ということですね。

 

Facebookファミリーのそれぞれのプラットフォームによって、VISIONやVALUEは違えど、全体を通して広告本来のMISSION(ユーザーエクスペリエンス)が軸にあることを理解しました。

 

広告主が顧客をターゲティングするのではなく、顧客が広告主をターゲティングしていることを意識し、優良な顧客に選んでもらうべく、適切なデータを与える運用を大事にしたいと思います。本日はありがとうございました!

 


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