DearOneに聞く:リテールアプリのアドネットワークARUTANAで実現できる世界とは


アタラ 運用型広告最適化サービス

リテールメディアの導入が日本でも広がっていますが、米国のWallmartのように1社のみで収益が上げられている規模の小売業者(リテール)はまだまだ見られないのが現状です。そこで、リテールが独自でもつアプリをアドネットワークでつないで広告による収益を実現しつつ、消費者、広告主にもメリットになる世界をつくろうとしているのが株式会社DearOneが開発した「ARUTANA」です。本記事では、株式会社DearOneの河野恭久さんに、日本とアメリカのリテールメディアの違い、日本に必要とされる戦略、ARUTANAが目指す世界などについて伺いました。

話し手:
株式会社DearOne
代表取締役社長
河野恭久さん

聞き手:
アタラ合同会社
コンサルタント
星野理人

アプリ開発・導入支援を行うDearOne

星野:まずは河野さんの自己紹介をお願いします。

河野:河野と申します。新卒で1社目は人材系ベンチャー企業に入りました。そこに12年ほど勤める中で、東証1部に上場でき、会社を大きくすることを学びました。それが非常に楽しかったので、次はまたベンチャー企業に移りました。それが弊社の前身である株式会社ロケーションバリューです。前任の創業社長と一緒に2011年に創業して、2015年から代表を務めています。その後、ビジネスが拡大し、2021年に社名を株式会社DearOneに変更しました。DearOneは、株式会社NTTドコモと株式会社博報堂の連結対象子会社です。

株式会社DearOne 河野氏

星野:御社の事業についても教えてください。

河野:主に三つの事業を行っています。まず一つが、スマートフォンアプリ開発プラットフォームの「ModuleApps2.0」というサービスです。今12年目になりますが、これが実は、われわれのスタートのビジネスであり、今もビジネスの中心となっています。企業やブランドのオウンドメディアとしてのアプリをSaaS型で簡単につくることができるサービスです。おかげさまでダウンロード数も伸びていて、毎月2,300万人の方が起動しているプラットフォームになっています。

もう一つが、データ分析やデータ・ドリブン・マーケティングです。データの取り扱うプロセス全体をサポートしたり、コンサルティングしたり、という事業です。これを米国発祥の「グロースマーケティング」という名前で行っています。

事業概要

三つ目は、今回のお話のメインとなるリテールメディアプラットフォーム「ARUTANA」です。これは2023年11月に立ち上げた新しいサービスです。仕込み自体は約2年前から始め、リリースしたばかりです。

これはリテール(個人向けの小売業)の公式アプリを横断して、そこに広告が配信できる、というサービスです。お取引先はメーカーとリテールが一番多いです。ただ、アプリ事業やデータ分析事業があるので、飲食店や公式アプリを持つ方々、あとデータ分析をしたいECサイトなど、そうした方々にもお客さまになっていただいています。

ARUTANAはリテールのオウンドメディアを通じてリテールの収益を上げるサービス

星野:さっそくですが、そもそも河野さんはリテールメディアをどのように捉えていらっしゃいますか。

河野:いろいろな考え方がありますが、僕は全部入りだと思っています。リテールがお持ちの購買データや、会員さまからお預かりしている個人情報を含まないデータ、これらを外部広告配信に使う、ということです。ただし、リテール自身を宣伝するのではなく、リテールで取り扱っている製品を宣伝します。広告を表示する対象に対してリテールの持っている購買データを使う、というのが外部メディアです。

リテールメディアとは

もう一つは、リテール自身がお持ちのオウンドメディアです。ここを広告媒体にしてしまおう、ということです。ここは商品を買いに、生活者の方が集まる場所なので想像しやすいと思います。

星野:オウンドメディアは米国型と呼ばれ、Walmartなどが該当するかと思います。一方、こうした外部メディアは、日本型と呼ばれることもありますね。

河野:そのとおりです。

星野:次に御社のリテールメディアプラットフォーム、ARUTANAの話に移らせていただこうと思うのですが、ARUTANAは基本的には米国型ですか。

河野:はい、米国型です。

星野:外部メディアへの掲載もされているのでしょうか。もしくは、そのような予定はありますか。

河野:外部メディアへの掲載は、DearOne社としては、まったくやっておりません。われわれは、そもそもオウンドメディアが得意であり、その媒体価値は古くからずっと一緒です。人が集まる場所に広告価値が高まるということは、やはり普遍の原理原則だと思います。リテールは人を集めようとしたわけではなく、商品を売ろうとしただけでしょう。しかし、結果的に集められている状態ですので、われわれは、その価値をきちんと還元したほうがいいと考えています。

日本型の外部メディア配信は、アイデアとしては素晴らしいと思います。しかし、これは私見になりますが、今のところ、うまくいくイメージがあまりない、という状況です。

星野:もともと米国型を目指してARUTANAをつくったわけではなく、リテールの収益を上げていく、という意味合いでやられているのですね。

河野:おっしゃるとおりです。

小売業の規模が小さい日本ではアドネットワークでの展開が必要

星野:ARUTANAはアプリのアドネットワークということですが、国内の他社を見ても、リテールメディアはアドネットワークでの展開になっていると思います。なぜアドネットワークという形になっているのか、米国との違いなども教えていただけますか。

河野:米国ではWalmartがすでに成果を出しています。83兆円(6112.9億ドル)*の売り上げがある会社なので、広告事業収入がそのうちの3600億円*というと、まだ0.何%だという見方をする方もいるかもしれませんが、数字で見ると3000億円以上の価値になっているので、これは成功だと言えるでしょう。

*出典 https://amzadvisers.com/ja/walmart-connect/

ただ、米国のリテールメディアを調べていくと、ECサイトがけん引しています。例えば、AmazonもECですよね。Amazonの、あの画面に広告が出れば、リテールメディアだとカウントされたりもするので、本来の、われわれが目指している世界とは少し違うところで米国は成功しているように見えます。

しかし、日本でもECに広告を出すことで成功できるかというと、それは数字上なかなか厳しいのではないかと思います。なぜかと言うと、EC市場が未成熟だからです。

国内と海外のEC市場比較

ECが未成熟な理由は、例えば日本は一歩外に出たらコンビニエンスストアが24時間営業していますが、海外出張などで米国へ行くと、もう不便でなりません。22時ごろには、ほぼ全てのスーパーマーケットが閉まっているからです。喉が渇いたらどうする、という話は日本ではないですよね。そこが圧倒的に違います。それから、日本には買い置きができるストックスペースもないので、ECは難しいと考えました。

一方でアプリは、リテールメディアとして切っても切れない環境にあります。Walmartも、もちろんアプリが起点となっています。IDシンクに関していえば、会員番号とPOSデータをつなぐときにもアプリが必要です。また、最終的に広告をアウトプットする場所もアプリになります。

そこでアプリを見ていくと、米国はハイパーマーケットが上位の4社で98%寡占しています。一方、日本では、イオンやイトーヨーカ堂などの大手でも全体の63%ぐらいです。1社当たりでの売り上げ規模が圧倒的に違うのです。Walmartは83兆円の売り上げがあり、その売り上げの分、人が集まる場所なので、単体で広告価値が高い、という状態がキープできています。つまり、Walmartはリテールメディア単体で成功しています。しかし日本は、やはりそこまでの規模の会社が国内に存在していません。さらにアプリだけで見ると、差が顕著です。Walmartのユーザーで1.2億MAUなので、日本だと大手2社でも、300万MAU、150万MAUという程度なので、単体でここに広告予算が付くかというと、難しいでしょう。

なので、北米では、大手小売1社でメーカーが出したい広告予算、これに見合うリーチ数にミートします。日本だと、それがミートしないので、複数の小売に同じ予算で伴走してもらうことになります。これをより分かりやすいように表現すると、このような形になります。

国内と海外のEC比較2

これは、メーカーから見たときの、いわゆるマーケティングのファネルです。認知からコンバージョンまでを見たときに、本来、一番大きな三角形ぐらいの規模を想定して、例えば、テレビCMに広告を投下するような感覚でリテールメディアを使うと、まったくその規模になりません。小売1社だけだと細い三角形にしかならないのです。

そのため、日本において、リテールメディアは複数のリテールが手を取り合うことで、やっとこの三角形が成立し、広告としての価値が生まれます。これが非常に大きな差であり、特徴です。最近、これに気付いている人がどんどん増えてきているので、ARUTANAのコンセプトにご賛同いただけることは多いですね。

国内と海外のEC比較3

とはいえ、リテールから見たら、お互いライバルです。競合と手を取る形に見えるので、最初は「競合と手は組まない」という話になりがちです。この説明、頭では理解していただいても実現するのは、なかなか難しいのですよ。

リリース前の準備段階からずっと、各リテールの経営層の方々などに、このコンセプトを理解していただけるように努力しています。

星野:これは、なかなか難しいですね。PayPayなどもよく、特定のメーカーの製品の購入に対して割引やポイント付与などを行っていますが、あれもよく考えたら全部PayPay上でやっていることなので、似たようなことが起きているんでしょうね。

河野:そのとおりですね。

星野:だから逆に言うと、PayPayクーポンなどの施策に積極的な会社さんは、このようなリテールメディアも受け入れやすいのではないでしょうか。

河野:おっしゃるとおりです。広告主側、つまり、広告を出したい側は皆さん賛同していただけます。やはり、このコンセプトは合っているし、日本の統合型、アドネットワーク型リテールメディアは、ものすごく価値があるということは、この1年半ぐらいの、われわれの活動で証明できていると感じています。なので、あとはリテールの皆さんにコンセプトをご理解いただいて、手を取り合ってくだされば、と思っています。

商品の棚は有限、アプリの“棚”は無限

星野:ところで、このARUTANAの名前の由来は何でしょうか。

河野:「AdvertisingをRetailを通じてUniqueに配信可能なTANA(棚)」を略したものです。棚とは「商品棚」のことです。

星野:この商品棚というのは、小売の棚は競合のひしめくものなので、考え方としては同じですよね。

河野:はい。棚は物理的に存在しますよね。だから取り合いです。商品部や、メーカーの担当、いろいろな人がいる中で、どのメーカーの製品をどれぐらいの数並べるか、という昔ながらのリテールの棚の取り合いがありますよ。しかし、アプリはデジタルの世界なので無限なのです。これも皆さん頭では分かっていますが、まだ伝わり切っていません。

出そうと思えば無限なので、いくらでも出せる、ということです。僕は、そこも、もう一つの価値だと思います。もちろん、きちんと整理をして、広告主の広告効果が上がるようにする、というのは大前提ですが、棚のように細かくスケジュールを切って、2カ月に1回しかできない、といったものではありません。なので、そこの柔軟性にリテール側も気付いています。

私たちも今までは「広告でもうけましょう」といったニュアンスで伝えてきました。リテールは自分の事業に、ものすごく真摯に向き合っておられますので、もうかることより本業に集中したい、とおっしゃいます。買ってくれるお客さまがいて自分たちが成り立っているのだから、自分たちが広告でもうけるのではなく、買ってくれるお客さまに還元したい、といった意見もあります。なんて素晴らしい人たちだと、僕はリテールの世界を知って思いました。

なので最近では、広告で収益を得たものをベースに、例えば商品の値下げや、あるいはユーザーへのキャンペーン、ポイント還元、インセンティブ導入などが期待できる、と伝えています。要するに、単体でもうけるのではなく、あくまでもユーザー還元のため、もしくはEDLP(Everyday Low Priceの略。常に各商品を低価格で販売すること)のために別での収益源を得ましょう、といったような説明にしています。

星野:広告主と小売さん、両社にとっても確実にメリットがある、という話ですね。

河野:確実にメリットがあります。

アタラ合同会社 星野

ARUTANAはブランドスイッチにも寄与する

河野:PoC(Proof of Conceptの略。概念実証)でアプリに広告を配信した事例があります。そのときは、対象商品の売り上げが65%増となりました。そのうち、リピートは30%増、ブランドスイッチ30%、普段はその商品を購入していないカテゴリー新規が40%でした。これには僕も驚きました。

星野:しかもリピートだけではなく、ブランドスイッチなど新規が多かったんですね。

河野:そうです。このカテゴリーの新規40%が一番多いですね。効果が一定数はあったかと思います。

メーカーもこの効果には驚いていました。リピートは、もともと買っていた人たちだとしても、競合製品から替えるブランドスイッチは、うれしいですよね。一番喜ばれたのはカテゴリー新規です。普段、あめやキャンディー、グミを買わない人が買った、といったように。もしかしたら、その人がリピーターになるかもしれないので、完全な新規獲得ですよね。

星野:これは、まさに運用型広告にも言えることだと思います。例えば、広告を見ていなくても申し込んでくれたのではないか、という話があります。そこを、どう分析して見せるのかが、コンサルタントの腕の見せどころですよね。

河野:そのとおりですね。今回のPoCは全体配信、あるいは対象となった小売店で過去に買い物をしたことがあるユーザー限定で配信しました。この先、購買データをうまく連携できれば、商品を買った人、買っていない人というようにセグメントできるようになるので、ブランドスイッチを狙えます。競合製品を買った人にだけ配信する世界も今後実現しそうだな、と思います。

リテールメディアで目指すのは消費者・リテール・広告主のWin-Win-Winの姿

星野:リテールメディアでは、誰に広告を出すのかと同時に、誰に出さないのかということが非常に重要になってくるだろうと思っています。外部メディアの連携については、誰に出すのかという部分が、どうしても広くなってしまう部分がありますよね。

河野:おっしゃるとおりです。

星野:拡張配信のようなものがあったりしますが、これは誰に出しているのか分からない部分もあり、ブラックボックス化していることもあるかと思います。その真逆の部分を攻めている、ということですか。

河野:鋭いご指摘です。将来的には、おそらくリテールのオウンドメディアにも広告が出る可能性もあります。ただ、リテールメディアという言葉が流行している現段階において、アプリを使うユーザーに、スタート時に嫌な思いをさせてはいけません。絶対にユーザーファーストで考えるべきです。

まったく興味がない商品の広告は、良くないイメージとしてインプットされてしまいます。やはり、そこは気を付けるべきです。この人は過去に買った、あるいは興味がありそう、この先買う可能性がある、ということがデータ分析上に出ている人にだけ配信する、といったことなどは考えなければなりません。これは、最初は注意していくべき点であり、日本のリテールメディアの成功の鍵を握っているのかもしれません。

星野:顧客、広告主、メーカーの三者が全て良い気持ちになれることが大事ですね。

河野:全てが良い気持ち、これが大事です。

三方よしのビジネス

星野:最近ですと他社からもアプリやリテールメディアネットワークなどのリリースを出されていますが、ARUTANAと他社との違いを教えてください。

河野:今までに出ている他社のプレスリリースは、いわゆるモバイルアドです。いろいろなアプリやWebサイトは、ただのモバイル・アド・ネットワークを指しています。要するに、いろいろな広告が、ただ出される状態のものを指しています。われわれの場合は、そもそも買ってもらうための広告なので、そのお店で配荷し、実際に売っている製品の広告が出ます。なので、関係ない広告は出ない、というところが大きな違いだと思います。

星野:他社さんではしない掲載許可を御社ではして、メーカーや広告主にも数多くのメリットが存在している、ということですね。

河野:そのとおりです。

いずれは運用型広告のような適正な競争が自動化された世界に

星野:ARUTANAのリテールメディアは、どのような形で出稿するのですか。クリエイティブについてはクーポンだと思いますが、予算、入札などは、どのような形で広告を出すのでしょうか。先ほど、面は無限にあるという話でしたが、1番目、2番目ということになると、どのような計画になるのでしょうか。

河野:形としてはクーポンなどがありますが、最近は認知広告もあります。クーポンだと、お店側でも、その後のオペレーションが発生しますし、計測レポートも必要です。今は、各社に効果をいち早く実感していただきたいので、認知がメインになってきています。

そして、広告主側も比較的、認知広告を望んでいます。やはり、リテールメディアとしてアプリに出せる、ということは、アプリを持っているロイヤルカスタマーにリーチできる、ということです。実際の購買ではなく認知だったとしても、効果が高い、ということを、すでに認識していただいています。いろいろなパターンがありますが、今のメインは認知広告で、インプレッション単価という形です。

星野:今後、出稿したい、というメーカーが増えた場合、インプレッション単価が少し上がってしまう、という懸念はありますか。

河野:単価は上がりますが、今はむしろ安く出し過ぎている感覚があります。なので、市場原理で単価が上がっていく世界が来ると思っています。それがリテールメディアの本来の価値だと思うので、ぜひ、その世界を見たいです。

星野:そうなると、より反応がいいクーポンや、広告が安くなったりなど、いわゆる運用型広告と同じような世界の到来もありうる、ということですか。

河野:おっしゃるとおりです。

星野:一方で、広告を見る側、顧客の面でいきますと、そこが増えていけば相対的に単価も安価になっていきますか。

河野:そのとおりです。

星野:すると、ModuleApps2.0や、その開発によって、どれだけMAUや継続率を上げられるか、ということが肝になるので、そこでまた御社の価値が発揮される、ということですね。

河野:はい。なので、われわれは今、広告主に営業は一切しておりません。ModuleApps2.0でアプリをつくっていただければ、ARUTANAには、すぐ参画できます。また、違う会社でアプリをつくられても、実はARUTANAのSDKがあるので、それを導入してくれるだけで参画できるのです。

なので、ARUTANA自体には参画しやすい状態になっています。ARUTANAの、そのコンセプトに乗っていただけるリテールに、とにかく集まっていただくことだけをやっており、この先もしばらくは、この活動をしていくつもりです。

この考え方やコンセプトを思いついている人も、理解している人も多くいらっしゃると思いますが、あくまでも権利はリテール側にあります。リテールがもつ自分のメディアで、集まっているお客さまも、そのお店のファン層であるといったときに、無条件で自分のアプリに、勝手に画像を出されたら困りますよね。当然、将来的には、そこを全部自動化したいと考えています。要するに、リテールに自動で広告収入が入ってくるような世界をつくりたいのです。ですが、最初は1社1社、こういった広告を出してよいか、その都度掲載許可を取っていくことが、真摯にリテールさんに向き合うためには必要だと思っています。そのオペレーションは1社1社違うから大変です。

ロイヤルカスタマーへのアプローチと視認性・タイミング・効果測定でテレビCMを超えられる

星野:テレビCMの話も先ほど出ていましたが、お聞きしてもよろしいですか。

河野:そもそもARUTANAの特徴は、リテールのオウンドメディアとしてのアプリに横断で広告を出せるものになっている点です。

ご存じのとおり、こうしたアプリは会員全員が使っているものではないですよね。買う人が100%としたときに、アプリを使う人たちは、そのうちの20~50%ぐらいの人たちです。半分は、買い物はするもののアプリは使っていません。つまりロイヤルカスタマー、つまりお店のファンに近い人たちから順にアプリを使っていくので、そのアプリに広告を出すという行為は、ロイヤルカスタマーに対するリーチになる、というところが大きな魅力です。

もう一つのポイントは起動タイミングです。アプリの起動タイミングの75%は店内で、まさに、これから買おうとする購買の直前です。残りの25%は店外です。こちらは推測が含まれますが、例えば、明日ドラッグストアへ行こう、というときに、前の日に何を買うか、その上で、クーポンは出ていないか、と情報を収集していると考えられます。なので、これも購入検討層なので、タイミングとしては非常にいいと思います。

やはり視認性も重要です。これは他の広告と違い、アプリは自分で立ち上げるので、ほぼ確実に見ていただけます。

最後はターゲティングとレポートで、購買データと組み合わせる点です。弊社は親会社が株式会社NTTドコモなので、ドコモの9600万人のデータと掛け合わせれば、さらに細かいレポーティングができます。

ARUTANAの特徴 精緻なターゲティングレポート

テレビCMとの関係について、お話ししましょう。われわれのリテールアドネットワークとしてのリテールメディアが本当に立ち上がり、リテールさんたちが横で握手してくださって、うまく統合できた場合、次のような世界が待っています。

これは、ある生活者の1日です。自宅で朝、家を出発する前に、テレビでCMを見ます。会社に着く直前に寄るコンビニのコンビニアプリに載っているメディアでも、同じ広告が出てきます。朝と同じのを見た、という感覚で仕事をして、帰りにスーパーやドラッグストアへ寄っても同じものが出てきます。もちろん、その人がそこに興味がある、という前提ですが、一日中捕捉することで、最大限、購買促進ができる、という世界になります。

ARUTANAが完成すれば、テレビCMよりも優れたメディアになるでしょう。やはり全体のリーチ数ではCMのほうが圧倒的に人数がいるわけですが、われわれはリテールのロイヤルカスタマーに絞ることで、同じぐらいのリーチ数を出すことができるので、コンバージョンレートとしては大きく異なります。視認性とタイミングと効果測定については、そもそもCMはそこまで得意ではない分野なので、ARUTANAのほうが価値があるだろうと思います。

数字としては、今まだ1500万MAU程度ですが、これを5000万MAUまで集めようと思っています。そうすると、ようやくテレビCM並みの力を持つので、メーカー側では販促費よりも広告費の予算が動き出すかもしれません。メーカーでは広告費がそこまで簡単に動かないのですが、われわれとしては基本的に広告価値が高いメディアに予算を投下すべき、という単純な考え方です。

星野:CMをやって、それで棚を取りにいく、という文化があったと認識していますが、それがクーポンであったり、アプリに変わっていく、というイメージですか。

河野:そのとおりです。

星野:そうするとCM各社、CMをプラットフォームにしているテレビ各局も、デジタルに近い形での計測方法を編み出している中ではありますが、やはりアプリでの計測に勝るものはないですよね。

河野:計測ではそうですね。そもそもテレビCMは計測自体が難しい世界なので、そこは圧倒的に有利だと思います。ただ、最近活動している中で分かってきているのは、そういったレポートや数字の正確さもニーズがあると思っていましたが、やはり一番求められているのは、原点である「広告効果が高い」ということです。それに関しても、おそらくリテールメディアが今後、圧倒的になってくるはずなので、ARUTANAが完成したら、本当にメーカーの方々はテレビCMと同じような立ち位置で見てくれる世界が来ると思います。

星野:広告で一番大切な、効果が高い、というところに立ち戻ることで、大きな効果が生まれてくる、ということですね。これからのARUTANAの展開を楽しみにしております。本日はありがとうございました。

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