Google 広告の3つのフォーカスをキーノートから読み取る:SMX Advanced 2017イベントレポート

Google広告の3つのフォーカスをキーノートから読み取る:SMX Advanced 2017イベントレポート

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検索エンジンマーケティングをテーマにした大規模イベント「SMX(Search Marketing eXpo)」の上級者向けカンファレンスである「SMX Advanced」が2017年6月13・14日の2日間にわたり、米国西海岸のシアトル市で開催されました。

 

 

このカンファレンスシリーズは2007年に創設され、SEO、検索連動型広告に関する最新情報を求めて世界中から検索エンジンマーケティング従事者が集まってきます。私は創設当初の2008年から参加し続けており、今回で10度目。毎年の業界トレンドを読み取って日本に持ち帰ることを心がけています。

 

10年も参加していると、各社の力の入れ具合も見えてきます。マイクロソフトはシアトル近郊の地元企業ということもあり、本イベントには毎年力を入れてきました。グーグルは一時期こういったカンファレンスから距離を置いていた時期もありましたが、ここ数年はマーケッターとの対話を丁寧に行い、業界に対して啓蒙していく立場であることを明確にした感があります。

 

今回も、初日のキーノートスピーカーとしてGoogleのAdWordsのプロダクト担当ヴァイス・プレジデントのジェリー・ディシュレル氏が登壇しました。直前の5月下旬に開催された Google Marketing Next 2017 のおさらい的な内容でしたが、数多くの発表の中でもGoogleがどこにフォーカスを置いているのか、そして今後のGoogleの方向性が垣間見れたので、キーノートセッションの内容をご紹介したいと思います。

 

Search Engine Landのジニー・マーヴィン氏との対談形式で開始した本セッションでしたが、冒頭でディシュレル氏は、「生活者の(情報に対する)要求と期待はここ数年で上がってます。特にモバイルにおいては。」と述べています。忙しく、せっかちな生活者は短い時間枠の中で、よりアシストされた情報体験、よりよい広告を求め、探している情報に早く、正確に、邪魔されることなく到達したいのです。そのため、AdWords については3つの主要な取り組みから、この課題に対応しています。

 

1. Google アトリビューション〜機械学習によるさまざまな自動化は進む

「モバイルがメインストリームになる中、アトリビューションはさらに重要です。マーケッターは、マーケティングチャンネル全体で適切な評価と予算配分をする必要があります。それを大量のデータで機械学習をかけ、広くAdWordsユーザーに使ってもらえるように本機能を無料で提供しています。Googleアトリビューションは、AdWordsとDoubleClickのデータをカバーし、選択したアトリビューションモデルで分析を実行し結果を表示してくれます。また、一定のデータ量があれば、アカウントに蓄積されたデータを使って、ビジネス目標にどの広告、どのキーワード、どのキャンペーンが最も貢献したかを自動的に判断するデータドリブンアトリビューションモデルを使うことができます。」

 

ディシュレル氏は、数多くのマーケッターと対話している中で、2017年はラストクリック評価から脱却する元年であるという感覚を持っているようです。これまでもAdWords、Google Analytics、Adometryなど、アトリビューションに対する取り組みはしてきましたが、どれも決定版とは言えませんでした。今回はGoogleのプラットフォーム、データ資産を横断したソリューションに仕立てあげてきたところからしても、本腰を入れて広告効果の適切な評価と予算配分を推進しようとする意気込みが感じられました。

 

「Googleアトリビューションのコアにもなっていますが、機会学習の技術は、自動入札、マッチング、アトリビューション、などなど、かなりGoogleの広告プロダクトで広範に使われています。広告運用に伴いユーザーにかかるさまざまな負荷を下げて、システムの自動化ではまだ当面は対応できない、さまざまな広告戦略の策定と実施にフォーカスしてもらうのが主眼であるとしています。つまり、機械学習による自動化は進むというのが自然な考え方であるとしています。これまで運用型広告の従事者は、自身のキャンペーンにおけるさまざまな変数に対して、主導権を持って取り組めましたが、将来的には、ディープニューラルネットワークの動きのように、キャンペーンの入力データの「インプット」に対するコントロールは引き続きあるものの、機械学習による処理でブラックボックス的に出力される「アウトプット」に対しては、信用し、受け入れていくことがより求められるでしょう。」

 

2.オーディエンスターゲティングはより精度と柔軟性を高める

「検索広告向けリマーケティング(RLSA)、カスタマーマッチ、類似ユーザー機能に加え、検索連動型広告で「購買意向の強いユーザー層」が実装予定です(今秋かと思う)。なぜ今、検索に対してこの機能なのかという質問に対しては、AdWordsの論理的な進化の一環だと考えています。冒頭でも触れましたが、生活者は短い時間の中で、適切な情報に、早く到達したいというニーズを満たすためにはオーディエンスデータは重要なのです。この次は何か?という質問に対しては、まだまだやれることは多いと思います。購買意向の強いユーザー層もまだセグメントとしては一部なので、それを拡大しないといけないです。類似ユーザー機能もバージョン1なので、より精度を高め、柔軟なものにできる余地はあります。今後半年から1年間にかけてはそういったことに注力していくでしょう。」

 

3. モバイルでの体験をさらに改善〜検索連動型広告とディスプレイ広告のAMP化

「AMP対応のベータ版がリリースされましたが、ユーザーは一刻も早くAMP化に取り組むべきなのか?という質問に対しては、そもそも広告主は優れたモバイルサイトを持つことが必須です。その上で、次にページのロード時間の課題にぶつかります。3秒以上ページのローディングにかかる場合、50%のユーザーは放棄してしまったり、ロード時間が1秒加算される毎にコンバージョン率が20%落ちるというリサーチ結果もあります。ロード時間が速いと、よいことが多いのです。」

 

「AMPのトラッキング問題に関しては認識しており、すべてのトラッキングがAMPで問題なく実装できるように考えています。とりわけ、Google Analyticsでの対応は数ヶ月中にロンチを期待できるかと思います。」

 

「ただ、ユーザーにはサイトの一部を使って、早期に実験することをおすすめします。初期のパイロットユーザー広告主においては、ページロード時間が5x、7x改善したり、コンバージョン率も大きく改善するなどの結果が出ています。」

 

Purchases on GoogleとAMPの関係性は?

「Googleがホスティングしたページのショッピング広告から直接購入を完了できる、”Purchases on Google”(Buy Buttonと言われていたものですね)は、直接的に私のチームが担当しているわけではないですが、自分もつい先日その機能を使って物を買ったのですが、検索してから購入が30秒くらいで完了しました。非常に便利な機能です。AMPとどう関係があるかという質問に対しては、”Purchases on Google”はEコマースという特定の目的に向けたものですが、AMPは(Googleのログイン認証情報や、クレジットカード情報など)Eコマースのための機能などはもっていませんし、もっと一般的な用途に向けたものです。Eコマース系の広告主であれば両方試してみることを推奨します。」

 

2つの「店舗売り上げコンバージョン」(store sales)の計測ソリューション

「先日のGoogle Marketing Nextで発表された方式は2つあります。一つは、ロイヤリティプログラムなどで顧客のメールアドレス情報があり、店舗の売り上げと紐付けられている場合、そのデータをインポートして、クリックと店舗売り上げコンバージョンをメールアドレスを使って紐づけることができます。もちろんプライバシーに配慮した形で。これは今、世界中のどの国でも使うことができます。」

 

「もう一つのソリューションはよりユニークなもので、インテグレーションは何も必要なく、ご自身のアカウントに自動的に数字が表示されます。これは今のところ米国のみのソリューションです。これは、同じようにクリックから店舗売り上げコンバージョンを測定するものですが、Googleの金融業界のパートナーのデータを使って紐付けます。米国の約70% のクレジットカード・デビッドカードの購買データをカバーしているものです。十分な売り上げデータがある店舗の場合は、自動的にこの数字が管理画面に表示されます。」

 

「Googleが開発した暗号化の技術を使っていて、金融パートナーからのデータも、Googleからのデータも、完全に暗号化された形でやりとりされます。ですので、購買データの中身も見れませんし、ある程度集計した単位でしか見れません。」

 

このソリューションは現在は大手リテーラーが対象になっていると思うが、もっと小規模の店舗にも展開する予定はあるのか?という質問に対しては:

 

「もちろんその計画です。もっと多くの国の多くの広告主に使ってもらえるように展開したいと考えています。ただ、やるべきことはいくつかあり、アルゴリズムの改良を続けるのはもちろんですが、より精度を高めるために、Bluetoothビーコンの設置をかなり大量にしています。」

 

オンライン/オフライン連携が本格化か

上記に関しては、どれもGoogleとして注力をしている分野だと思いますが、SMX Advancedで参加した他のセッションからも、オンライン-to-オフラインの動きが活発化していると感じました。というのも、Facebookも同じように、CRMなどのパートナーと組みつつ、自社の広告と店舗での売り上げを紐付けようとする動きがあるからです(記事「Facebookから店舗への来店数と売上を計測するソリューションが登場」)。広告効果の高さを示すためには、今まで含まれていなかった店舗での売り上げを考慮するのは至極当然の動きかと思いますし、技術的にも可能になり、広告主のニーズもついてきたと言え、いろんな意味で盛り上がっておかしくないタイミングかと思います。

 

一方で、別のセッションでは、テレビ、音楽ライブ、スポーツの試合、天気などと、その内容に連動したオンライン施策をリアルタイムで自動的に展開する、という「モーメントベースマーケティング」の話がありました。時代のニーズに合った、新しい手法だと思いました。これに関しては別の記事で紹介できればと思いますが、それも含め、今年は「オンライン/オフライン連携」がメインストリーム化する可能性を強く感じたSMX参加でした。

本セッションは主催のSMXのYouTubeチャンネルでも公開されているので、全編ご覧になりたい方はこちらから。

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