動画広告が配信されるコンテキストを最適化するソリューションを提供しているChannel Factory。AIと人による二段構えの分類精度や価格とパフォーマンスを保証する運用支援、そしてYouTube Measurement Partnerとしての圧倒的なデータボリュームを強みに、世界的ブランドから支持を集めています。今回は、日本法人を率いるマネージングディレクターの前田智之さんと、アジア市場を統括するKartik Mehtaさんに、Channel Factoryのサービスの魅力や日本市場での戦略、今後の展望について伺いました。
話し手
株式会社Channel Factory Japan
マネージングディレクター
前田智之さん
Channel Factory
Head of Asia – Growth Markets
Kartik Mehtaさん
聞き手
アタラ株式会社
代表取締役CEO
杉原剛
目次
YouTubeの全動画を分析・キュレーションしターゲティングする「ViewIQ」
杉原:まず、自己紹介をお願いします。
前田:Channel Factoryの日本の代表を務めている前田と申します。これまで約20年、Eコマースやメディア、エンタープライズ領域でキャリアを積み、グローバル・スタートアップの日本進出に3回ほど関わりました。日本法人の立ち上げやジョイントベンチャー設立をリードし、事業のスケールアップと成長を推進してきました。
Mehta:私はKartik Mehtaです。Channel Factoryで日本、インド、東南アジアを統括しており、来年には最高事業責任者兼アジア統括として、さらにいくつかの地域も担当する予定です。Channel Factoryには2024年初めに参画し、それ以前はAPAC、ヨーロッパ、米国のテクノロジー企業やアドテク企業でリーダー職を歴任してきました。
杉原:Channel Factoryの会社概要もお願いします。
前田:Channel Factoryは2014年に設立されました。カリフォルニアのロサンゼルスに本社があり、現在およそ700名のエキスパートが在籍しています。当社はYouTubeを中心に、動画広告がどのコンテキストで表示されるかを最適化するソリューションを提供しています。AIの技術とマネージドサービスによる人的コンサルティングを組み合わせ、私たちのソリューションは、価格とパフォーマンスの両面で成果を保証し、確かな結果を導き出すことを特徴としています。
杉原:Channel Factoryさんのプロダクトやサービスの全体像を少し詳しく教えていただけますか。
前田:私たちが提供しているのが、独自のAIテクノロジー「ViewIQ」という動画のキュレーションができるプラットフォームです。
私たちはGoogle公式の「YouTube Measurement Program」に認定された公式のサービスプロバイダー(YouTube Measurement Partner)なので、YouTubeの全てのコンテンツにアクセスすることができます。それによって、通常のパブリックAPIの約900倍のデータボリュームの大量動画を分析・キュレーションが可能になり、ターゲットを絞り込んだときにCPMが高騰する、ターゲティングを絞り込んだときにボリュームが出ない、などの悩みを回避しやすいのが強みです。
杉原:YouTube Measurement Program認定のパートナーは、数少ないのではないでしょうか。
前田:YouTube Measurement Programの認定は、GoogleやYouTubeのポリシーを遵守していること、市場需要が強いこと、業界内で実績があることの証明でもあります。この認定を受けるということ自体非常にハードルが高くなっています。私たちはグローバルでも数少ないパートナーの一社であると認識しています。
人とAIの二段構えで精度を高める
杉原:ViewIQでしか見られないデータもあるということですね。
前田:はい。YouTubeではクリエイターが投稿時に自己申告で約15種類のカテゴリから選んでコンテンツをアップするのですが、そのカテゴリが実際のコンテンツと齟齬が生じることがあるんですね。ViewIQでは、コンテンツを全てAIで分析して、最終的に人の目で検証した上でIABカテゴリ(Interactive Advertising Bureauによって作成されたインターネット広告のための分類「Content Taxonomy」のこと)へ再定義します。これにより、サブカテゴリまでさらに精緻に分類できるようになるのです。

ViewIQのブランドセーフで文脈適合かつ高成果を実現する管理画面
杉原:カテゴリの正確性を、人とAIの合わせ技で担保しているわけですね。
前田:はい。ダッシュボードではコンテンツの分類を見ることができます。例えば小さな子ども向けのコンテンツはYouTubeで人気があるのですが、子どものコンテンツには広告が当たらないように除外するということもできます。
杉原:その診断結果を見ながら、例えばHIKAKINさんのような大型チャンネルも含めて面を指定してキャンペーンを展開していくイメージですか。
前田:そうですね。ブランドによって、どのコンテンツ、どのチャンネルがふさわしいかが変わってきます。ブリーフ(クライアントのオリエン資料)の中にはKPIであったり、ターゲットの年齢であったり、さまざまな要素が含まれています。そういったものをもとに、いちばん望ましいチャンネルをキュレーションすることができます。
杉原:これは、プロダクトとして、何かキュレーションしたものを出してくれるのですか。
前田:はい。チャンネルリストを出すことができます。そのため、広告を当てたくないコンテンツと当てたいコンテンツを分けて、望ましいチャンネルリストをキュレーションする、そういったプラットフォームです。
また、ViewIQは各動画がブランドにとって適切かどうかを診断してくれます。通常のタグだけではなく、トランスクリプトで文字化できるのですが、政治的なコメントがあるとか、陰謀論のようなものとか、いろいろなフラグがあります。これをAIで見ることができるのです。
杉原:政治的か、セクシャルか、ドラッグか、言葉遣いとか、といったことですか。
前田:はい。ブランドによって許容できる場合もあれば、避けたい場合もあります。その許容度によってチャンネルを選ぶことができます。段階的に、ボリュームやターゲティングの広さを調整することもできます。
あとは、ヒストリカルパフォーマンスという項目では、過去に実施したキャンペーンで実績が出ているものも見られます。パフォーマンスの面でも最適化ができるので、目標に基づいて配信できます。
杉原:ヒストリカルというのは、A社で使っていたらA社の実績ではなく、他のクライアントも含めたパフォーマンスということですか。
前田:そうですね。これはChannel Factoryの得意としているマネージドサービスの一つです。お客さまである代理店に対して、キャンペーンを実行しています。その中で積み上げた実績をもとにしています。
杉原:CTRが高かったものをセグメントしたり、カテゴリでセグメントしたり、いろいろな形でセグメントできる印象です。
前田:はい、そのとおりです。パフォーマンスでチャンネルを選ぶことができます。CPV、CPM、動画視聴率など、さまざまな切り口でチャンネルをフィルタリングすることもできます。
杉原:ユーザーが直接セグメントを作るというより、ViewIQ自体が分析ツールのようなものなのですね。
前田:そうですね。YouTubeをパフォーマンス、規模感、コンテキシャルで分類してキュレーションすることができるのです。
価格とパフォーマンスをコミットする運用支援
杉原:キュレーションはユーザーが直接行うのですか。
前田:キュレーションは当社が実施します。基本はフルマネージドで、代理店のリソース拡張のような座組みです。一方セルフサービス運用にも対応しており、当社が作成したチャンネルリストを提供し、代理店側で配信運用していただくということも可能です。
前田:また、当社の強みの一つとして「ギャランティする」というものがありますが、これは価格とパフォーマンスを保証する、という点が支持されています。ブリーフをいただければ数日でメディアプランを提示し、条件付きで達成をコミットします。
杉原:今見せていただいたViewIQのデータや、分析やフィルタリングをした上でのメディアプランについて、キャンペーンを打った場合はどのくらいギャランティングします、という提示をしていただけるということですか。
前田:そうですね。このご予算と、この視聴完了といったKPIについて、この期間で達成できますということを私たちが保証します。
杉原:すごい自信ですね。
前田:代理店プランナーにとって「価格と成果の保証」= コントロール力 × 信頼性 × 効率性。計画立案を“受け身”から“戦略的・主体的”なプロセスに変える大きな武器となります。
杉原:あえて聞きますが、この見込みが外れることはないのですか。
前田:プランニング段階、キャンペーンを実行する前の段階で私たちが保証します。仮にできなかったら、プランニングの段階で難しいとお伝えし、逆にこの条件だったら達成できるというご提案もさせていただきます。
杉原:すごいですね。
前田:ありがとうございます。あとはブリーフをいただいて、一緒にブリーフを詰めるサポートもさせていただいています。伴走するような形でプランニングの段階からご一緒させていただくイメージです。
他社との差別化:YouTube Measurement Partnerとしての圧倒的な強み
杉原:機能面でのお話をいろいろと伺いましたが、どのあたりが一番、他社さんのプロダクトやサービスと比べて強みだと思われますか。
前田:あらためて、私たちの強みはYouTube Measurement Partnerであるという点です。圧倒的なデータボリュームを扱えることが特徴で、APIアクセスについても、パブリックAPIは1日あたり5万に制限されていますが、私たちは1日4億5000万アクセスが可能です。YouTubeには常に新しいコンテンツがアップロードされ、バイラルで動いていますが、それらをしっかりキャプチャできる点が大きな強みだと考えています。
おそらく他社は基本「測るまで」が多いと思われますが、Channel Factoryは測るだけではなく実行するところまで担う点が異なります。
あとは先端的な話になりますが、外部パートナーと連携したアテンションの計測がすでにグローバルで始まっていて、日本でもこれから取り組みが進む予定です。アテンションによってメジャーメントをYouTube上でも可視化し、より高い広告効果やブランド力との相関なども今後明らかになってくると思います。
杉原:提供形態的には、御社のマネージドサービスを使えばアテンション継続も自分でできるのですか。それともご希望がある場合に、ということですか。
前田:ご希望がある場合です。設定はそこまで難しくなくて、キャンペーン名とキャンペーンIDにアテンションを加えることで継続が可能です。これからテストが始まる段階ですね。
杉原:それは面白いですね。
事例:既存キャンペーンを可視化し、無駄配信を発見・改善
杉原:導入はどのような形で進めるのでしょうか。
まずクライアントに、プレースメントレポートをCSVファイルなどで提出していただきます。そのデータを元に、既存キャンペーンの「0次分析」としてコンテンツ戦略の可視化を実施、ヘルスチェックを提供。それによって既存のキャンペーンの分析レポートをお出しします。プレースメントをいただいて、1週間程度でレポートを提出しています。その後ブリーフも同時に行ってキャンペーンを実行いたします。
杉原:どのようなクライアントが多いのですか。
前田:グローバルではブランド毀損に敏感な大手ブランドを中心に導入が進んでいます。日本でもPCメーカー、ファッション系、政府系、CPG(消費財)系などで取り組みが始まっています。
杉原:何か事例を教えていただけますか。
前田:あるグローバル・テック企業のケースでは、約29万チャンネルを分析した結果、約43%が不適切なコンテンツに掲載という示唆が出ました。子ども向けでいうと17%、金額ですと約90万以上が子ども向けのコンテンツに出ており、その傾向はどのクライアントでも多いと思われます。コンテンツ戦略分析(0次分析レポート)をまずご用意し、既存キャンペーンの可視化を行います。
杉原:これを見ると一目瞭然ですよね。20%も不適切に出ていて、無駄な広告費がこれだけあったのだな、と。ではこのフィルタで出なくすることができますよ、という説得材料になりますね。
前田:他案件では60%に達する例もあり「ブロード配信=CPMは安いが、面の質が悪く無駄が多い」という落とし穴が可視化されます。効率性の中の罠のようなものが大いにあるなと思いました。
杉原:不適切面の除外だけでもだいぶ効きますね。
前田:はい。そこで削減できた予算を再投資し、ブランドセーフティだけでなくパフォーマンスも改善、全体として事業成長につながるのです。
日本市場での挑戦:日本の文化に即した戦略とイノベーション・ハブ設立
杉原:日本市場での戦略についてはどうお考えでしょうか。
前田:今すでに電通ジャパン・インターナショナルブランズとのパートナーシップを開始しています。加えて、日本の文化、言語、商習慣に即したソリューション提供のため、イノベーション・ハブを設立することをリリースいたしました。
業界のエキスパートを採用して国内の雇用を強化していくことが目標ですが、特に日本のマーケットに関しては、サービスの仕方も商習慣も違うということを私たちのグローバルチームも理解しています。その上で日本のマーケットのプランニングから世界にグローバル成長させることも考えています。日本のマーケットに進出してセールスチームをつくるだけではなく、そこからさらにイノベーションを起こしていく位置づけで日本に進出しているのです。
特にコンテンツに注視して、ブランドセーフティかどうかをどんどんブラッシュアップしていくことはもちろん、ローカルのアドテクやスタートアップの方々とも連携しながら新しいことに取り組んでいきたいです。
杉原:スタートアップはどんな協業パターンが考えられますか。
前田:例えばですが、YouTubeの運用を経験したことのある人材を探すのは非常に難しいという声があります。採用市場を見てもそういった人材は人気が高く、なかなか見つかりません。一方で、育成の機会をつくることは可能で、ブートキャンプのような形でYouTubeのコンテクスチュアルターゲティングを活用した運用方法をトレーニングできると思います。また、すでに独立している運用者やフリーランスの方々も数多く存在しており、そういった方々は職人的な技術で実際のオペレーションをこなしています。私たちとしては、そうした方々と積極的に連携し、健全な形でマーケットを成長させていきたいと考えています。
杉原:ちなみに、すでに電通さんとの取り組みが始まっていて、今後はエンタープライズのクライアントを多く持つ他のエージェンシーさんとも協業されると思いますが、基本的には代理店にフォーカスされるのですか。それとも、マネージドサービスとは別に、日本でも直クライアントを獲得していくお考えですか。
前田:基本的には代理店との取り組みになります。国内の主要代理店や、ブランドを抱える広告主さんを支援している代理店、またグローバルブランドの日本市場における展開を担う代理店、さらにインディペンデント系の代理店とも連携していきます。私たちと組むことで、YouTubeやMetaの施策をスタートできますので、インディペンデント系とも積極的にご一緒させていただきたいと考えています。
杉原:インディペンデントというのは、具体的にはどのようなところですか。
前田:「インディペンデント」とは、地方広告会社や専業系(SP・PR・デジタルなど)、独立系プロダクション発祥の代理店であり、大手広告グループや外資系ネットワークに属さず、独立した資本と経営体制のもとで独自のクリエイティブやメディア戦略を展開する中堅・中小規模の広告代理店を指します。
杉原:なるほど。イメージが湧きました。
今後の展望:新プラットフォーム拡張とリテールメディア連携
杉原:今後の展望なども教えていただけますか。
前田:私たちは現在クロスプラットフォームの拡張も進めています。日本では未発表ですが、Metaでの実行にも対応準備を進めており、将来的にYouTube×Metaを横断したギャランティ・コンテキスチュアル・ターゲティングで実行できるサービスを今後拡張していきます。
Mehta:補足すると、ブランド適合性、安全性、Metaキャンペーンの効率化を活用して、Metaでキャンペーンを活性化するために、すでにこの地域のいくつかのパートナーと協力しています。現時点ではYouTubeほど大規模ではありませんが、来年にはMetaにもっと力を入れていきたいと考えています。
前田:現時点ではYouTubeとMetaに注力していますが、将来的にはTikTokなど他のプラットフォームにも拡張していく予定です。海外ではすでにいくつかのソーシャルメディアで取り組みが始まっており、今後さらに増える可能性があります。私たちは常に最新のデータを活用することを強みにしていますので、こうした拡張を日本のお客さまにも提供していきたいと考えています。
杉原:広がるのは楽しみですね。
前田:ありがとうございます。今日は詳しく触れませんでしたが、リテールメディアとの連携も重要なテーマだと思っています。私は以前Amazonのコンサルティングを提供するFlywheel Digitalにて日本代表を務めていたこともあり、その知見から見ても、現在最も成長している分野の一つはリテールメディアだと考えています。Amazonはフルファネルで展開していますが、それはAmazonに限った話ではありません。今後、他のリテールメディアも出てきますし、私たちはGoogleベースのソリューションを持っていますので、上位ファネルやミッドファネルでの連携も検討できるのではないかと考えています。
杉原:ありがとうございます。本日の対談を通じて、動画広告におけるコンテキスト最適化の重要性と、AIと人の知見を掛け合わせた精緻な分類、価格とパフォーマンスを保証する運用、そしてYouTube Measurement Partnerとしての圧倒的なデータアクセスを融合したChannel Factoryの独自の強みをよく理解することができました。広告主が求める”安心”と”成果”を両立させることができると感じました。日本市場での展開も楽しみです。本日はありがとうございました。