インハウスとは、事業を加速させる『質の良い燃料』である:ピクスタ 髙木恩さんに聞く

インハウスとは、事業を加速させる『質の良い燃料』である:ピクスタ 髙木恩さんに聞く

アタラ 伴走型インハウス化支援サービス

『突撃!隣のマーケター』連載の趣旨

運用型広告の実施などのマーケティング活動を自社で内製化する「インハウス化」。ここ数年、日本においてもインハウス化の流れが加速してきているという現状があるが、インハウス化をどう捉えるかは、企業によって異なるのではないだろうか。
同連載では、毎回異なるインハウスカルチャーを持つ企業にアタラの井谷が突撃し、「お宅のインハウスカルチャーとは何ぞや?」をインタビューしていく。

 

今回の隣のマーケター:ピクスタ株式会社 髙木 恩さん

話し手:ピクスタ株式会社
プラットフォーム推進本部 マーケティング部
部長 髙木 恩さん

聞き手:アタラ合同会社 井谷麻矢可

リンク:

今回突撃したのは、ピクスタ株式会社。その社名にもなっているサービス「PIXTA」は、写真やイラスト、動画、音楽などの素材を提供するクリエイターと、素材を探している人・企業を繋ぐ日本最大級のデジタル素材のオンラインマーケットプレイスであり、日本以外に韓国・台湾・タイなどのアジア圏にも市場展開している。

「PIXTA」から始まった同社のサービスだが、その後、カメラマンと撮影してもらいたい人を繋ぐ出張撮影プラットフォーム「fotowa」(2016年~)や、芸術家とファンを繋ぐ芸術家支援プラットフォーム「mecelo」(2018年~)など、いくつものユニークなクリエイティブプラットフォームを開設・運営し、経営規模を拡大してきた。

現在3つのサービスを展開している同社は、2005年の創業当初から一貫してインハウスマーケティングの姿勢を貫いている。事業フェーズが異なるいくつものサービスを抱えながらも、インハウスの姿勢を貫く理由とは一体何なのだろうか。現在、プラットフォーム推進本部 マーケティング部 部長として自社のマーケティング活動を統括する髙木さんに、これまでの道のりや今後の展開についてお聞きした。

 

スタートアップ企業ならではの悩み

同社のインハウスマーケティングの歴史は、役員の1人である遠藤氏がピクスタに参画した2010年まで遡る。当初は遠藤氏が、役員業務の傍ら広告業務も兼任で預かっていたという。

同社が「インハウスマーケティングでいこう」と決めたきっかけは、他のインハウスカルチャーを持つ企業同様、人的リソースや予算が潤沢でない中でも効果を最大限追い求めたいという部分が大きかった。それに加え、インハウスならばコストコントロールがしやすいという、スタートアップ企業ならではの着眼点もあったそうだ。

髙木「盤石な基盤のないスタートアップ企業なので、タイミングによってマーケティング予算が大きく変わるのですが、インハウスならば経済的なコントロールがしやすく、スピード感を持って経営判断をマーケティング施策に反映できるという点が大きかったようです。また、外注してしまうと社内でスキルやナレッジが溜まらないのではないかという懸念もありました」

その後、事業が徐々に拡大する中で全体の人員も増えはじめていたが、依然としてマーケティングは1~2人体制が続いていた。そのような中で、2015年に髙木さんがウェブマーケティングチーム(マーケティング部の前身)に異動したことで正式に3人体制となり、同社のマーケティングチームの基礎ができあがった。

髙木「私は2014年入社なのですが、入社当初は経営企画部でブログ翻訳や採用アシスタントを半年ほど経験しながら自社サービスについての知識を深めていました。その頃、会社として、もっと広告を活用して『PIXTA』を伸ばしていきたいというタイミングに差し掛かっていたこともあり、ウェブマーケティングの社内公募があったので手をあげました」

3人体制になり、高木さんと海外担当員が広告運用、もう一人がSEOを担当する形が整った。しかしこれまで広告運用の経験がなかった髙木さんは、独学では苦労も多かったという。

髙木「任された当初は入門書などを参考に自力で運用してみたのですが、理論は理解できても実践ではセオリー通りにいかないことも多いですし、思うように成果が上がりませんでした。また、原因を追求したくてもどの指標や着眼点で分析すればいいのかわからない。媒体のヘルプページを見ればある程度分かるというものの、知識ゼロの状態では調べるにも効率が悪い・・・。

しかし上場を控えた時期ということもあり、早急にパフォーマンスを改善しなければいけない。かといって外注はしたくないという八方塞がりな状態でした」

 

PIXTAで蓄積したナレッジが、fotowaで活きる

そこで同社が考えたのが、すべての運用をアウトソーシングするのではなく、運用知識を持つコンサルタントに伴走してもらうという方法だった。連載第2回で紹介した日本旅行株式会社もコンサルタント伴走型のインハウス運用を行っているが、この方法ならば社内にナレッジを蓄積しつつ現状の運用パフォーマンスも向上させることができる。

髙木「自分たちのやっていることが果たして正解なのか否かを、プロの視点から見てもらえるのは非常に心強かったし、ナレッジを蓄積するスピードも独学よりも圧倒的に早いと思います」

コンサルタントと伴走し始めた当初、広告配信を行っていた事業は「PIXTA」だけだったが、「PIXTA」の広告運用で蓄積したナレッジは、2016年にローンチしたサービス「fotowa」の広告運用にも存分に発揮されることとなる。

髙木「新規事業として『fotowa』を立ち上げた当初は『PIXTA』と比べてマーケティング予算も少なく、仮に外注したとしてもまともに取り合ってもらえなかったかもしれません。しかし我々には『PIXTA』で培ったナレッジがあるから、完全自社運用できるという安心感がありました。

これまで社内に蓄積したナレッジをフル活用し、少額予算かつ短期でいかに効果を発揮するかを考えながら運用できたのは、当初からインハウスを貫いてきたことによる大きな収穫でした」

ナレッジを横展開できる力は、様々な事業フェーズのサービスを抱える同社においては、スピード感をもってマーケティング活動を推進する上では欠かせない強みだ。さらに社内で運用する中で、「クリティカルに考える力」も養われたという。

髙木「広告指標や分析指標ひとつをとっても、正確に意味を捉えるのは本当に難しいことだと思います。例えば『セッション数』といっても、セッション数の増減は見ていればなんとなくわかりますが、セッションってどういうふうに計測されているのか、なぜ計測する必要があるのかまでは、他社にお願いしていた場合、理解する努力をしていたでしょうか。このような細部指標の本質的な理解が、後の成果を大きく分けることがよくあります。

ほかにも、運用型広告には自動最適化機能がありますが、我々のアカウントや広告グループによっては、コストコントロールの観点や売上への貢献度を考えると自動最適化を適用しないほうがいい場合もあるかもしれない。

『最適化がいいらしい』と世間が言うからといって、様々なフェーズの事業があるにもかかわらず十把一絡げですべて最適化対象としていいのか。そういった自問自答を常にし続ける力、マーケティング活動を通して自分たちが達成したいことは何かを考え続ける力は、インハウスだからこそ身についたと思います」

 

マーケティング部として全社的な課題抽出を

年々企業規模自体も拡大していっており、それに伴い2015年の部署設立当初は2名から始まった「ウェブマーケティングチーム」は、2019年より「マーケティング部」へと組織拡大し、マーケティングに携わる人員も8名以上にまで成長した。

子会社や海外拠点にも最低一人はオンラインのマーケティング担当を配置していることからも、同社がマーケティング活動にいかに傾注しているかがよくわかる。

髙木「弊社のマーケティングで特に難しいのが、様々なフェーズのサービスを複数抱えているということ。サービス規模や予算が異なれば、実行すべき施策や戦略も変わってくるからです。また、事業拡大の過程でいくつかの子会社も買収しているので、メンバーごとにサービスに対する理解度に差がある状態で業務にあたるのはかなり大変な部分もあります。

これまでは例えば広告担当者が全サービスの広告を、SEO担当者が全サービスのSEOを担当するというふうに、施策別に担当を割り振る形だったのですが、部になったことで、今後は『PIXTA』ならばPIXTA専属チームといったふうにサービスごとの担当制に変更していきたいと考えています。

そうすることで『広告ならばこの人におまかせ』といった丸投げ体制を防止できますし、サービスに対する愛着も増すと考えています」

またこれからはウェブマーケティングにとどまらず、マーケティング部として全社的なマーケティング活動を統括することにもなる。そのため今後はデータ整備や会社全体としてのマーケティング課題の抽出に注力していきたい、と髙木さんは語る。

髙木「SEO的観点ではサンプリングされていないデータを取得したいけれど、経営的観点では正確な顧客データを収集してビジュアライズしたいなど、現在各部署で達成目標がばらばらな部分があるということが見えてきました。まずは全社的に必要なデータを洗い出し、優先順位をつけ、必要なツールや環境整備を行っていく必要があります。

また、私自身現在もプレイングマネージャー状態なので、一緒に働いてくださるマーケターの方を採用し、組織として整えていきたいですね」

これまで同社のマーケティング活動の主力は集客やコンバージョンを目的とした施策が主だったが、企業規模が拡大してきた今、ベストプラクティスを推し進めるだけの方法には限界を感じる部分もあるという。各サービスの売上をグロースさせる上での課題とは何なのか。今後はそれを、各事業責任者と一つずつ検証していきたいという。

また、現場においては今活躍しているメンバーが着実に力をつけてきており、彼らが新しいメンバーにレクチャーするという良い循環が生まれている。

髙木「弊社の場合、マーケティングだけでなく経理など、他部署もすべて外注せずインハウスで完結させているため、他部署も同じような課題を持っていることがままあります。

そういった部署からのナレッジトランスファーを実践するケースが結構あるので、今後マーケティング部でも取り入れていけると、採用や教育に関してもスピード感を持って推し進めていけるのかなと考えています」

 

髙木さんとメンバー。皆フランクに意見を出し合い、ナレッジを共有している。
 

自社サービスの良質な燃料であり続ける

組織の拡大もあり、マーケティング活動において大きな転換期を迎えたピクスタ。同社にとってインハウスマーケティングとは、「良質な燃料」のようなものだと髙木さんが語ってくれた。

髙木「車のエンジンがサービスだとすると、マーケティングはサービスを加速させるための燃料のようなものだと思っています。そもそもエンジンがなければ燃料は必要ないけれど、エンジンだけ持っていても、燃料を入れなきゃ走れない。ただ燃料といってもなんでもいいわけではなく、質の良いものを使えばより加速させることができる。

弊社においても、これまでマーケティング部署が事業成長の核となるような役割を牽引してきたという自負があります。

もちろんインハウスに固執しているわけではありませんが、新規事業立ち上げ時のナレッジの横展開などは、インハウスだからこそスムーズにできたことであり、新規事業というエンジンに質の良い燃料を与えられた好例だと思います。規模や体制は変われど、これからもピクスタにとってなくてはならない、良質な燃料を精製し続けられる組織でありたいです」

同社の例から考えると、インハウスマーケティングの強みは、担当するメンバー全員がサービスに強い愛着を持ち、会社全体としてどう成長できるのかを考えて「質の良い燃料」を供給し続けられるという点にあるのかもしれない。

ピクスタ株式会社にとってのインハウス化とは?

インハウス化とは、事業を加速させる『質の良い燃料』である

髙木さん、どうもありがとうございました!
同連載はまだまだ続きますので、次回もお楽しみに!

※過去の連載※



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