デジタルマーケティングのインハウス化(内製化)に取り組む企業が年々増えています。しかし、単なるコスト削減目的でインハウス化を進めると、期待した効果が得られない可能性があります。アタラ株式会社が開催したオンラインセミナーでは、100社以上の支援実績に基づいた「インハウス化成功のための5つの視点」について解説。第1回となる今回は、戦略・目的編として、インハウス化を事業戦略の一部として設計するための方法を紹介しました。
目次
インハウス化が今、求められる理由
デジタルマーケティングの現場では、GoogleやMetaといった運用型広告の自動化が急速に進んでいます。こうした背景の中で、企業がインハウス化を検討するきっかけは大きく七つあります。

1.コスト・ROIの改善
外部の代理店に支払う手数料が増加し、それに見合ったパフォーマンスが出ているか不明な場合、インハウス化を検討するケースが多くあります。継続的に発生する手数料をカットすることで、マーケティング効率の向上を目指します。特に月間広告予算が500万円程度を超える段階からは、コストメリットが出やすくなります。
2.人材・組織育成
KPI定義や指標設計が代理店依存になっていては、社内に知見が残りません。持続可能なデジタルマーケティング活動を実行するため、社内の人材育成とナレッジ蓄積が急務となります。
3.戦略・事業の一貫性確保
マーケティング戦略と施策の一貫性を担保することで、経営方針に沿った中長期的なKPI達成が可能になります。
4.スピード・柔軟性の向上
施策変更が頻繁に発生する環境では、外部パートナーへの対応では間に合わないケースもあります。社内で完結することで、意思決定のスピードを大幅に向上させられます。
5.データ基盤の構築
広告データと他事業データを横断的に分析し、CRMや売上データと統合することで、より深い顧客理解が可能になります。
6.運用高度化と役割分担
AIによる自動化が効果的な部分と人間が関与すべき部分を明確に分けることで、工数削減と運用品質向上の両立が実現します。
7.ガバナンス・リスク
顧客データを媒体の管理画面にアップロードするカスタマーマッチなど、個人情報を扱う際は社内で完結させることが望ましいケースもあります。
インハウス化の落とし穴と対策
インハウス化は、一つのきっかけだけで急いで進めると失敗しやすいという点が重要です。例えば、代理店手数料が高いという理由だけでインハウス化すると、人件費や採用育成コストを考慮した際に費用対効果が合わないこともあります。また、社内に知見を残したいという目的で「OJT前提の丸投げインハウス化」を行うと、教える人がいないため学習コストがかえって増加します。適切な教育設計と外部パートナーの伴走支援を前提とした段階的実施が成功の鍵となります。
インハウス化の最適フェーズとは
インハウス化を検討するべき段階も重要です。コスト面では月間広告予算が500万円程度の規模、人材育成の観点では中長期的な育成体制が整備されている段階、事業面では広告が事業成長の中核となっている段階が適切なフェーズとされています。
目指すべき三つのインハウス化モデル
アタラが提唱するインハウス体制は「変化に適応する柔軟な組織能力」を持つことが本質です。全て自社でやるか全て外部に任せるかの二者択一ではなく、企業の成熟度に応じた三つのモデルが存在します。

ライトインハウス
運用リソースが確保できない段階での採用モデルです。インハウス化は進めたいものの、一時的にリソースが足りない場合、実行部分を外部パートナーに任せながら段階的に移管していきます。導入ハードルが低い反面、ノウハウが社内に残りづらいというデメリットがあります。
ミドルインハウス
一般的な「インハウス運用」と呼ばれるモデルです。運用実施とデータオーナーは社内で担当しつつ、戦略・戦術など上流段階は専門パートナーが補助します。媒体の自動化ソリューション活用により運用ハードルが低くなった一方で、パートナー依存が深まらないよう注意が必要です。
ヘビーインハウス
外部パートナーを介さず、自社で完結するモデルです。スピード感のある対応が可能な一方で、媒体の最新情報へのキャッチアップが課題となります。
どの業務からインハウス化を進めるか
デジタルマーケティングプロセスは「環境分析→戦略立案→施策立案→実行→レポーティング→改善活用」で構成されます。このうち、自社で必ず持つべき「コア業務」と、自動化・外部サポートを検討できる領域を明確に分ける必要があります。
自社で持つべきコア業務
– KGI・KPIの初期設定と事業成功定義の決定
– ペルソナやターゲットの定義
– 価値提案と訴求内容の設定
– 予算配分の意思決定
– テスト方針の決定と優先度付け
– PDCAにおける判断
自動化・外部サポートを検討できる領域
– ルーチン的なレポート作成
– 数字の監視
– 細かい数値の確認作業
この整理により、自社がどこからインハウス化を開始すべきかが明確になります。
インハウス化は単なるコスト削減施策ではなく、企業のマーケティング能力を高める戦略的な投資です。自社の現状と目指すべき姿を明確にした上で、段階的に進めることが成功の秘訣です。
アタラでは、企業ごとの課題に応じたカスタマイズされたインハウス支援を提供しています。インハウス化のご相談、具体的な施策立案などについては、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事の内容、登壇者の肩書きなどはセミナー実施時のものです