業務システム開発 事例紹介:株式会社朝日広告社


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オンライン、オフラインを統合したダッシュボード開発で
キャンペーンマネジメントを加速させる。


株式会社朝日広告社
iコミュニケーション局 局長補佐 兼 デジタルマーケティング部 部長
菅 恭一 様
iコミュニケーション局 アカウントプランニング部 部長
酒井 克明 様


総合広告会社である株式会社朝日広告社は、2011年3月にアタラとの共同開発したクロスチャネルの広告効果を可視化する統合型マーケティングダッシュボード「Attribution Dashboard(アトリビューション ダッシュボード)」をリリースしました。構想から3年。満を持してリリースしたダッシュボードを有する朝日広告社は、日本の広告会社の中でもアトリビューションマネジメントを推進するリーディングカンパニーでもあります。朝日広告社の菅様と酒井様に、CEOの杉原が開発の背景からアタラに依頼した経緯までを伺います。


■朝日広告社の事業について

杉原:あらためて、朝日広告社様の事業についてお聞かせください。

菅:朝日広告社は名前のとおり朝日新聞社と関わりの深い総合広告会社です。もともとは新聞に強い広告会社でしたが、1996年からデジタル専門部署を立ち上げ現在では全社的な戦略領域としてデジタル広告に力を入れています。その背景としては、メディアの変化にしたがって、マスからデジタルへの移行にいち早く着手することが必要不可欠になってきたからです。日本の総合広告会社のなかでも、デジタル領域には力を入れている方だと思います。全社におけるデジタル関連の売上シェアも10%弱を占めており、これは他の総合広告会社と比べて突出して高い比率です。上位総合広告会社でも3%程度ですので、弊社はデジタルも含めて総合的にバランスの良い売上構成比の広告会社だと言えます。

杉原:iコミュニケーション局とはどのような仕事をする局なのですか?

菅:もともとはインターネット広告を中心に、市場の成長とともに、リスティング広告やディスプレイ広告に力を入れ、成長してきました。しかし、ここ数年はデジタルマーケティング全般を網羅してクライアントの支援をしています。

酒井:いわゆるメディアセールスで成長してきた組織ではありますが、現在ではデジタルマーケティング全般のマーケティング、コンサルティングにも対応しています。メディアのプランニング、選定、運用、ツールの開発、コンテンツ制作、クリエイティブ、アクセス解析など、ワンストップなソリューションを提供しています。そうした各専門領域をアウトソーシングせずに中である程度対応できるよう組織づくりをしているのがユニークかもしれませんね。

杉原:社内で完結できるのが御社の強みですね。

菅:そうですね。思想として大事にしているのが「テクノロジーとアイディアの融合」です。iコミュニケーション局では常にアンテナを張り巡らせ、最先端のテクノロジーをキャッチアップし、クライアントのデジタルマーケティングにどう役立てられるかを考えています。生活者の気持ちを考えてコミュニケーションを設計するノウハウは、広告会社が古くから蓄積してきたものです。テクノロジーを生活者にどう結び付けるかは各広告会社が抱えている課題です。しかし、弊社はテクノロジーに詳しいiコミュニケーション局と伝統的なコミュニケーション部隊の距離がとても近いので、クライアントへ最適な提案を企画しやすい環境があります。このあたりの距離感も弊社の特徴の一つかなと思います。

杉原:オフライン、マス広告の総合広告会社としてやってきた歴史は、ネット広告専業会社さんとの大きな違いでもありますね。

酒井:弊社の特徴は、総合広告会社でありながら、ネット広告専業会社さんのような専門性を兼ね添えていることです。私はネット広告専業会社での経験もあり、ネット広告専業会社と総合広告会社の両方を経験しています。ネット広告専業会社がもつスピード感や運用力と、総合広告会社がもつコミュニケーション力や企画力をあわせもつ、そのユニークさが朝日広告社の一番の強みだと思います。


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■菅さん、酒井さんのお仕事

杉原:お二人のお仕事を簡単に教えていただけますか?

菅:私はiコミュニケーション局の局長補佐という立場で局全体を統括しています。iコミュニケーション局はアカウントプランニング部とデジタルマーケティング部の二つの部で構成されています。アカウントプランニング部は、メディアのプランニングや運用を中心に、クライアントと近い距離で営業と一緒に動く部隊で、酒井が統括しています。もう一つのデジタルマーケティング部は、デジタル領域の戦略立案、コンテンツ開発、広告クリエイティブ制作、解析、効果検証などをおこなっている部隊です。私が兼務でここも統括しています。


■アタラに問い合わせた経緯

杉原:2011年10月3日に、弊社と共同で開発させていただいた統合型マーケティングダッシュボード 「Attribution Dashboard」を御社はリリースしました。こちらのダッシュボードをご検討されるにあたって、アタラに問い合わせてくださった背景や経緯を教えていただけますか?

菅:杉原さんが独立してアタラを立ち上げられた2009年頃、お会いした際にオンラインのアトリビューションの話をしました。

杉原:そうでしたね。

菅:その頃から構想を練っていました。確か、2009年はad:tech tokyo初回の年で、某ブランドさんのセッションで「マスの効果はすべてウェブで見る」というようなレポートを見て、プラットフォームの必要性を感じました。

酒井:ちょうど、マーケティングダッシュボードについて語られはじめた時期ですね。

菅:ウェブ広告の効果測定といえば、当然ウェブの中で行われるものが大半でしたが、リスティング広告もマスやソーシャル、季節要因などの外部要因で結果は変わるわけですし、ウェブ広告の効果といってもウェブだけを見ていたのでは正確には測れません。オンライン、オフラインを含め、全体を見る、総合的に効果を見ることの必要性が高まることを感じました。

杉原:なるほど。

菅:オンラインのアトリビューションにも課題意識があり、積極的に取り組んできましたが、当然その先にはオフライン、マスがあってダッシュボードは必要だという話になりました。2008年にオムニチュア(現アドビ)のマーケティングスウィートのセールスパートナーになったのも、オンラインとオフラインを統合した分析が弊社に期待されていたからです。このような流れもあり、一度ダッシュボードを作ってみようということになったのが検討のきっかけです。

酒井:マスメディアですとレスポンスの効果検証することに広告会社側の抵抗があって、やるとしても認知度調査などが大半でした。それも、広告会社ではなくクライアントが独自でやっていることが多かったです。しかし、広告会社として広告サービスを提供していく上で、マスメディアも含めた効果検証は避けては通れない時代になりました。オンラインにもオフラインにも強い総合広告会社である弊社としては、どこよりも早く着手しなければならないという使命感がありました。当時、こうしたプラットフォームは、どこもまだもっていなかったので、それなら一番にやろうということで検討を進めていきました。

菅:2009年の後半から構想を練り始め、2010年の1月頃に杉原さんにご相談しています。4月から要件をつめて、10月に正式発注しました。振り返ると長いこと練っていましたね。


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■Attribution Dashboard(アトリビューション ダッシュボード)」について

杉原:「Attribution Dashboard」について、簡単に教えていただけますか?

菅:オフライン広告とオンライン広告の投下データとレスポンスデータを複合的に分析できるツールです。オフライン広告だとテレビ、新聞、ラジオ、雑誌、交通広告、屋外広告などを網羅しており、コールセンターなどのデータを取り込むこともできます。基本的には「見える化」を意識しています。深くて細かいところまでを見ようとするのではなく、各メディアの投下データとレスポンスデータの関連性や、投下データ同士の相関性を発見するためのツールとして捉えています。これまでは、マーケッターがキャンペーン終了後にデータを集約し、クライアントに報告するまでに1カ月かかるケースもよくありました。キャンペーンが終わってから次回に向けた改善を練っていました。しかし、「Attribution Dashboard」はキャンペーン実行中にデータを追加してキャンペーン期間中でも投下データとレスポンスデータの相関を分析でき、気づきを得ることができます。キャンペーン期間中でも改善できるのが特徴です。時系列とエリアに絞ってシンプルな作りにしています。


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(広告投下とレスポンスの関係を時系列に確認)


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(広告投下とレスポンスの関係をエリアごとに確認)


酒井:キャンペーン期間中は、いかに早く改善実行できるかが肝になります。どんなに立派な報告も、キャンペーンが終わってからでは遅いのです。キャンペーンの展開と分析を同時進行できるよう、スピード感を重視しています。

杉原:スピード感は重要ですね。

菅:プロジェクトメンバーの中では、デジタル領域やデータマイニングのスキルがない弊社の社員でも、キャンペーンのマネジメントができるようにしたいと考えています。クライアントからキャンペーンを預かっている営業が「Attribution Dashboard」を使ってデータを把握し、クライアントに軌道修正や改善の提案ができるようになったらいいなと考えています。

杉原:それはいいですね。

酒井:これからのキャンペーン運営は、スピード感をもってどれだけ多くのことに気づき、軌道修正などの改善ができるかがポイントですよね。そこを、私たち広告会社はクライアントからも求められています。そうした要望に応えるためにも「Attribution Dashboard」というシステムを使って、クライアントとよりコミュニケーションをとっていくことが必要になってくるのではないでしょうか。

杉原:社内に向けての見える化と社外に向けての見える化が前提にあって、その上でスピードを上げ、気づきも得やすくし、クライアントとコミュニケーションを取りやすくする。それが「Attribution Dashboard」ですね。


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■アタラに決めた理由

杉原:アタラに決めてくださった理由を教えていただけますか。

酒井:アトリビューションという言葉を教えてくれたのが杉原さんでした。広告の貢献度を可視化していくことは「アトリビューション」でもあると知り、アトリビューションの専門企業であるアタラさんが最初に思い浮かびました。杉原さんはオーバーチュア、グーグル時代からAPIに携わっていたこともあり、他の誰よりも技術面でも詳しいという印象がありました。すでに、アタラさんではAPIを各社とつなげてエンジンをもっていることも大きかったです。技術的にもアタラさんが一番だなと思いました。

杉原:ありがとうございます。

酒井:「Attribution Dashboard」のコンセプトは、データでとれるものはすべてAPIでとっていくということでした。だから、アタラさんでは、すでにAPIのエンジンを持っていらっしゃったので候補に入れやすかったです。なおかつ、アタラさんはその道のプロフェッショナル集団ですので、安心してお任せできるというのが最も大きな理由です。

菅:杉原さんにアトリビューションという考え方を教えていただいたこともありますし、アタラさんの企業理念といいますか、思想にも共感しているんです。

杉原:思想ですか?

菅:誤解を恐れずに言いますと、アタラさんの思想が弊社と近いなって思っているんです。システム開発が可能な技術力があるところは他にもたくさんあります。でも、何を作って、それをどのように使って、世の中にどういった価値を提供したいのかという思想に、共感してもらえることは少ないです。アタラさんとは、この思想が共通しているように思っています。

杉原:ありがとうございます。

菅:オンラインのアトリビューションマネジメントをサービスとして提供していると「分析をやりますよ」という提案を他の会社からよく受けます。「うちはビッグデータも扱えるので回しますよ」とか言われるのですが、正直それだけでは信用できません。物理的にデータは回せると思いますが、データの意味や、そのデータを使ってどんな価値を提供していきたいのかといった思想がないと、一緒に汗をかけないんですよね。その思想があるかないか、うちとマッチしているかが、譲れない基準であり、アタラさんにお願いをした理由でもあります。

酒井:意味と意義に共感し合えるかどうかということですね。

菅:そういうことだね。

杉原:そういっていただけると嬉しいです。素晴らしいお言葉ありがとうございます。


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■「Attribution Dashboard(アトリビューション ダッシュボード)」をローンチした反応

杉原:「Attribution Dashboard」をローンチした反応はいかがですか?

酒井:クライアントに「Attribution Dashboard」を提案して否定されたことは一度もありません。このシステムの話をすると「こんなことできる?」「あんなことできる?」と要望をたくさんいただき、期待が高まっています。社内では開発段階から、入れるデータの仕様策定などで試行錯誤しました。しかし、ローンチするにあたって勉強会を実施して説明したところ否定的な声は出ていません。今後、会社の資産としてどう位置付けていくのかといった議論はありますが、システムとしては良い取り組みなので「全社をあげて使っていこうよ」という前向きな声は聞こえています。実際の運用に乗るところまでは時間がかかっていますが、このシステムを開発した意味や意義については社内の共感を得られています。

菅:運用体制は改善の余地がありますが、営業は積極的に売っていきたいという意欲があり、そのあたりのバランスをとりながらコントロールしている状況です。


■クライアントの導入事例

菅:「Attribution Dashboard」をクライアントに導入していただいて分かったことがあります。新聞広告を打って購入を促進したところ、一回の投下でウェブサイトへの流入が数千人も増えました。ウェブサイトとの連動は設計していなかったので、読者がこぼれてきているという印象でした。新聞広告で購入まで完了できるように導線設計はしたのですが、ユーザーはメディアを跨いで自由に動いています。ウェブサイトに数千人も流れてくるとは思っていませんでした。でも、それが分かったので、新聞広告を投下する際にウェブサイトにも受け皿を用意したり、新聞からウェブサイトへの導線を引いたりなどの策を施すようになりました。「Attribution Dashboard」を使うとユーザーの軌道が把握できます。生活者は自由に動いていて、それは設計通りにはなりません。こうした気づきを得られるのも理想的な使い方だと思いました。

杉原:なるほどですね。

菅:アトリビューションを切り口にクライアントへ提案することが増えています。オンラインだけよりはオフラインを含めたダッシュボードの話の方が関心を惹きますね。クライアント側でもダッシュボードを作りたいという話が出ているけれど、なかなか実現には至らないと聞きます。オンラインのアトリビューションは流行りつつありますが、オフラインも含めて統合して見ることができるのはクライアントも含めて少ないです。ただ、ニーズはとてもあるので、弊社としてもクライアント側で見ることができるようにしていきたいと考えています。

杉原:データの部分などで若干の整備は必要ですが、将来的にはクライアント側でダッシュボードを使えるようにしていきたいということですね。


■今後のロードマップ

杉原:今後のロードマップについてお聞かせください。

菅:「Attribution Dashboard」にはビデオリサーチ社のデータをマスタに積んでいますが、諸々契約上の制限があるため「Attribution Dashboard」のシステムをクライアントに提供することはできません。ただし、ニーズはあるのでこうしたところの改善も今後の課題です。

杉原:「Attribution Dashboard」の打ち合わせではデータをどう準備するのか、とくにマス広告の部分をどうするかがチャレンジでした。チャレンジは残りますが、誰もやれていない部分でもあるので、ぜひ実現していきたいですね。

酒井:そうですね。ぜひ実現したいです。

杉原:これまでに世の中になかったものを生み出したので足りない部分は出てきますが、ここはクライアントの皆さんの要望を聞きながら、段階的により良いものにしていくことが、最終的には完成度の高い仕上がりになるのではないかと考えています。

菅:マス広告のデータ整理は必須です。マス広告のデータをどのように自動連携していくかは大きな課題です。現状は、各媒体、エリアごとのリーチデータなど、裏側のデータを更新するのも大変です。マスタで登録し直さなければなりません。登録作業自体は大変ではないのですが、登録するデータを作るのに手間がかかります。

杉原:デジタル施策みたいにAPIを接続すればという話ではないですからね。

菅:そうなんです。

酒井:データを作るところでは、かなり人海戦術で泥臭いことをやっています。やらざるを得ないですし、データを入れたのはいいけれど、どうやって見たらいいの?というところまで議論は尽きないです。

菅:マスメディアのデータはそろっていませんね。

杉原:データの規格が統一されていなかったり、紙でしか出てこなかったりすると聞いたことがあります。「Attribution Dashboard」を開発するうえで、良い意味で妥協せざるを得ない部分がありましたね。すべてのデータを統合したいけれど現実的に難しい。それであれば、何を優先すべきかの議論をよくしました。データの階層的な設計などは考えました。このあたりはノウハウになっていますね。

酒井:「Attribution Dashboard」は今後ただの見える化ダッシュボードにするつもりはなく、APIで取得できる情報は極力全て繋げていきたいと考えています。天気の情報だったり、渋滞情報だったり。他にも、購買データを入れたり、メディア軸だけでなくオーディエンス軸でも見られるようにしたり、バイイングプラットフォームと連携したりなどの構想もあります。

菅:今後もさまざまなデータ管理ツールが登場すると思うので、それらをつなげる大きな箱が必要になるでしょう。それを実現したいですね。近いところで言うと、いまの「Attribution Dashboard」は運用の品質を平準化するための仕様なので、その先のステップとしてはプロフェッショナルが使う仕様にしていきたいです。

杉原:いまはデータを蓄積するフェーズですね。データさえ入っていれば、あとは何でもできます。データが入っていないと分析もできません。いまはシンプルにデータを入れるところに注力して、複雑なことはその先で考えるのがよいですね。手間はかかりますが、いまからデータの蓄積をはじめていらっしゃることが素晴らしいです。

本日はありがとうございました!


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