仕事で関わりがある方によく聞かれるのですが、実は弊社はオフィスを持っておりません。

37シグナルズというアメリカの会社があります。中小企業向けのCRM「Highrise」や開発フレームワークRuby on Railsで有名な会社です。ここのジェイソン フリード 、デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソンが書いた本「小さなチーム、大きな仕事–37シグナルズ成功の法則」 (ハヤカワ新書juice)を読みました。

「会社は大きいほうがいいなんて幻想だ。今日では誰でも自分のアイデアをもとにビジネスを始められる。高価な広告枠、営業部隊、オフィス、いや、会議も事業計画もいらない。昼間の仕事をしながら、初めは週末の数時間を費やすだけで十分だ。小さな所帯で、シンプルに、迅速に、臨機応変に–それで僕らは成功している。二つの大陸に散らばった十数人のメンバーだけで数百万人のクライアントを抱えるソフトウェア会社37シグナルズは、その優れた製品だけでなく、常識破りな会社運営法でも、業界観測筋の目を釘付けにしている。その創業者とカリスマ開発者が、いまのビジネスに真に必要な考え方を示す。」(Amazon掲載の内容紹介から抜粋)

とても感銘を受けました。

「小さな所帯で、シンプルに、迅速に、臨機応変に」

私は20年近く、大きな会社も小さな会社も経験しています。特に大きな会社では、何事においても進めるのに時間がかかります。情報がlight speedで行き来するこの時代に、組織が大きい故にロスする時間や機会を恐ろしく感じるようになりました。

少々大げさに聞こえるかもしれませんが、「スピードがない会社はみんな死んでしまうのではないだろうか」と思うようになりました。

だから、まず所帯は大きくするつもりは全くありません。現在既に7名いますが、増えてもせいぜい10名。事業が拡大しても、どこかでは10名でやれるように事業規模を抑えることになると思います。

事業内容はシンプルに。ここはチャレンジだったりします。現在弊社はリスティング広告の自動化ツールのプロダクト開発と受託開発を行っています。一方で、リスティング広告の戦略立案やアトリビューション分析を中心にしたコンサルティングも行っています。特に受託開発やコンサルティングはクライアントのニーズに合わせてのものですので、シンプルにおさめるのはやや難しいですが、提供するプロダクトや、コンサルティングのフレームワークはなるべくシンプルを心がけています。

迅速に。まさにスピード。意思決定は早いです。毎週のWeekly Meetingは貸し会議室で実施しています。ここで情報共有し、全メンバーのコンセンサスを取り、アクションアイテムに落とし込みます。

そして、臨機応変に。この1年の中でもプロダクトの方向性の変更は何度かありました。今後もあると思います。日本語で「朝令暮改」はややネガティブな面にとらわれがちですが、前向きな朝令暮改はどんどんやっていかないと、決めたことに固執しすぎると、失敗につながります。間違っていたり、方向転換すべきことは、素直に認め、リスクを見極め、問題なければすぐに変えればいいのです。それだけのことです。

あと、株式公開などは考えておりません。事業資金の調達の方法としてはよいと思いますが、そもそも事業を大きく拡大する考えがないですし、今までの会社勤めの中でも、いつの間にか株式価値を上げることだけが第一義となってしまい、顧客のことを忘れてしまうということも多々あったということもあります。それに伴い意思決定がぶれたり遅れたりということも多かったのです。ですから少数で効率経営し、高い利益率を保ち続ける究極のプライベートカンパニーを目指せればと思っています。

これらを実現するにあたり、オフィスを持つことに魅力を感じませんでした。ネットも発達しています。無料で使えるGoogle Appsのような優れたツールはたくさんあります。Dropboxを使えば共有サーバーも必要ありません。Skypeでビデオ会議だってできます。ネットプリントを使えば、コンビニさえ近くにあればどこでも文書の印刷もできます。起業者向けのインキュベーションオフィスやサービスもとても充実しています。日本政策金融公庫のような国の融資制度は充実しています。今、起業の環境は非常に整備されているのです。

もちろん、オフィスを持たないことによるハードルもあります。気をつけてコミュニケーションを取っていかないと、情報伝達ができてないこともあります。すぐに話せる距離にいないと、チェック機能が働かないこともあったりします。メールやチャットだけに頼ってはいけないです。フェースツーフェースのコミュニケーションはとても大事です。

弊社の取り組みにも色々改善点はありますが、むしろそれを楽しみながらみんなやっています。オフィスレスでどこまでいけるか。壮大な実験ではありますが、何年かして、37シグナルズのように、一つのワークスタイルの例を示すことができれば、と夢を抱いています。

杉原剛

2010.12.25

1 Comment

  • 「小さな所帯で、シンプルに、迅速に、臨機応変に」

    もの凄く共感いたします!

    まず、すばらしいオフィスを持つことや、大きく、立派に見せるなど見栄を張るということに対し意味を見いだせませんし、無駄な固定費にしか思えません。

    リモートでプロジェクトを進められることには様々なメリットがあり、無駄な経費を削りつつ利益に繋がる仕事(時間)ができますよね。

    また、それらがノウハウとなっていくとも思いますし。

    フェイストゥフェイス。最後は「人」そこまで分かった上でのコミュニケーションができれば問題なしですね!

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