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CES2014が今年もラスベガスで開催されました。映画好きな私が個人的に一番感心があったのがサムソンの新型湾曲型テレビの発表イベント。プレゼンターとして「トランスフォーマー」シリーズ、「アルマゲドン」の監督兼プロデューサーで有名なマイケル・ベイ監督が立ったのですが、途中でプロンプターの動作がおかしくなってしまい、”We’ll wing it right now”(「とりあえずアドリブでいくわ」)(下記動画の50秒あたり)と前置きした上で、「自分は映画で・・」と話し始めたがすぐに止まってしまいました。このあたりで映像を見ても明らかに挙動がおかしく極度の緊張で頭が真っ白になってしまったのでしょう。

結局この直後”I’m sorry, I’m sorry”と言って途中で退席してしまい、残された大勢の聴衆からは寂しい拍手が起き、この後サムソンはどう事態を収束させたんだろう?という感じでした。

この出来事はすぐに様々なメディアやソーシャル上で取り上げられ、大失態に対して大ブーイングする人も多ければ同情する人もいる、という状況のようです。そもそもマイケル・ベイ監督の作品は賛否両論あり、「破壊シーンばかり多くハートがない作品」と揶揄されることも多いため、今回の件についてもかなり厳しい意見が飛び交っているように見えます。同氏は直後ブログでもこの件について釈明し、インタビューにも応じていますが、あまり効果があるように思えず、今後の人気下落が心配されます。ちょっと気の毒にも思います。

私がこの件を興味深いと思ってブログで取り上げるのはマイケル・ベイ氏の失態をおもしろおかしく語るわけではないです、当然。むしろ同氏の作品もキライではないし、見てるほうです(ザ・ロックなどはいい作品とも思う。パール・ハーバーは駄作だと思うけどw)。取り上げたかったのは、ニュートラルな視点で、このような場でのプレゼン環境構築の難しさ、アドリブの難しさです。

プレゼン環境構築の難しさに関して話します。CESなどの大きな展示イベントでは、各社とも最新の製品をデモするわけですが、大抵の場合完成しているわけでないです。試作機、アルファ版、ベータ版、いずれにしてもまだバグ等もあり動作も不安定。昔在籍したインテル社では、最新のプロセッサを搭載したパソコンと、その上で動作するソフトウェアをインテルのエグゼクティブがデモしながらプレゼンすることが多かったのですが、そのデモを準備するCorporate Demo Teamという専門チームがいたほどです。でも、動作不安定から準備も難航することも多かったですし、当日のステージでやはり動かないこともありました。特にインターネット時代になって通信がからむと、その難易度は倍増します。つながらない、データ通信が遅いなんてことは日常茶飯事。

偉い人になればなるほど失敗の度合いによってはCorporate Demo Teamの担当者はクビになるという噂も聞いたことがあります。ただ、それだけマーケティングの機会に対して極めて真剣ということです。何千万円、何億円相当もの費用をかけ、全世界が注目する一大マーケティングイベントで失敗なんてあり得ないというのが企業側の当然の考え方かと思います。

その視点で言うと、今回のサムソンもマイケル・ベイ監督も準備不足があったのかと思いました。今回はフィーチャーしたかった新型湾曲型テレビの問題ではなくプロンプターの問題だったわけですが、どんな場合でも二重、三重のバックアップは取っておくのが鉄則かと思います。テレビが映らなかったら?バックアップ機にすぐにすげ替える、それでもダメならプロジェクターその良さを説明したパワーポイントでやり過ごす。プロンプターがダメだったら?その場合のやり取りは考えておく。専門に語れる人をバックアップで準備させておく、など。それができていなかったか、できていたかもしれないけど機転が利かず、気がついたら監督が退席してしまった、のではないかと思うのです。

次にアドリブの難しさについて話します。何百人の前で話すのはそう簡単なことではないと思います。誰だって緊張します。私自身、20数年間のビジネスの中で大小ステージでのプレゼン、テレビ出演、誌面用インタビューをこなしましたが、実はかなりの緊張症です。過去に何度か痛い失敗もしながら、どうすれば話しきれるかを研究しました。今も大変緊張しますし、「できればやりたくないな〜」なんて社長らしからぬことも思ったりもしますがw、何とかやれてます。

事前の練習は不可欠です。外資系企業ではDry Runなどという言い方をしますが、本番を想定した予行演習は上手な人ほど厳密にやるのではないかと思います。私はその前に家などでエアプレゼンをかなりやるようにしています(仕事部屋でとかお風呂に入りながらとか)。あと、これは人によるかと思いますが、私個人はスクリプトを準備してそれに沿って話そうとしすぎるとうまくいかないことのほうが多いので、最終的にはアドリブが多いです。ただ、繰り返しになりますが練習は絶対に必要です。

スクリプトベースでもアドリブベースでも、結局限られた時間の中で、自分の言葉でどれだけ思いを伝えることができるかに尽きると思うのです。今回のベイ監督はアドリブに切り替わってから、結局何も製品について知らなかったことが露呈しまい(その後のメディアからのインタビューでもそこを突っ込まれていました)、本人も言ってましたが「そもそも書いてあるものでさえ難しい専門用語がいっぱいで、それを途中から自分の言葉で話すのはもはや無理だと思った。だから止めた。」と。

自信もって話すことができるようになるには、十分すぎる準備をした上で、自分に刷り込んで、「自分のもの」になっているときだけなのかと思います。

次回もエアプレゼンで練習しまくろう。

杉原剛

2014.01.12