昨日、ある会社の若手社員にキャリア形成について話す機会をいただきました。個人的なキャリア/転職相談を受けることは多いのですが、それなりにちゃんとした場で話すのはそういえば初めてだな、と思いました。

結論から言うと、とてもよい会だったと思います。
こういう場があると自分のそれを振り返るいい機会でもあります。僕以外の二人のスピーカーの歩んできたキャリアも面白かったです。

と同時に、参加者に何か役に立ちそうなことを話すべきなのでしょうが、所詮キャリアの形成過程は実に人それぞれなので、何やら方程式があるわけでもないと思うし、自分が経験してきたことと同じようになるわけでもありません。仕事、専門性、目標は価値観に左右されるもので、正しい答えがあるわけでもありません。だから、話し方がとても難しかったというのが本音です。「自分の場合はたまたまこうだった」「その時々で何となくこう思った」、と淡々と語るしかないかな、と思いました。

という前置きをした上で、自分の場合、キャリア形成に影響を及ぼしたものは何かを考えてみましたが、やはり要所要所での人との出会いということになるかと思います。

・大卒で入った会社でビジネスの基本や姿勢を教えてくださった先輩方
・それまで見たことがなかった中小企業の世界に誘ってくれた父
・本質を見極めることの大切さを教えてくださったベンチャー社長
・ようやく天職といえる仕事を与えてくれる会社で雇う決断を下し、鍛えていただいた当時の社長
・その会社で、真のビジネスパーソンとして成長するきっかけとなる役職と責任を与えていただいた元上司
・世界観が一気に広がるステージにひっぱってくださった元上司。現アタラ会長の佐藤
・その会社で、クセ者ばかりが集まった最高のチーム。部下に成長させてもらいました。

考えてみると、本当に人にお世話になってきたんだな、と思うわけです。
偶然のように見えますが、実は偶然でなく、これらの出会いは必然だったと思うのは、30代の頃に読んだ【計画的偶発性理論(Planned Happenstance learning)】に感銘を受け、共感しているためです。

計画的偶発性理論はスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授によって提唱されたもので、「キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される」とし、その偶然を計画的に設計して自分のキャリアを良いものにしていこう、という考え方です。

変化の激しい時代ですから、イチロー選手のように、小さい頃から自分が描いた道にまっしぐら、という人でない限りは、実際には社会変化から身近な環境変化まで、さまざまな影響を受ける中、柔軟に受け止めながら、その中での発見、成長に、ある意味乗っかる形でキャリアを形成するほうが現実的なことが多いということです。「時の流れに身を任せ」的な考え方とも言えるでしょうか。

ただ、何も考えずに身を任せているようでは流されているだけなので、こういった機会や出会いを呼び込みやすくするための5つの行動指針があります。

  1. 「好奇心」  自分の専門分野や関心があることだけに閉じこもらず、自分の知らない分野にまで視野を広げること
  2. 「持続性」  失敗に屈せず、努力し粘り続けること
  3. 「楽観性」  自分の知らない世界に飛び込むチャンスだと楽観、ポジティブに考えること
  4. 「柔軟性」  こだわりを捨て、オープンマインドで信念、概念、態度、行動を変えること
  5. 「リスク・テイキング」  結果が不確実でも、見極めた上でのリスクを積極的に取って行動を起こすこと

振り返ってみると、多かれ少なかれこの5つの行動はとっていたと言えます。アタラの起業もある意味偶然、でも何かそれまでの集大成のような、不思議な感覚をおぼえることが多いです。上記の数々の出会いも、鶏が先か、卵が先かわかりませんが、出会いが機会を生み、機会が成長を生み、成長が出会いを生み、というように、それを繰り返してきたように思います。

アップルのスティーブ・ジョブスのあまりにも有名なスタンフォード大学での2005年のスピーチにある、Connecting the Dotsは同じ考え方だと思います。その下りから一部抜粋します。
Again, you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.
http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html
(日本語翻訳版もネットにありますので検索してみてください)

キャリアに迷っている人へ唯一アドバイスを求められた場合、上記の話もした上で、「キャリアに悩むことも必要なことではあるけど、前向きな気持ちで今出せる力をちゃんと出し、物事の視野を広げ、見極めつつリスクテイクを続けていれば、いつか見えてきますよ」と言うようにしています。

2014.08.02